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169 本音と建前とプライドとその場の勢い

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



「ネモ、サーシャと話してやってくれないか?!」

 テラス席でダリルに頭を下げられる。


 あの後、私達は歩き出したアルテイシア達をその場で見送り、少し時間をずらして食堂にやって来たのだった。

「あ……、うん、わかるよ、ダリルの言いたいことわかる、けど。

 ちょっと待って……」


 元々サーシャは好きでも嫌いでもなくて、でも嫌いって言われたら傷ついたわけで……、傷ついたということは好きだったのか?!


 私は考え過ぎて頭を抱えた。


 キスされたのもびっくりしたけど、本当に嫌だったらぶっ叩いていただろうし、あれ、そこまでショックではなかったような……。

 でも、ウォロは傷ついた……のか?


「ネモ、嫌だったら無理しなくても……」とウォロが言ってくれるが、私は逆に聞き返した。


「サーシャが私にキスしてきて、ウォロは傷ついた?」

「えっ? いや、その時はびっくりしたけど、その後、ネモのことを恋愛対象とか言い出して、あれ、これってやばいのか?! と思ったから。

 男ではなかったから、傷ついたかと聞かれると……、そこまでは?」


「そうだよね。

 さっきの様子を見ていても、私のことを恋愛対象って感じじゃなくなってるみたいだし。

 あの時は何かお互い本当のことをうまく言えてなかったのかも……。

 うん、サーシャと話してみるよ」


 ダリルがほっとしたのがわかる。


「ダリルはなんでそんなにサーシャのこと心配してるの?」

「えっ?

 なんでだろうな?

 なんかサーシャは危なっかしくて……。

 すごくしっかりしているようで……、本当は違うんだよな」

「わかった。サーシャに伝えて、私も本音で話すから、本音で話してって」


 水曜日の自主練後にダリルがサーシャを連れてきてくれることになった。


 火曜日、自主練の様子を見に来たランスに始める前に言われる。

「サーシャと話すんだって?」

「どうして知ってるの?」

「サーシャから聞いた」

「なんで?!」

「俺、スクールカウンセラーだよ。サーシャとちょくちょく面談してるの」

「ちゃんと仕事してんだ?!」

 ウォロが言って、ランスがむっとする。


「してるよ! ちゃんと仕事!

 アルテイシアの方だってちゃんと様子見ているだろ?!」

 

 ウォロが謝りながら答える。

「ごめんごめん、そうなんだ。明日、自主練の後話すことになってる」


「あのさあ、ネモ。たぶん、サーシャは強がりなんだよ。 

 うーん、プライドが高いっていうか、その反面すごく自信がないところがあるんだ。

 だから、できればふたりきりで話すのを勧めるよ」

「周囲に人がいたら、本音が言えない?」

「うん、そういうタイプだね」

「……わかった。考えてみる」

「そうしてやって。ネモは素直だけど、素直になれない子もいるんだよ」

「……私もそこまで素直じゃないけど。その場の勢いで行動したり、言ったりしちゃって後悔することもあるしね」

「ま、ネモはその後悔も引きずらないだろ」

 ランスが笑う。


 自主練後、3-1寮のリビングを使わせてもらい、ウォロ、ダリル、ミカ、私、ランスで話し合わせてもらう。

 サーシャは最近はダリルとランスには強がらずに素直に自分の気持ちを言ったりしていることがわかった。

 前はダリルにはかなり強がっていたようだけど……。


 ふたりによると、私を好きでいてくれてるのは事実。

 恋愛対象と言うよりは、憧れや守りたい、ネモのためになりたいという気持ちが強いのではないかと言うことだ。


「なんというか弱味を見せたくないという思いが強いよな。彼女は。

 強がってとんでもないことを口走るというか、そういう傾向があると思う」とランス。


「大好きなネモを前にしたら、なおさら……。

 前に俺にネモのことが好きだって話してた時、たぶん、盛ってたんだよな。

 俺に強いところを見せていたかったんだと思う。

 本音で話せるようになればいいんだけど」とダリル。


「わかった……。ふたりで話した方が良さそうだね。

 ランス、サーシャとはいつもどこで話すの?」

「カウンセリング用の会議室があるんだけど。

 いや、そこは生徒には使わせられないから?!」


「わかった。ふたりで庭で話すか。

 みんなちょっと離れててくれれば、いいかな?」


 ウォロが心配そうな表情になり、私は笑って言った。

「大丈夫だよ。もし今度キスされそうになったらわかってるから抵抗できるし!」


 水曜日、いつものように自主練が終って、アルテイシアは今夜お試しでお泊りする2-1寮にそのまま向かうと言うので見送った。

 うれしそうだけど、緊張している。

 特別に今夜は寮に泊まり、木曜日の朝、王城に帰るのだそう。

 今日はランスも学校にいると言う。

 こんな風に少しずつ、寮生活に戻れるかお試ししていくことになったそう。


 私が3-1寮近くのベンチに座って待っていると、ダリルがサーシャを連れて来た。

 すごく顔色が悪い。

 思わず「サーシャ、体調大丈夫なの?!」と言ってしまった。


「えっと、その、大丈夫……なので、御心配なく……。

 あの、本当に大丈夫なので!!」


 サーシャが慌てたように言うので私は手を取ってベンチに座らせた。

 握り合った手を見て、びっくりしたような表情になる。


「ごめん、ネモ。その、私、前に!」

 顔色が赤くなり「……緊張して、気持ち悪い……」と言い出す。


 私は慌てて癒しの光を握った手から流し始めた。


「落ち着いて、息を大きく吸って、吐いてー。吸ってー、吐いてー」

 私が深呼吸をくり返して見せると、サーシャもつられてくり返した。

「……あ、、落ち着いてきた……」

「もう少し続けよう。吸って吐いて……」


「ネモ、ごめんなさい。この前も、その前も……」

「もう少し落ち着いてからでいいよ。

 じゃあ、まず私から話していい?」

 サーシャが頷くので私は話しを続けた。


「サーシャに言われたこと、花祭りの前ね。

 考えたの。

 全部が本音じゃないよね。

 今日は本音で話して。私もそうするから」


 そこで私は大きく息をついた。

「サーシャのこと、嫌いではないよ。

 でも、好きって言い切れるほどではない。

 それは、エドワードを追っかけまわしていたからだと思う。

 寮の仲間だし、エドワードは私にとって友達の中でも親友……に近いところがあって。

 だからエドワードを困らすサーシャは私にとっても困る存在だと感じていたんだ」


「……私がエドワード様を追いかけていたのは、ネモと親しくなるためで……。

 でも、誘拐の真相を知って、ネモをむざむざ誘拐されたエドワード様とウォロに怒りを感じたし、戻って来てからの、エドワード様のネモに対する態度にイライラすることもあったし」


「ふたりは悪くないよ。私が相手の挑発に乗って無防備過ぎただけ。ウォロは心配してくれたのに、大丈夫って断っちゃったのも私。ふたりとも心配してくれてたし、うん」


「だから、ネモと口論になって、思わず『嫌い』って言ったら、ネモが泣いて、かわいいって思ったら、なんでかウォロやエドワード様に負けたくないという気持ちが出て来ちゃって、なんでかキスしちゃってて……」


 私は笑った。

「本当になんでそんなことになったんだろうね?!」 

「私の強がりだと思う。

 私、自分に自信がなくて、強いふりを演じてしまうことが多かったの。

 あの時はキスしちゃったから、思わずネモのことを恋愛対象だなんて口走っちゃって」

「強い女性を演じようとしたんだね」

 私の言葉にサーシャが頷く。


「ネモに憧れてて、ネモみたいになりたかったの。

 男も女も関係なく、分け隔てない感じの……。

 ダリルにも男も女もない、好きになったら……なんて、語って気持ちよくなっちゃってたところもあって」

「本音……じゃない?」

「そう本音とも建て前とも違う。私の強がり? プライド? 

 本当にあの時の私、変だった。ごめんなさい。ネモにもウォロにもひどいことを……」


「うん、私もウォロもびっくりしたけど、そこまでショックを引きずったかというと、まあ大丈夫。

 今までなかったことだから、ちょっとびびったけどね。

 それから、アルテイシアにはどうして?」


「アルテイシアは、ネモにひどいことしたのに……。

 それにネモがウォロのことで……彼女を嫌っていることを知っていたから、追い出してやろうと思って」


「うん、サーシャの言うことは間違ってはいないけど……。

 あの時点ではアルテイシアとたくさんやり取りして、話し合って、お互い友人として好きになりかけてたから……。

 でも、ウォロのことは図星だったから、考えさせられた。

 サーシャ、人の気持ち、よくわかるよね」


「ネモ、ごめんなさい。アルテイシアと築き直していたことを、私はこわしてしまうところだった」


「ううん、私の本音と建前に、ガツンとやってくれたのは、目が覚めたみたいだった。

 アルテイシアも私に聞きたいこと聞けるきっかけになったみたいだし。

 自分自身を見つめなおせたよ。ありがとう」


「私、ネモと仲良くなりたくて、エドワード様を利用して、ウォロやオードリー、アルテイシアに嫉妬して、自分を見失ってた。

 最近、ネモだったらどうするか? って考えて行動するようにしているの。

 すると気持ちがいいの本当に。

 ネモは私にとってそういう存在。

 弱い私を強くしてくれる。変な強がりじゃなくて、いい方にね。

 だから、嫌われたままでいるのは、やっぱり寂しい」


「うん、わかった。

 まずサーシャ、私を美化しすぎるのはやめようか!

 私は普通の女の子だよ。

 けっこうおっちょこちょいだし、人の気持ちがわからなくて怒らせることもあるし、嫌だと思えばひどいことも言っちゃうこともあるし……。

 そしてウォロのことが本当に好きで、ウォロのことになるとバカだなと思うことをしちゃうような……普通の……、あれ、それ普通と違う?

 うん、でも、まあ、普通の女子だと思うけど……ね。

 本当の私を見て欲しいな。

 私にもサーシャのこともっと教えて」


「ネモ!! 大好き!!」

 サーシャに抱きつかれて「わっ!!」とひっくり返りそうになる。

 ベンチの背をつかんでかろうじて倒れこむのは防げた。


 ウォロとランスとダリルが隠れていた所から慌てて走ってくるのが見えた。

 私はおかしくなって大笑いした。

「サーシャ、その場の勢いっていうか!

 そういうところ、私達、似ているかもね!」



 アルテイシアは2-1寮で他の子達とも話し合うことができて、来週の日曜日の夜から月火水と寮で過ごしてみることに決まったそう。木曜日の朝、王城に戻るんだって。

 様子を見て学校で過ごす日を増やしていくそう。

 私達、教育係とのランチも定期的に続けていくことに。


 次の日から自主練にサーシャも参加するようになった。

 サーシャも剣をやってみたかったんだってさ。


 体力作りも楽しくなってきた。

 まあ、女子のペースでがんばろう!


 土曜日の午後、ラボでゆっくり薬作りができ、レイモンドにアルテイシアの近況を報告できた。

 そろそろ、レイモンドとも話ができると思うよ、と伝えた。

読んで下さりありがとうございます。

午後投稿する予定です。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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