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168 剣術の自主練

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 兄様とハロルドと別れの挨拶をしてまたウォロに転移魔法を発動してもらい、しがみついて学校へ戻る。

 今度はしっかり目を見開いて浮いてる時の周囲を見てやろうと思ったのに、ウォロがキスしてきて、全然見えなかった……。


 気がつくと寮の裏に立っていた。

「すご……」

 思わず呟くと「キスが?」と言われて「違うよ、転移魔法が……」と言いかけ笑った。


「うん、あんな瞬間にキスした人って私達が初めてだろうね」

「いや、前にもいたかもよ。例えばマッちゃんとか」


『いや、さすがにキスはしたことない。

 ウォロすごいな、ここまでの術式を完成させるとは!』


「ネモがフープについて調べて、いろいろアイデアを書き留めておいてくれたからだよ。

 おかげで完成させることができた。ネモに誕生日プレゼント。

 来週はミーアに連れて行くから。そうしたらいつでも行けるようになる」


 私は改めてものすごいことなんだと実感した。

 これがあれば、1週間の旅をしなくてもダナンに一瞬で行けるし、休みなしのきつい10日間の旅をしなくてもミーアの皇都に行けちゃう。


 すごいことだ、お金には代えられないくらいすごいこと。

 誰もが羨む術式とそれが発動できる魔法の力。

 これを知られたら、ウォロはどうなるんだろう。

 

 聖女ルチアの哀しい記憶が頭をかすめた。

 私はウォロにしがみついた。


「どうしたネモ?」

 ウォロが怪訝そうな声で言った。


『ネモの不安もわかるが……。

 でもな、ネモ。

 ネモの治癒の力、聖女の力ももうだいぶすごいことになっているんだぞ。

 ウォロのことを心配するより、自分のことを心配した方がいい』


「ネモ、自分のことを心配してくれたの?!」

 ウォロが驚いて言った。


「うん……、ウォロが……、ルチアみたいに、力が強いから、すごいからって、たくさん働かせられて、死にたくなるくらい働かせられたらどうしよう! と思った」

 ウォロは私をしっかり抱きしめてくれた。


「大丈夫。自分は、自分もネモも守るから……」


「あ、そんなところにいた!」

 オードリーの声に私は跳びあがり、ウォロの顎に頭が少々ぶつかった。

「いてっ!」

 ウォロが言って、私は慌てる。

「ご、ごめん!」

「何でこうなるかな……。いいところだったのに……」

 ウォロがぶつぶつ言っている。


「何してんの? なかなか帰って来ないから、ティエルノが見に行って、いないってなってさ!

 歩いて帰ってきたの?」


「ああ、歩いてきたけど、ふたりで少し話したくて」

 ウォロが答えて、私達は寮に向かって歩きだした。


 寮に入ると「裏で話していたんだって? 夜なんだからちゃんと報告していけ! 人騒がせな!」とティエルノに怒られた。


 ノアは結局、エドワードの部屋へ付いて行ってしまい(そんなにエドワードが気に入ったの?)、私が目覚めた時には私のベッドの上で丸くなってた。


 月曜日、アルテイシアと教職員棟の前で待ち合わせをしていたので、魔法陣で私だけ早めに移動し、ノアのご飯やトイレのチェックをした。


 ノアも一緒に来て、ご飯を食べたので、皿を洗い、カリカリを少し入れておく。

「お昼にまた来るからね!」

 

 ラボを出て教職員棟の前に出ると、オードリーとミカがいて、さらにエリザベス達もいた。

「おはようございます。今日も2年の教室に一緒に行ってみようと思って」


 アルテイシアも来て、エリザベス達と行くと言うのでランチを一緒に食べる約束をした。


 3年の教室に行き、ウォロ達にアルテイシアやエリザベスとランチの約束をしたので、一緒にどうかと話をした。

 ウォロが少しびっくりした顔をしていたが、私が笑顔で頷くと、わかったというように頷いてくれた。


 エドワードとティエルノが先に食堂に行ってくれて、テラス席を取っておいてくれた。

 私とウォロはノアを迎えに行き、連れて来て、テラス席でノアを2年のみんなに紹介した。

 

 ルーシーは実家で猫を飼っているそうで、ノアに時々会いに行きたい! と言ってくれた。


 ノアはラボか3-1寮にいるので、今日から剣術の自主練も始めるから興味があれば放課後来てみなよ! と話をすると、ネイサンとエリザベスが参加したいと言い、アルテイシアとルーシーは応援に行くと言った。

 ティエルノがうれしそうだった。


「ミカとダリルも来るよね」

 私が隣の席のミカに聞くと頷いたが、少し心配そうな顔をして小さな声で言った。


「ダリルがさ、サーシャのこと心配してるんだ。

 ネモ、ダリルと……、話してやってくれない?」

「あ、うん、じゃあ、放課後自主練の後にでも……」


 ルーシーがエドワードとノアの話題で盛り上がってる。

 へー。


 気がつくと周囲のエドワード狙いと思われる令嬢達があちこちからそんなふたりのことをちらちら、またはじっと見ている人もいて……。

 なんか大丈夫かな?


 ミカは早めに実習場に移動するのでと抜け、私もノアを連れてラボに行くことにした。

 エドワードとウォロも一緒に来てくれると言う。


 ラボの前でランスに会った。

「ネモ、俺にもノアを紹介して!」


 ラボに一緒に入り、ノアを紹介した。

「へー、ノアールでノアか……。

 なんでこんなにエドワードに懐いている?」

 そー思いますよね。

「私も意外だったんだよ。エドワードがこんなに猫好きになろうとは……。

 ノア、後でまた来るからね。寮の方にいてもいいし、後でね」


 急いで教室まで走る。


 セーフ!! 遅刻にならずに済んだ……。


 授業の合間の休み時間、ダリルに話しかけに行く。

「今日、自主練来るんでしょう?」

「ああ、ネモ、後で少し話せる?」

「うん大丈夫。じゃあ後で!」


 授業が終わり、私とウォロとエドワードはラボに向かい、ノアの様子を見に行った。

 ひとりでのんびりくつろいでいた様子。

 カリカリを食べたよう。水を入れ替えてあげる。トイレもチェック。

 

 内鍵を閉めて、魔法陣で寮に移動。

 エドワードがノアを抱っこして行った。

 次にウォロと私が一緒に移動するのを見て「なんだよ、ふたりでも使えるんじゃん!」とエドワードが目を見開いて言った。

「魔法陣の中に抱き合えば納まるからね」

 ウォロが答えた。

 

 動ける服装に着替え、木剣を用意しておく。


 ミカとダリルがやって来た。

 今日の参加者は3年生がエドワード、ウォロ、ティエルノ、ミカ、ダリル、私。2年生がネイサンとエリザベス。

 

 エリザベスも体力作りから参加すると言うので私と一緒に走ることにする。


 ルーシーとアルテイシアも来て、オードリー、セレナ、ライト、それにランスと一緒にノアを見ていてくれると言う。


 ノア大人気!!


 エリザベスはやはり男子チームにはついて行けなくて(私も同じく)、私と少し遅れ気味にゆっくり走る。

 走りながらアルテイシアを水曜日、寮に泊めてみたいと話してくれた。

 寮の他の子達も、寮の中でなら、周囲を気にせず接することができそうと言ってくれているそう。


 そんな話をしながら走り終え、私と一緒に長剣の構えや素振りをしてみる。

 なかなかさまになっている。

 ルーシーとアルテイシアが「「かっこいいです!!」」と言ってくれて、うれしそうにはにかんでいる。

 ティエルノも向こうからそんなエリザベスをニコニコ見ていた。


 3-1寮の周囲に女子が増えてきた。

 エドワードも耐性がついたのか、今日は一緒の仲間が多いから心強いのか、あまり気にならない様子。


 自主練が終わり、アルテイシアをカトレア先生の部屋までエリザベスとルーシーが送ってくれると言う。

 ありがたくお願いして、私はウォロとミカと一緒にダリルの話を聞くことにした。


 食堂でお茶しながら話そうとなり、結局、アルテイシア達の少し後をついて食堂に行くような形になる。

 お願いした手前、意識して少し離れるようにした。


 すると……、私達が後ろにいるのに気がつかなかったのか、令嬢達が前を行く3人の前に立ち塞がった。

 私が駆けつけようとするとミカが止めた。

「アルテイシアもエリザベスもこれからこういう場を何度も経験すると思うよ。少し見守ろう」


 私達は近くの木陰から様子を窺う。


「エドワード様にあんなことしておいて、良く、また近づこうなんて思えるわね?!」

 これはアルテイシアに言っているんだな。


「私はエドワード様に近づいたりしていません。

 ネモや友達のエリザベスを応援していたんです!」

 アルテイシアの言葉にエリザベスも言った。

「そうですわ! アルテイシアはエドワード様に挨拶しかしていませんし」


 すると令嬢のひとりがルーシーをどんと押した。

 よろめくルーシー。驚いている。


「あんた、エドワード様とずいぶん親し気に話をしていたけど……。子爵家よね?

 あなたの家、古い家柄だけど、最近は……。

 そんなんでエドワード様に近づくなんて……」

「猫のことで取り入ったみたいだけど。

 本当に卑しい家の人はなんでも利用するのね。いやだわ」


 ひ、ひどい!!


 私が飛び出して行きそうになって、ミカに止められる。

「ネモが出て行ったら、また違う問題になるから!」

「でも!!」

 木の陰でミカと囁いて言い合っていたら……。


「何を仰っているのかしら?!」と凛とした声が響いてきてびっくりする。


 見るとサーシャだった。


「サーシャ」とダリルが呟く。


 サーシャは私達に見られていることに全く気づかず、ルーシーの前に守る様に立つと令嬢達と対峙するように向かい合う。


「やきもちはみっともないですよ。

 そんなにエドワード様と話したかったら、あなた方もあの猫に好かれてみればいい。

 私も猫を飼ったことがありますが、猫は人を見ますから、あなた方には無理だと思うけれど……。

 私も子爵家ですけど、私にも同じことが言えて?

 人を見て態度を変えることはやめたほうがよろしくてよ」


 サーシャ、強い!


「ふん!!」「覚えていなさい!!」と令嬢らしからぬ言葉を残しつつ、令嬢達は去って行った。


 サーシャはアルテイシアに向き直り、言った。


「花祭りの前は、ごめんなさい。

 私、あなたが心を入れ替えてネモと接しているとはとても思えず……。

 あなたを学校から追い出してやろうと思ってた。

 でも、あなたは最後までネモのことを信じていて……。

 ごめんなさいね。あんなことをして、ずっと謝りたかったの」


「いえ、ネモとしっかり向き合うきっかけにもなったし、もう気にしていません。

 今、ルーシーを助けてくれてありがとうございます」

 アルテイシアがお辞儀をした。

 エリザベスとルーシーも慌てて頭を下げてお礼を伝える。


 そんな3人にサーシャが言った。

「いえ、私……。ネモに嫌われてしまったけれど、今でもネモに憧れていて、ネモだったらどうするか考えて行動することに決めたの。

 ただそれだけ。ではごきげんよう」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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