155 女子は怖い
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
サーシャの顔色が変わった。
「私の気も知らないで、なによ!
ネモなんかに、わかりっこないでしょ!!
ネモの方がひどいことしてるんだから!!」
「ネモがひどいって? 何が?」
ウォロが私を守ろうとしてくれてるんだろうけど、怒っている人に言うとさらに怒りそうなフレーズだよな。
「……婚約者がいるのに、エドワード様に引っ付いていることよ!!」
「えっ? だって同じ寮だし……。
セレナも同じ寮で婚約者いるけど、エドワードと友達だよ。同じでしょ?」
「違う! セレナとは違う!
ネモは、ネモは……。ネモがいるからエドワード様は女子を寄せ付けないんだと思う!」
「えっ?」
そんな存在を全否定されましても……。
「ネモがはっきりしないからでしょ!!」
「は、はっきりって?! 私、ちゃんと……」
エドワード、振りましたよ、お断りしましたよ。
しかし、そんなこと、ここで、食堂で宣言できるわけもなく。
私はサーシャに腕をつかまれたまま食堂の外に移動した。
途中サーシャがびっくりして手を離すと逆につかみ返して校庭の人気のない端っこへ連れて行った。
ウォロも追いかけてくる。
「私、ちゃんと、振りました。エドワード。
片思いもやめて! 時間の無駄だから! 好きになれる人探して! って、1年の時に言いました!」
サーシャがぽかんとした顔で私を見てくる。
「ほんとなの?」
「こんなことで嘘つくか!!
私はエドワードのこと、友達と思ってる。
少し前はエドワードに好意を持っていそうで良さそうな子だなと思うと勧めたりなんかもしちゃって、逆に嫌がられて……。
だから、今はもう、そういうことはやめた。
エドワード、前に女子に追いかけ回された時に女性嫌いになりかけちゃって。
今のサーシャのやり方は逆効果!!」
サーシャ、目に涙を浮かべてから、笑い出す。
怖いんですけど……。
「ごめん、そこは誤解してた。
でも、周囲からはエドワードの気持ちをネモが繋ぎ留めてるみたいに見えるよ」
えっ?
私はウォロを見た。
ウォロが困ったような顔をする。
「私、エドワードにウォロとの事とか話してるんだけど?」
「なんで?」と慌てるウォロ。
「魔法対戦の後、言うこと聞く約束またしたのかって言われて……。
これで2回権利を得たから、今度は使うんじゃないかってとか……」
「あー、それで、急にエドワードがその時期、休みの日に用事ぶつけてきて、ネモとふたりきりで出かけるのを阻止してたんだ!!」
苦笑いするウォロ。
「ね、エドワードはまだネモのことが気になってるのよ」
と言われましても……。
困惑の表情の私にサーシャがさらに言ってくる。
「ネモって鈍感だよね。
とってもいい人なのはわかるよ。
ちょっと変わってるけど、そこが魅力だし、やさしいし、かわいい人だし……。
エドワードも、卒業しちゃったけど5年のランスもそうでしょ。
ネモのこと好きなの周囲から見てバレバレじゃん。
それなのに友達って、仲良くしてさ……」
むっ。ランスも一応、振り……、振ろうとしてたけど、のらりくらりと結論を言わせてもらえなかったんだっけ。
「ランスにも言いました。私にはウォロがいるから、他の人とどうこうなることは絶対にない!! って」
サーシャがイライラ顔になる。
「本当にイラつくなぁ!!
振っても振っても思われちゃうんですものって感じ?!」
「いや、そんなことは思って……」
「いいわよね。ネモにはウォロがいるから、好き放題でしょ?!」
「いや、そんなことは……」
「ネモがアルテイシアみたいに演技したり、計算してないことはずっと見てきたからわかるけど、それでも、……嫌な女よ。私にとってはね」
嫌な女って言われた?!
女子に言われるとすごいショック、何ですが……。
「……まあ、好き嫌いは人それぞれで……。えっと……」
なんだか頭が回らない。
「だから、そういう言い方? 嫌い、嫌い、大嫌い!!」
力いっぱい叫ばれてしまう。
えーっ、私サーシャにそんなひどいことしたのかなぁ。
私が涙目になり黙ってしまうと、ウォロが「ネモ、大丈夫か?」と肩を抱いてくれる。
「そーいうのが……。泣けば周りの男子が解決してくれると思ってるんでしょ!」
「違う……」
「じゃあ、泣き止みなさいよ!」
「だって、だって、サーシャに嫌いって言われたのがショックで……。
アルテイシアならこっちも嫌いだからいいけど、サーシャはそこまで嫌いじゃないから……」
話しながら、うるうると湧き出てくる涙を止めることができない。
それを見てサーシャがぎょっとした顔になる。
「えっ、何?
そんなにショック受けたの?!
ウォロ、何、ネモって何か変なトラウマでも抱えてるのっ?」
「ごめん、サーシャ。
ネモはその、鈍感なところもあるけど、傷つきやすいところもあって……。
子どもの頃に辛い思いもしているし……」
ウォロが私の頭をよしよししながら言うんだけど、鈍感なところって、ひどくない?!
まあ、本当なのかもしれないけど……。
私は涙を拭って言った。
「ごめん、サーシャ。
そんなに嫌われてるの気がつかなかった……。
私、学校をやめることはできないからさ。もう、お互い関わらないようにしよう。
ごめんね。言いにくいこと言わせて」
「えっ? ちょっと待って?
さっきの言葉だけど……、私もごめん。
イライラしててネモにそれをぶつけた。
私、ネモのこと嫌いじゃない、嫌いじゃないから!!」
「いいよ、無理しないで……」
「ちょっと、ちゃんと聞きなさいよ!
私はネモのこと好きよ!
っと、なんてこと言わせんのよ! 本当に!
エドワード様のことでイライラしてて、それをネモにぶつけた!
親に言われたのよ。
エドワード様に近付いて、絶対に婚約しろって。
花祭りの時、エドワード様と踊ったでしょう。
それを他から聞いて親がその気になっちゃってて……。
本当にごめん!」
サーシャがウォロの手から私を引っ張り出し抱きしめてくる。
唖然とするウォロ。
「あー、もう泣かないで。かわいい顔が台無しじゃない」
ハンカチで私の涙を拭いてくれる。
「……私のこと、本当に嫌いじゃないの?」
「当たり前でしょ!
こんなかわいい人、嫌いになれるわけがない!」
私の方が少し背が高いのだけれど、頬を両手で挟まれ、見つめられる。
「私の言葉でこんなに泣いちゃうなんて、本当にかわいい……」
サーシャの目が何だかうっとりしている?!
「やめろ、サーシャ!!」
声の方を見ると走ってくるダリルが見えた。
「ウォロ、止めろ! サーシャは!」
サーシャが私の顔を強引に元の位置に戻すと「好きよ、ネモ」と言って、キスしてきたっ!
私もウォロもびっくりして固まってしまって、走ってきたダリルが私とサーシャを引き離した。
「サーシャ、ネモは、あきらめるって、言ってただろ!」
ダリルがぜーぜーしながら言った。
「サーシャは……、ネモのことが好きだったんだよ」
サーシャが頷いて話し出した。
「……エドワード様にしておけば、ネモのそばにいられると思ったし、今のオードリーの位置に入れるかもしれない。
そう思ってエドワード様へのアプローチ頑張ったんだけどなー、逆効果だったとはねえ。
新年のパーティーでは、ネモもダリルの看病で休憩室に行ったじゃない。
エドワード様とウォロをネモと引き離したくて戻ったけど、逃げられたから、ネモの様子を見に行ったらダリルは寝てたけど、ミカもいたからネモと話しできなかったし……。
戻ってオードリーがいたから、ちょっと意地悪しちゃったけど、あの子はそういうことネモには言わないでしょ?」
あ、だから、お泊り会でオードリーのテンションがおかしかったのか?
えっ?
どういうこと?!
「私、好きになった人が男でも女でもかまわないの」
サーシャがにっこり笑って、唇に人差し指を当てる。
「ネモの唇、柔らかかった~!!」
ウォロが私を見てから、サーシャを見てぐっと右手を握り締めた。
殴らないよね?
女の子だもん、殴れないよね?!
「サーシャ、その、びっくりしたけど、こんなことはもうやめて。
オードリーにも意地悪するの、やめて。
私が恋人として好きなのはウォロだけだから。本当に……」
「うん、わかった。
でも、あきらめないよ。
隙あらば割り込みかけるから。
それにエドワード様のそばにいられればネモとも一緒だし!」
「……エドワードのこと好きなんだよね?」
「うーん、親に言われたのもあるけど……、ネモと仲良いからってのもある」
「……そういう理由ではやめてよ」
「エドワード様のこと、そんなに気になるの?
なんか嫉妬しちゃうな……」
「だから、本当に好きならいいんだけど、違うなら……」
「じゃあ、ネモが相手してくれる?
ウォロっていう婚約者がいてもいい。
ネモが秘密の恋人になってくれるならエドワードやオードリーにはちょっかい出さないけど」
うっ、何だ、今までにないタイプだ。
ランスにちょっと似てるかなと思ったけど、全然違う!
女子は考えてることが複雑すぎて怖い……。
読んで下さりありがとうございます。
自分でも書いていてびっくりでした。
これからもどうぞよろしくお願いします。