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166 黒猫の名前

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。




 最終日も朝も特に問題なく、最後まで食材を使い切り、野営の後をきちんと片付け、北口に行った。


 馬車に乗り学校に戻る。

 食堂に入り、調理器具などの返却や、地図と課題にどう過ごしたのか詳しいことを書きこみしたものを提出した。

 ティエルノとエドワードが書き込んでくれたから、大丈夫だろ。

 クラウス先生がいたので黒猫のことを報告する。


「どこに?」

「ここに!」

 前に抱えているリュックの中を見せる。

 

 馬車の乗る時に怖がったのでリュックの中に入ってもらったのだ。

 そして光魔法をかけて呼びかけていたら落ち着いた。

 乗ったばかりの時はかなり不安がって「ヴァーノ、ヴァーノ」と低い声で何度か鳴いていた。

 その度に声をかけ、リュックの上からなでてやった。


 野生の猫じゃないし、たぶん野良猫なんだろうけど……。


「外に出すならもっと人が少ないところが良さそうだな」

 クラウス先生の言葉に「じゃあ、ラボは?」と私は言った。


 私とウォロは寮での課題提出が全部終わったのを確認すると、昼食をテイクアウトしてラボに寄ることにした。

「先に風呂に入っちゃったりしてるね!」

 オードリーに言われ、手を振って「わかった! 少ししたら戻るから!」と見送った。


 ラボに行くとレイモンドも来ていた。

「実習、お疲れ! ベース薬は大丈夫だよ」


「ありがとう、レイモンド。

 実は実習先で聖魔法持ちの野良猫を見つけて保護したんだ」


 ラボで暴れられたら大変なので、先に話をすることにした。

「ここはラボと言って、魔法薬を作っているところなの。

 大丈夫だからおとなしくしてね」


 そして、リュックを床にそっと置き、出やすいように大きく開けた。

 黒猫は顔を覗かせ、身体をくねらせリュックからするりと出てきた。


「まだ若い猫だね。

 でも、確かに聖魔法の感じがする。

 持っていることで身を守り、野良猫でも十分やっていけてたんだろう」

 クラウス先生が猫を観察しながら言った。


「この猫、どうするんだ?

 学校内では飼えないだろ?」

 レイモンドが言った。


「いや、寮では飼えるよ。寮で申請すれば、生き物の飼育は認められることがある」

 クラウス先生が教えてくれるけど、寮で、か……。


「ここで聖魔法の実験のために飼えませんかね?」

 私が言うとレイモンドがびっくりする。

「ラボで?!」

「うん、ダメかな? 聖魔法持ちなら教えたら治癒とかできる猫になれるかも?!」

「あー、なるほど……。どうですかね? クラウス先生?」

 レイモンドが聞いてくれる。


「なるほど、聖魔法の訓練猫か。

 ラボからと、監護者としてのネモの寮から申請をすればいいんじゃないか?

 たぶんラボに閉じ込めておくわけにもいかんだろ?

 寮付きの猫と申請しないと、学校内や寮に連れて入れないぞ」


 ラボの方からはレイモンドが申請を出してくれることになった。

 寮で相談して、みんなにOKもらえたら寮でも申請出そう。


 とりあえず、ラボにあるちょうど良さげな木箱に私が使っていた毛布を入れて即席の寝床を作ってやる。


「名前は?」

 クラウス先生に聞かれる。


「名前、付けてないです。誰か飼い主がいるかもとも思ったし、ついて来ないとかも考えられたし」

「首輪もしていないし、飼い猫ではなさそうだな。

 とりあえず、名前を付けないと……」


「うーん、じゃあ……」

 黒いからクロじゃあ安直あんちょくだよね。

 黒……、ブラック、シュバルツ、ノアール……。

 ノアールいいかも。

 ノアって呼ぶのかわいい。


「じゃあ、ノアールで。

 君の名前、ノアールっていうのはどう?

 ノアールで、ノア!」


 黒猫は寝床を点検していたが、こちらを向いて「ニア」と鳴いた。

「ノア!」

「ニア」

「ノアール気に入った?」

 こちらに来ると足にすりすり身体をこすりつけるようにしてすり抜けていく。


「うん、ノアールで! ノアって呼べるし」

 私が言うとクラウス先生が笑った。


 クラウス先生はカトレア先生に報告しておいてくれると出て行った。

 

 私とウォロはお茶を入れ、遅めの昼食を食べ始める。

 レイモンドは申請書を書いてくれていた。


「ノアのご飯って、どうしたらいいんだろう。

 パンに牛乳ってわけにはいかないよね?」

 肉とか魚とか少し貰って、味付けしないで焼けばいいのか?

 生?

 

 レイモンドが申請書を出すついでに、食堂で牛乳と肉か魚を分けてもらえるか、聞いてきてくれるという。


 とりあえず、私が野営で使っていた小さめの深皿に水だけは入れた。

 レイモンドが出かけると、カトレア先生が来た。


「この子がノアールちゃん?!」

「本名はノアールですけど、ノアって呼びます」

 私の言葉に笑う。

「ネモフィラだけどネモと同じね」


 あ、だからクラウス先生も笑ってたのか?!


 カトレア先生が赤いリボンを首に巻いてくれた。

「あら、おとなしくていい子ね」

 猫のトイレってどうすんだ?

 

「ユリアンが猫を飼っているから声かけておいたわ。後で必要なものを持って来てくれるって」

 ユリアン先生、猫飼ってるんだ!!


 レイモンドが帰って来て、牛乳と鶏肉を少し貰ってきてくれたので、鶏肉はお湯で煮てから裂いた。

 お皿の水を捨てて、そこに火を通した鶏肉を入れると食べていた。


 そこにユリアン先生が来て、いろいろ教えてくれた。

 昼に部屋に戻れない時はカリカリした乾燥した餌を置いておくそう。

 少し分けてくれて、今度買う時、ノアの分もひと箱追加で買っておいてくれると言う。

 お古だけど……とトイレや水用の皿なども持って来てくれて、水とカリカリを設置しておく。


 ユリアン先生は自室の方で飼っているそうだけど、トイレは臭うので裏口の方に置いているそう。

 ラボも倉庫の様にしている部屋の奥にほぼ使っていない裏口(非常階段への出入り口)があり、そこにトイレは置くことにした。

 

 ウォロが魔法陣で寮に戻り、ティエルノを連れて来た。


「ティエルノ、疲れているとこ、ごめん。

 ラボと寮で飼育許可申請を出した方がいいんだけど、寮に出入りしても大丈夫そうかな?」

「大丈夫だろ? 苦手だったりしたら、あの時点でなんか言うだろし。

 一応寮でみんなに話をして、OKもらえたら申請書出すよ。

 名前はノアールだな。わかった」


 ティエルノはまた戻って行った。


 えーと、私も寮に戻らないと……。

「ノア、一度寮に戻ってから、また来るよ。

 レイモンド、ごめん、なるべく早く戻るから!」

「わかった。今日はまだいられるから」


 私とウォロは時間短縮で魔法陣で帰ることにした。

 

 寮のみんなもノアが時々寮の中を歩くぐらいなら大丈夫と言ってくれ、ティエルノが申請書を出してくれることになった。

 

 風呂に入り、洗濯物をまとめたら、今回はセレナが持って行ってくれるというのでお願いした。

 部屋着に着替えてから、また魔法陣でラボに戻った。


 ウォロもラボを通り、クラウス先生の所に顔を出すという。

 

 レイモンドが生徒会の方へ行くと言うので、いてくれたお礼を伝えて送り出す。


「ノア、夜どうする? 私の部屋に寝に来る?」

 話しかけると、自分から木箱の寝床に入ってぐるぐる言いながらふみふみしている。


 何度か足踏みしながら回りながら位置を調整して座りこんだ。

「ここでひとりで大丈夫なんだね。

 また、夜見に来るね」

 

 私はベース薬に光魔法をかけて解毒薬を作り、瓶に詰める作業をした。

 詰め終わり、ラベルを貼り終えるとウォロが戻ってきた。


「まだいたんだ!」

「うん、一緒に戻ろうと思って……」

「あ、そうなんだ。うれしいな。でも、疲れてるのに作業してたの?」

「何もしてないってのはもったいなくて……。無理のない程度に少しだけね」


 ウォロはノアを見た。

「寝てるみたいだな」

「うん、後でもう1回見に来るよ」


 鍵を閉めて「先にウォロ戻っていいよ!」と言うと「一緒に戻らない?」と言われる。


 ひとり用じゃないの?

 私が不思議そうな顔をすると「理論的にはふたりぐらいまでは大丈夫なんだよな」と言った。


 ウォロが魔法陣の上に立ち、私が抱きつくみたいにくっついた。

「行くよ」

 ウォロが魔力を魔法陣に流して……。


 ちゃんと寮のウォロの部屋に到着。


「本当だ! ふたりでもくっついてれば大丈夫だね」

 私は笑った。


 寮で夕食を食べ、ライトに湯引きした魚の切り身をもらってラボに戻る。

 カリカリは減ってない。

 

 違う皿に魚を入れて置いておき、水を入れ替えた。

 

 寝床から顔を上げ、私がすることを見ている。

 トイレもまだ何もない。


 大丈夫そうだな。

 私は魔法陣でウォロの部屋に戻った。


 すごく眠い。

 私は自分の部屋に行くと何とか部屋着の上着を脱いで、ベッドに潜り込んだ。


 次の日は日曜日で休みなので、のんびり……と、いや、ラボに行かなくちゃ! と思ったら、ドアが開いて黒い物が部屋に飛び込んで来た。


「ノア?!」

 ウォロがドアの所に立っている。


「連れて来てくれたの?」

「いや、自分で魔法陣使って来たんだよ。

 ネモを探してるから、連れて来た……」

「ありがとう! 疲れてるのにごめん!」

「いやいいけど。いいなあ、ノアは。ネモのベッドに飛び込んでも何も言われなくて……」


 ノアは私のベッドの上でまた丸くなってもうひと眠りという感じだ。

 私はそっとベッドから降りると、上着をつかんで羽織った。


「今日は?」

 私がウォロに予定を訪ねる。

「午前中にクラウス先生のところに行くんだけど、ネモの魔道具の話もあるから一緒に行こう」

「わかった。朝食、テイクアウトしてラボで食べるのは?

 ノアを散歩させてやりたいし、外歩いて行こう!」


 着替えて寮を出る時に「ウォロ、自主練の話、ミカやダリルにも伝えておくから!」とエドワードに言われ、「ネモ、ノアールの申請書出しておくからな!」とティエルノに言われた。


 歩いてまず食堂へ向かう。

 ノアも楽しそうにあちこち跳びはねて歩いている。


 ウォロにノアと外で待っていてもらい、朝食のテイクアウトと猫のご飯にできそうなパンとお肉をわけてもらえた。


 ラボに入り、ノアのトイレの掃除や水を入れ替えた。

 パンをちぎり牛乳を加えて出す。


 私達もお茶を入れ朝食を食べた。

「たまにはこんなのもいいな。

 明日からはランスとアルテイシアが来て、また3日間、ネモと過ごせる時間が減るから……」

「だいぶ、2-1ですごせるようにはなってきたから、もう少しだと思うよ。

 

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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