2 転生しなきゃなの?
今回は異世界転生物に挑戦しています。
けっこう楽しんで書いています。
1日1回投稿のペースで長く書き続けられたらいいなあと思っています。
どうぞよろしくお願いします。
頭を撫でられた感覚がして目が覚め、目を開けると金髪に紫の瞳の……、さっきの女神様によく似ている若い男性が私の顔を覗き込んでいた。
「……?」
とりあえず上半身を起こしたが、少しの間、寝起きだったこともあって、ぼーっとその男性と見つめ合う。
「君は……」
「はっ! 助けて下さい! 女神様が! ガチャの当たりを! 置いて行かれて、どうしたら!」
私はあわてて神様と思しき男性の服をつかむと思いつくままにとりあえず言葉を発した。
「妹が? ちょっと見せてね」
神様は私の頭に手を乗せ、しばらくじっとしていたが、手を下ろすとため息をついた。
「……申し訳ない。とんでもないことを……。
妹のユーチャリスは異世界のヒロインに憧れていてね。
君は地球の高野恵実さんか。
妹は、君の大当たりヒロイン枠を自分の物にしてしまったわけだ。
見せてもらったけれど、自分で自分の愛し子設定と前世の記憶持ち設定まで加えていた。
すでに転生してしまったので、もう戻すことはできない」
神様は考え込んでいたが「ヒロイン枠と対になる枠があるはず……」と呟き、何やら空中にステータスをいくつか開いて見ている。
びっくりしている私を見ると「ごめんごめん」と言いながら、また私の頭に手を乗せる。
すると、ステータスの文字が読めるようになった!!
ガチャで引いた異世界の星の名前はエーテリア。
ウォルフライト王国のアリス・ユーチャリス・アリステラ辺境伯爵令嬢。
魔力が高く、火、風、水、土の全属性を持ち、聖魔法も使える。
そして神の愛し子の証である『ユーチャリス』の贈名を持っている。
「これが、女神様が転生したヒロイン令嬢ですか?」
私が訊ねると神様は頷いた。
「対になるこれから生まれる予定の枠はこれ」
違うステータスが目の前に移動してくる。
まだ名前はないがアリステラ辺境伯爵令嬢ということは決まっているようだ。
アリスより少し低いが魔力もあるみたい。風と水の魔法属性を持っている。
「ヒロイン枠のアリスの対になる異母妹だ。
その、ヒロインに対してだと悪役令嬢という立ち位置になる。
どうだろう? 転生先として?」
「悪役令嬢……なんですよね?」
「ああ、それは気にしないでいい」
気にしないでいいと言われても……。
私の複雑そうな表情を見て、神様が話を続ける。
「このステータスに私から聖魔法と私の愛し子としての贈名をさせてくれ。
君の名前は『ネモフィラ』、私と同じ青い花の名前だよ。
神の愛し子には生まれた時に花の名前が神から贈名として与えられるんだ。
そしてユーチャリスと同じように前世の記憶、今の記憶もだけどね、持って行けるようにした。
……ヒロイン、悪役令嬢、という枠は本当はかなりぼんやりしているものでもあるんだ。
転生した魂の質によっては変化することも多い。
恵実、ヒロイン枠はもともと君のものだったのだから、自分らしく生きて、人生を楽しんでごらん。
きっと得るものがあるだろう。
君の助けとなる人物も必ず身近に送り込むからね」
ここまでしてもらって、今更断れないしな……。
このままここにいるわけにもいかないし……。
「ありがとうございます。神様のお名前をお聞きしてもいいですか?」
「私の名前はデルフィニウム。
ユーチャリスが転生し、アリスとなってもう3年が過ぎている」
「えっ、私3年も寝てたんですか?!」
「ここはエーテリアや地球と時間の流れが違うので……」
そう言いながら神様が私を両肩に手を掛け、顔が近づいてくる。
えっ? と思って身体を後ろに引こうとするが、肩を逆に寄せられて、額に口づけされる。
ひゃー!!
ぼんっと顔が赤くなってしまい、神様の唇が離れたおでこを両手で押さえてわたわたしてしまう。
「かわいいな……」
神様のにっこり笑った笑顔がとても美しくて、そして私を安心させようと祝福を与えてくれたことがうれしくて、痛いくらい心がキュンとした。
「……デルフィニウム様、どうもありがとうございます!」
精一杯の感謝の気持ちをこめてお礼を伝えた。
神様がちょっと意外そうな表情をした。
そして、私を見ながら手を取った。
その手をステータスに近づけていく。
触れるとさっきの女神様のように私とステータスが一緒になり、光の玉になる。
自分の身体がないのに意識があるのがどうも不思議。
「ネモフィラ! 人生を楽しんで!」
神様の言葉に送られて、私は地球によく似た星エーテリアにすごい勢いで降下していく。
こわいこわい!! 私は目をぎゅっとつぶった。
目をつぶっているのに周囲がどんどん明るくなり、そして、真っ白になった。
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!