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18 魔法学校へようこそ!(アリス視点)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は転生物に挑戦中です。

赤ちゃんからスタートして何やかやあり、やっと強奪女神ユーチャリス(転生して異母姉のアリス)のいる魔法学校までたどり着きました。

とりあえず、アリスが卒業まで後2年くらいなのでそれぐらいで一応完結するかな?という終わり方はなんとなく見えてきました。でも学校生活が楽し過ぎて、今はそれを書きたくてワクワクしてます。

ゆっくり書き進めているので最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 入学テスト後に控え室に戻るエミリアを待ち伏せして、声をかけた。


「エミリア、久しぶり。会えてうれしいわ」

「アリス姉様、ありがとう。

 私も魔法の勉強ができるのを楽しみにしてた」

 エミリアがにっこりと微笑む。


 約2年会わない間に、ずいぶん背が伸びたようだ。私より背が高い。

 まあまあ美しく成長したんじゃない? 

 でも、冷ややかな感じがして近寄りがたい雰囲気がある

 かわいらしく小柄で男性が守りたくなるようなヒロインである私とは正反対だ。


 やはりこの子は私にとっての『悪役令嬢』だ。

  



   ◇ ◇ ◇




 魔力の高さ、全属性と聖魔法持ち、そして第1王子と同い年。しかも神の愛し子でユーチャリスという贈名持ち。

 金カプセルのヒロイン枠である辺境伯爵令嬢アリス。

 何もしなくても将来が約束されている。


 私は転生してきて、しばらくは何もかも目新しく、自分の思い通りになるのにうれしく楽しかったけれど、少しずつ飽きてきた。


 だって、何もしなくても自分の思うようになるから。

 やさしい母親と父親。

 わがままを言っても母親が大抵叶えてくれた。

 ちやほやされ続けているのにちょっと飽きてきた頃、父親に愛人がいて、子どもを産んだことがわかった。しかもその異母妹も神の愛し子で贈名持ち。一気に世間の関心が私からその子へ移った。


 お母様は怒り、悪女である愛人に夫を取られたが、夫を信じて待つ貞淑な妻という役割を自分に与え演じ始めた。

 嘆きつつ、愛人エレオノーラとその娘エミリアの悪口を、悪口ではないように自分をちょっと貶めて悪いところがあったのかも……などの反省の言葉を挟み込みつつ吹聴すると、たくさんの人がお母様の味方になってくれた。


 私はその様子を見て、ああ、こんな風にすればいいのだなと思った。


 女は共通の敵を前にすると少々相性が悪くても仲間になれるのだ。

 お母様はとても楽しそうだった。


 私もお茶会でちょっと意地悪な伯爵令嬢にエミリアのことを嫌味で言われた時、やってみた。

 大きくきれいな緑色の瞳を潤ませ泣き出すと周囲の令嬢達は私を慰め、相手の伯爵令嬢を咎めるような雰囲気になる。

 そこで私が言うのだ。


「私が泣いたのがいけないんです。

 伯爵令嬢は本当のことを言っただけ。悪くありません。

 私の心が弱いから……。

 異母妹のこと、憎めればよいのでしょうが、私にはできなくて……」


 たちまち周囲の令嬢達の瞳が潤み「なんておやさしい!」「可憐だわ! お守りしたい!」という囁き声があちこちから聞こえてくる。


 そうよ、この感じ。


 何もしなくてもヒロインになれるのはいいことだけど、少しは刺激的なスパイスを効かせないと物語は楽しくない。


 伯爵令嬢も私に近づき手を取って言うの。

「ごめんなさい。かわいいあなたとお近づきになりたくて、気を引くためについ言ってしまったの。

 許して下さる? 

 私と友達になって下さいませ」

「ええ、許すも何も。

 私もあなたとお友達になりたいわ」

 にっこり笑えばそれでOK。

 ちょろい。楽しい。


 私はお母様と一緒にエレオノーラとエミリアをどんどん悪役にするような噂を考え、私達が発信源とわからないように巧妙に考えて流した。

 みんなから同情され、エミリアを庇う発言をすると「聖女のようにおやさしい!」「女神のように心がきれいなんだね」と称賛される。


 ふふふ、私は女神の生まれ変わりなんだから当たり前でしょ!


 12歳になる直前にエレオノーラが事故で亡くなり、エミリアが王都の屋敷に来た。

 痩せておどおどした自信がなさそうな子だった。

 悪役としては役者不足。

 せっかく認知して辺境伯爵令嬢の身分を与えてやったのに、身分の低いエレオノーラに育てられ令嬢教育を受けていないのね! とお母様も怒っていた。


 私達はエミリアを我儘な貴族令嬢らしく見せるために頑張った。


 客の前に出し、かわいがっているふりをして、わざと失敗させてそれを許す。


 それでも、この頑固な子は頑なに私達に不満をぶつけることもなく、淡々と生活している。

 私はこの子は何も感じない鈍感な子なんだと思った。

 でも、私のためにも悪役令嬢になってもらわなきゃ困るのよ。


 魔法学校入学テストの招待状が私に届き、入学テストで素晴らしい結果を出した私は、望まれて第1王子の婚約者に選ばれた。

 当然の結果だけど、外ではおとなしく振舞わなければいけない。

 反動で、家でエミリアをいじめることが増えた。

 だって、エミリアをいじめると楽しいんだもの。


 エミリアが、私が優しいことをいいことに、私に対して暴力を振るったり嫌がらせをしていることを以前から周囲にそれとなく匂わせていたので、誰もそれが本当は逆とは思わない。

 婚約者である第1王子からも心配してもらい、優しくしてもらえてとてもいい感じ。


 半年ほどすると、エミリアはお父様からも愛想をつかされたようで怒鳴られ叱責され、辺境伯爵領に逃げ帰った。

 ここが重要よ。追い出したと思われないように立ち回らなきゃ。


 私はエミリアがどんなに意地悪で嘘つきなのか、噂が消えそうになる度に再び蒸し返して流行らせた。

 この噂が流れている間、私は異母妹に虐げられたけれど、それを許してなお異母妹を愛そうとする優しくて健気で可憐なヒロインでいられる。


 学校でもできるだけ勉強熱心なふりをして、第1王子に愛されるように心がけたわ。

 本当は何もしなくても愛されるはずだけど。

 王子の心を引き付けるために頑張るのもなかなか面白かったし。

 それに飽きてくるとエミリアのことを思い出して懐かしむ風を装って悪口を言い、心の安定を計ることができた。

 エミリアってば、なかなか役に立ってるわ。

 

 でも、心配なことがひとつあった。

 魔法学校に入学してくるかも。

 それに第2王子エドワードがエミリアと同い年だ。

 万が一、入学テストの結果で私と同じよう王家との婚約を望まれたら、私のやってきたことがばれるかもしれない?!


 ちょっとだけ心配していたけれど、何とエミリアが入学テスト前にミーア帝国の第3皇子と婚約したという知らせが届いた。

 外国なら、まあ、いいか。

 本音を言えば、この国のもっと爵位が下の家に嫁がせても良かったのに。

 でも、これで第2王子との婚約はなくなったし。

 やはり私のヒロインとしての強運の賜物なのかしら?!

 



   ◇ ◇ ◇




「初めて会ったが、アリスと全然似ていない妹だな」

 第1王子であるアンドレアスが言った。


 私達の寮でお茶をしているところだ。

 この寮には7人の3年生が暮らしている。

 来年度は私達は4年生になり、この寮はこのまま継続。

 アンドレアスの側近になるような高位貴族の令息令嬢が集められている寮だ。

 そして、みんな私の味方でもある。


 私はさっき久しぶりに会ったエミリアの姿を思い出した。


 エミリアの見た目は悪役令嬢としていい感じに育っている。

 きっと見事な悪役になるだろう。

 さて、どの様に演じさせてやろうか。


 そう考えると、ワクワクしてきた。とても楽しみだ。

 私の、魔法学校へようこそ!

読んで下さりありがとうございます。

次からは1日1回の投稿にしていきたいと思います。

(登場人物の名前や使える魔法属性とか間違えないようにチェックに時間をかけたいので……)

 

これからもどうぞよろしくお願いします。

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