160 今の自分
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
続けての2日間も、アルテイシアと昼休み、放課後を過ごした。
私とふたりきりの時の方がいろいろ話しやすいみたいだけど、私だけ……というのもきついし、サーシャ対策もあるので、オードリーとミカも一緒に過ごすようにしていく。
3日目はランスも昼食を一緒に食べていたんだけど、サーシャが近くのテーブルにいて、こちらをすごく気にしているのがわかった。
それに気がついているのかランスが「ネモはやさしいよな」とかアルテイシアに話しかけ誘導するみたいに「ネモが好きになった」とか言わせちゃって、サーシャの方からのイライラの気配がどんどんこちらの方へ流れてくる。
なぜか、アルテイシアじゃなく、ランスの方に向かっている。
あれ、初日はエドワードに向いたし、今日はランス?
今はサーシャの嫉妬や怒りがアルテイシアに向かわずほっとしている自分がいる。
聖魔法の授業は週末の放課後月2回なので、週の後半は王城に戻るアルテイシアは参加できない。
マリアが時々王城で見てあげているそう。
なので3日目の放課後、30分と時間を決めて光魔法の練習を私とすることにした。
オードリーとミカはテーブルの方で自分の勉強をしていてもらい、ソファでお互いに光魔法をかけたり、治癒や癒し浄化などの説明と実践をして見せる。
「この力がうまく使えるようになれば、薬作りのお手伝いができるんですよね。
がんばります!」
「そうだね。アルテイシアが手伝ってくれたらレイモンドも喜ぶよ」
私の言葉にちょっとしゅんとするアルテイシア。
「兄様にも……、謝らないと。
とても迷惑をかけて、最後は怪我まで……。
でも、兄様が自分のために私をおとなしくさせようとしていたんじゃないかという気持ちもあって」
「それはあるかもね。
レイモンドは学校のことよく知っているから。
情報も回るのが早いし、変な噂になったりすれば長く辛い思いもするし」
頷くアルテイシア。
「いろいろな感情があるのは当たり前だし。
自分をよく見せたいことだってあるし、でもだからと言ってアルテイシアを心配していた気持ちが全部嘘ではないし。
レイモンドは今でも心配してるよ。本当はすぐにでも会いたいって言ってたんだけど、私がもう少し学校生活に慣れるまで、過去のことをしっかり考えられるまで待ってと言ったの。勝手にごめんね」
「いえ、なんかわかります。
兄様が好きだけど、こんな私を疎んじているんじゃないかいう気持ちもずっとあって……」
「私には姉がいるけど……。兄弟って友達とも違う、甘えや遠慮のない厳しさとか、助けたいという思いとか、相反するものをお互い抱えている存在なのかなと思うよ。
学校に慣れてきて、私達教育係がいなくても、やっていけると思えた時、レイモンドとゆっくり話してみれば。アルテイシアの力になってくれるから」
「はい。
それに今は花祭りも控えてるし、兄様も忙しいですよね」
「そうだね、もうあれから1年か!」
私が笑うとアルテイシアが赤くなって、頬をふくらませた。
「魔道具の事件のこと思い出してます?」
「うん、ちょっとね……」
「あれは……、本当に……」
「うんうん、すごかったよね」
「あー、もう!! 思い出すだけで、恥ずかしいし、絶望的な気持ちになる……」
「人生なんて、そんなことの積み重ねだよ」
私の言葉に驚きの表情を浮かべるアルテイシア。
「ネモが?」
「うん、失敗なんてたくさんあるよ。
恥ずかしいこともたくさんあったし、自分が大怪我して周りに心配かけたことも、イライラして家出して心配かけたこともあったな……。
でも、どれも今の自分にたどり着くための必要なことだったんじゃないかって思うし。
じゃあ、勉強の方に戻ろう。
夕方、ランスと王城に戻るんだよね」
「はい」
ランスとカトレア先生が戻ってきたので、アルテイシアとランスにまた日曜日にね! と挨拶して、ラボに向かった。
「今年の花の女神は誰だっけ?」
オードリーが言った。
「カレンじゃないの? 副会長の? だってレイモンド婚約者いないし」
私が答えるとミカが言った。
「まだ4年の女子で揉めてるみたいだよ」
「えー、もう3週間もないよね?!」
生徒会の4年女子を思い浮かべる。カレンとあとふたりいたはず。
「それを考えると来年もどうすんだろうね?」
オードリーが考えながら言葉を続ける。
「会長はエドワードでほぼ決定でしょ?」
あー、そうか、それまでに婚約者か恋人ができればいいんじゃない?!
無理?!
ラボでベース薬の確認をした。
明日からは薬作りしなきゃだな。
「お待たせ、付き合ってくれてありがとう!」
「いや、大丈夫。生徒会寄って行かない?」とミカが言い、私達はラボの鍵を閉めて生徒会室に向かった。
生徒会室にはレイモンド、エドワードやティエルノ達がいた。
あれ、ウォロがいない?
私達が入って行くとエドワードが困ったような顔をした。
レイモンドが私に言った。
「ネモ、花の女神やってくれないか?」
「やらない」
私が即答して、レイモンドがガックリする。
「私、今年は裏方やりたいな。
ちょっと会場の方でやってみたいことがあって、去年ウォロと話してたんだよね。
だから、付き添いとかもしないで、本当に裏方やりたい」
「ネモは出ないの?」
カレンに聞かれる。
「うん、ダンスくらいは少し顔出すかもだけど、それくらいかな?」
カレンがレイモンドを見た。
「それなら、私やるわ」
エドワードとティエルノがほっとした顔になる。
寮に帰りながら話を聞くと「ネモが付き添いしたりダンスに出たりすると、花の女神の影が薄くなるから、やだ」と言って4年の女子が揉めてたそう。
なんと! 知らないところでそんな話になっていたとは?!
寮に帰る道でティエルノが言った。
「でも良かったよ。今年女神になったら、来年できないだろ?」
オードリーと顔を見合わせる。
「来年? なんで?」
「来年は4年だし、生徒会から出ることになったら花の女神になれるだろ?」
「ならなくていいよ。それに……、もしかしたら結婚しているかもしれないし」
「えっ?」
みんなに聞き返される。
「だって来年のこの時期に16歳になるじゃん。
ミーアでなら結婚できるし、とりあえず、学生しててもミーアの婚姻届けは出せると思うんだけど」
「そっか、ネモ、もう15歳か!」
オードリーが言った。
「うん、来年の花祭りの前には私もウォロも16歳だよ」
「えっ? 結婚したら、寮は?」
ティエルノが慌てている。
「このままだよ。今と変わんないよ。学校と寮での風紀は守ればいいんでしょ?
結婚したってそうすればいいじゃん。今と変わらないと思うけど」
「えっ? 婚約と結婚じゃ……。
まあ、もうネモはウォロの嫁って呼ばれてるし……、変わんないかもな?!」
「だしょ?! 先生にはこれから話すけど、たぶん行けそうな気がするんだよね!
あ、エドワード! 陛下には言わないでよ! あ、ランスにも!!」
「ウォロとは話しているのか?」
エドワードが言った。
「うーん、16になったらすぐ結婚しようとは言われてるけど、学校と話さなきゃね、ぐらいしか話してない。そこからひとりで考えてたんだけど……、行けそうだなって思うようになって」
読んで下さりありがとうございます。
やっと15歳だよ~!!
卒業まで後3年か……。
これからもどうぞよろしくお願いします。




