148 新年おめでとう!
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
王城での新年のパーティーは年が明けて1月2日の夜に行われるので、年越しと1日をミーアの大使館でお祝いして過ごし、2日の午前中にドレスや着替えを持って王城に行った。
離宮に通され、セレナとライトも来ていて、みんなで「新年おめでとう!」と挨拶し合った。
アリスやアンドレアス、ランス、アポロもいた。
5年生のランスとアポロは卒業後の進路は大丈夫なのか?
アポロは騎士団を、ランスは魔法局を受ける予定と聞いたけど、どっちも試験があるんだよね?!
ふたりでウォロを捕まえて「明日は剣の稽古に付き合え!」「その後、俺と魔法な!」と声をかけていた。
「剣も魔法も続けて?! ちょっと勘弁してくれよ……」
ぼやいてたウォロだった。
アリスは卒業して4月に18歳になる。そうしたらすぐアンドレアスと結婚する。アンドレアスは2月生まれで、在学中に18歳になっている。
ミーアなら16歳で結婚できるから、学校がミーアの婚姻法の適用を認めてくれれば、私達は4年生の4月に結婚できることになる。
もはや寮や学校内での風紀を守るということだけ気をつければ、婚約でも結婚でも大した違いがなさそうな気がするが……。
「アルテイシアは王城のメイド長がついているんだっけ? どう?」
私はエドワードに聞いた。
「ああ、うん……。さすがのメイド長もかなりてこずっているみたいだよ」
そうか、それは大変。マリアも大変だ。
「離宮にいるから顔合わせないけど、パーティーの時は少し気をつけた方がいいな」
エドワードが心配してくれる。
そうだよ、学校からもエリザベスとか来るし……。
「他に学校からは誰が出席するの?
1年のエリザベスは来るって言ってた!
すると、2年のサーシャとか来るのかな?」
エドワードは少し考えて言った。
「今年は俺も参加すること表明してるから、各学年の1寮のメンバーは来る可能性があるな。
去年はアリスのことでアンドレアスも、俺も出なかったから……」
そうか、去年は夏にアリスがアンドレアスと婚約取りやめになるかもとか、私がアンドレアスの婚約者にならないかとか言われたり、そんな騒ぎになってて、やっと良い方向に話が動き出したのが11月……、なんて感じだったっけ。
学校の生徒がアルテイシアと出会ったら……。
アルテイシアも心穏やかでいられないだろう。
応援しているような声をかけても、見なかったふりをしても、お互いに何かしらわだかまりのようなものを感じてしまいそうだ……。
「アルテイシアも見られたくないだろうしね……」
私がアルテイシアの心情を思い、目を伏せて呟く。
エドワードが何も言わないので、顔を上げた。
エドワードが微笑んで私を見ている。
「やっぱり、ネモはやさしいね。
あんなことしでかされて、一番迷惑かけられたのにさ」
「やさしいわけじゃないよ。ただ相手の気持ちを考えてしまうだけ」
「なかなかできることじゃないから、それは」
「そうかな……。我ながら面倒くさいと思うこともあるけどね。
でも、全然わからなくて、思いつきもしないで怒らせちゃうこともあるけど……」
「確かにネモは極端かもな。怒らせたのは男性?」
「そう……、私のことを気に入ってくれてたみたいなのに、全くそんなこと思いもせず、そのままそう思い込んだまま話してて……、すっごく怒らせた……」
ハイルが脳裏に浮かんだ。元気かな?
「神聖ホウエン王国。新しい王のその後って何か情報ある?」
「そいつは王か」
「えっ?」
「いや、領事館から、国民には好意的に支持されてると連絡が来てたはず」
「そうか、良かった」
ハイル頑張っているんだな!
その時、ランスが「さっきからエドワードとずっと話してるな?!」と乱入してきた。
「あ、ハイルのこと聞いてた! 頑張ってるみたい、良かったよ」
「ハイルって王弟の? 船の奴は何だっけ?」
「ハイレディンのこと?」
「あっそう! ハイレディン!
あのふたりもネモのこと好きになってたよな……」
「あはは、ハイルは王城で私に会う前から、前日に王都のレストランで私を見かけて部下に声かけさせてたんだってさ。
私、その部下がシーラかオードリー狙いで声かけてるのかと思って、その部下とケンカしたからね」
「ひでーよな、本当に。
好きにならせておいて、最後はウォロの所へ連れてけ! 戻せ! だもんな……」
「別に好きにならせようと、なんかしたわけじゃないし……」
「あー、わかっているよ。でも、誘拐されてるのに犯人を治療してやるとかさ……。
ハイルのことも結局は心配して思いやったりしてたんだろ?!
そーいうとこだよ。自覚しろ!!」
「……なんで私が怒られてんの?」
セレナとオードリーの所に行き、ドレスの準備をすることにする。
セレナのドレスは薄い青の上品でかわいい感じ。
「あ、この生地使ってくれたんだ!」
私はうれしくなって叫んだ。
「ええ、ネモ達からの婚約のお祝いのミーアの生地で仕立てたの。
とてもいい色のいい生地って、デザイナーや職人に褒められたのよ」
「うん、この色セレナに合うと思ったんだよね~! とてもうれしい!」
オードリーのは明るい黄緑色と緑の華やかなドレス。
銀糸の刺繡がとても素敵!
私のは銀色の生地のドレス。それに同じ生地で丈の短い上着を作り真冬でも着れるようにした。
やっぱりこのドレスがミーアとのつながりを感じるので……。ウォロとも生地がお揃いだしね。
セレナには、一応、前に貰ったフリフリ下着のお礼も言った。
そうしたらセレナは真っ赤になっちゃって……。
夜、また話しましょうと言われた。
昼間は触れちゃいけない話題なのか?!
仕度を始める前の昼食の時、陛下とマリアが離宮に来てくれたので、新年の挨拶をした後、アルテイシアの件で協力して頂いたことのお礼を伝えた。
あそこで陛下自身が話してくれたことで、真実だとすぐみんなに信じてもらえたから。
それから、アルテイシアの処分も、将来のことを考えてくれたこと……。
「ネモに感謝してもらえるような結果になって良かったよ」
陛下が笑った。
「アルテイシアの育て直しは大変ですけどね……」
マリアが苦笑いしながら言う。
「でも、カルタロフにはたくさん恩を売れただろ!
この新年のパーティーでカルタロフ伯爵の身分を戻そうと思っている。
娘という人質も取れたことだし、な。ネモのおかげだ」
あー、そんなことまで考えてたんだ!!
いや、私のおかげとか言わないで欲しい。聞かれたら誤解される!!
私の表情が強張ったのを見て、マリアが言った。
「アルテイシアは今日は裏方仕事だから、出会うことはないと思うけれど。
ネモは……、よくわかんない動きをすることがあるから、気をつけて!」
マリアの言葉にエドワードとティエルノとダリルとミカが吹き出して、大笑いする。
「確かに! ネモのよくわかんない動き! ある!」
ランスがライトと顔を見合わせて話を続けた。
「孤児院の時だって、なんでか俺達を逃がそうとドアの外に突き飛ばしたよな?!」
「うん、ネモを守ろうとしてたのに、あれはびっくりした!」
「あの時は……。ふたりを守ろうと身体が勝手に……」
「だから、ネモの方が守られるほうなんだって、自覚しなよ、本当に!
今日は気になることがあっても自分で動くんじゃねえぞ!
ウォロ、ちゃんとそばで見ておけよ!!」
ランスの言葉にウォロが頷く。
「わかった。離さないようにする」
えっ?
「だから、誰とも踊らせないってことでいいよな」
ニヤッと笑った。
あー、そういうことを……。
読んで下さりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。