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146 わかりあえないこともある

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。


 レイモンドが大広間に飛びこんで来た。


「アルテイシア!」

「兄様! 助けて! みんな私の邪魔をして意地悪するの! お父様を呼んで!」


「アルテイシア、それはできない。

 私達は、これまでの話を聞いて、アルテイシアの方に非があるとわかっているからだ」

「なんで? お父様は?」

「お父様も僕と同じ意見だよ。

 今、君が意地悪されていると感じていること、それを君は周囲の人にやっているよね?! 

 これだけたくさんの人に言われてもわからないのか?」


「何で急に! のびのび素直なアルテイシアが一番。素直で自分のやりたいようにするアルテイシアがかわいいって言ってたじゃない!」


「すまん、お父様も私も、君への対応を小さい子どもに対してのまま、変えなかったことは……申し訳ないと思う。

 でも、こんなに人の心がわからなくなっているとは思わなかった。

 これまでのことはアルテイシアが悪い!

 きちんと反省して謝ろう!」


「嫌よ! 謝ったら負け! っていつもお父様に言われてたわ!

 絶対、謝らない!! 私は悪くない!!」


「レイモンド、どうしよう。もう捕えるしかないんだけど、もう少し説得してみる?」

 私がレイモンドに話しかけると、アルテイシアが怒り狂った。


「兄様に近寄るな! この男たらし!! あんたなんか誘拐されて殺されちゃえばよかったんだ!」


 はっ?


 ウォロとエドワードが怒りを隠さなくなってきている。

 早く捕まえた方が良さそう。


「レイモンド、もうダメだ。捕まえる」

「ネモ、もう少し待ってくれ!」

 レイモンドが前に出ようとした私の腕をつかんで止めようとする。

 一瞬、視線がレイモンドの方を向いた。


「兄様を誑かすな!」

 すごい声とともに強めの水がこちらに放水される。

 私は小さな竜巻を展開して押し返そうとしたが、レイモンドが私をかばうように抱きしめてきて発動できなかった。

 そのまま、ふたりで水魔法の直撃を受け、巻き込まれて床に転がされ、流される。


 私は両手を床について座りこんだ状態でなかなか顔を上げられなかった。

 髪の毛や服に浸み込んだ水が身体の熱と戦っているようなじわじわした嫌な感じだ。

 髪の毛の先から、顎からぽたぽたと身体の熱を奪いながら床に滴り落ちる水滴を見て、あーあと思った。

 室内で離宮で王城で、しかも陛下もいるし……。


 だから直接建物に被害が出そうな、水も風もできるだけ使わなかったんだよ!!

 

 さすがに私はブチ切れた。


 レイモンドは背中にまともに放水を喰らったようで痛みで呻いている。

「カトレア先生、レイモンドをお願い!」

「ネモ、あなたは大丈夫?」

 駆けつけてくれたカトレア先生にお願いして立ち上がる。

「もう、許さん!」


 私は水球に電撃を入れ込み、アルテイシアにぶち込んだ。


 彼女の火魔法の防御で水球を蒸発させられるのは想定済み。

 電撃は残んだよ!

 私の光魔法強くなってるからな!

 やれ!

 

「痛い! いや! やめてー! 痛い、痛い!」

 アルテイシアが痛がる悲鳴が響き渡る。

 静電気のバチバチに全身襲われろ!


 火の防御壁が水球で相殺され消えたので、自分の身体を抱きしめるようにして立ちすくんでいるアルテイシアのそばまで行って、両手を後ろにねじ上げてひざまづかせた。


「離せ! ひどい! なんてひどい!」

 アルテイシアが泣きながらぐずぐず言っている。


「うるさいっ! あんたねぇ、レイモンドはもっと痛がっているよ!

 いい加減にしなさいよ。この離宮の惨状、どうすんだよ?!

 王城でこんなことしたら不敬罪だよ!」

「……これはネモのせいでしょ!」


 まだそう言うか?!

 私は呆れ果ててしまった。後はもう陛下に任せるしかない。

 もう王城でこれだけ暴れて荒らしたら、罪人として捕まるしかない。

 

 ウォロとアポロが衛兵やら騎士やらと来てくれて、何とかアルテイシアを捕まえて連行してもらうことができた。


 精神的に非常に疲れた。

 そういえばレイモンドは?

 

 カトレア先生の所に戻ると、レイモンドは目を開け話ができるまで回復していた。

 良かった。


「ネモ、無事でよかった」

 レイモンドが微笑んだ。

 そばにいたエドワードが冷たく言った。

「レイモンドがかばって抱きしめなければ、ネモはあんな水魔法打ち返せてたんだよ」

「えっ?」

 レイモンドが私を見る。


「うん、でも、あわてて打ち返してたら離宮もアルテイシアも無事かどうかだったから、まあ、いいんじゃない。

 レイモンド、背中見ようか」


 私はレイモンドの手を握り光を流した。

 うん、大丈夫そう。

 直撃を受けた背中の当たり所が悪かったらと心配していたんだけど、打ち身のあざが出るくらいで済みそうだな。

 痛みを軽減するように少し治療しておく。


「打ち身のあざがこれから出るかもね。少し治療したけど、命に別状はない症状だから、これぐらいにしておくね。痛みがひどかったら、また言って」


 私は大きなくしゃみをした。

 レイモンドも私もびしょ濡れだ。

 だいぶ冷えてきた……。


「濡れちゃった子は……」

「ネモとレイモンドだけだよ」

 エドワードに言われた。


 私とレイモンドは離宮の風呂のある部屋に連れて行かれることになり、生徒達は避難していた控室から荷物とコートを持って、王宮の大広間へ移動するとのこと。


 陛下が何かあったらと、王宮内にも会場を確保してくれてたらしい。

 マーリン先生とクルトもキャサリン先生達とそちらへ移動するという。

 

 ウォロが戻って来て、全身びしょ濡れで寒そうに震えている私を離宮のいつもの泊る部屋に連れて行こうとするが、エドワードにはばまれる。


 エドワードが指示を出す。

「ウォロは王宮に来い! オードリー、ネモの付き添い頼む!

 ランス、レイモンドの付き添い頼んでいいか?」

「いいよ!」「レイモンド、こっちだ!」


 ランスとオードリーに連れられ、私達はそれぞれの部屋に連れて行かれ、風呂に入ってほっとした。

 さすがに室内とはいえ、びしょ濡れは寒かったから。


 風呂で温まってから出ると、オードリーが何着か服を広げていた。

 マリアが届けてくれたそう。

 みんなは制服だから、ドレスはないわー。浮いちゃう。

 ブラウスと長めのスカートとジャケットみたいな組み合わせの服がありそれにした。


 レイモンドはランスが置いてある自分の服を貸したあげたということで、普通にシャツとズボンと暖かそうなカーディガンを着ていた。


「背中の痛みどう?」

 レイモンドは頷いた。

「少し痛いけど、これくらいは……」

「我慢しないでよ」

 私は服の上から背中に手を当てて光魔法をかけた。

 

「どう、痛みは少しマシになったと思うけど」

「うん、ありがとう。これなら椅子に座ってても大丈夫そうだ」


 コートと荷物は控室に置いてあったから、持って王城の会場に移動した。

 

 もうみんな昼食を食べ始めていた。


 私はクルト達の席に挨拶して、2-1のテーブルに行った。

 レイモンドはランスが5-1のテーブルに連れてってくれた。


「お疲れ様」

 エドワードが言ってくれた。

「みんなこそ、本当に付き合ってくれてどうもありがとう。お疲れ様でした!」

 私は頭を下げた。


「思い知らせることできなかったな」

 ティエルノが言った。

「うん、あそこまでとは思わなかった。

 他人を自分のためにだけいる存在だと思っているんだろうか?!」


「まあ、あの環境だと……、そこまで責める気持ちにもなれないね」

 セレナが少し悲しそうな顔で言って、さらに続けた。


「1-1の様子や他の女子達を見てて思ったの。

 なんか冷たいよね。お互い利用し合っているような関係が見えてしまって。

 私はネモやオードリーが同じ学年で同じ寮で本当に良かった。

 もし、今の1-1だったら、エドワード、ティエルノやライト達もいなくてひとりだったら、あのルーシーって子みたいになっていたかもって思った……」

 

 セレナ、やさしいな。

 うん、それぞれがお互いを利用しようとし過ぎていたかもね。


「あ、でも、あのエリザベスって子。ちょっと気に入った。友達になれそう」

 私の言葉にエドワードが飲みかけていたお茶をむせた。


「ぐっ……、ごほっ。ね、ネモ? えっ、あの1-1の怖い感じの?」

「えっ、早い段階から本音で話していて好感持てたけど?!」


 ティエルノが笑って言った。

「まあ、エドワードのタイプではなさそうだけど……」

 なんだその含みは?


「あ、もしかしてティエルノのタイプとか?!」

 私の言葉にちょっと赤くなるティエルノ。

 えー、意外!

 強い感じの子が好きだったんだ!!


「やめろよ! ネモ、首突っ込むな! 自然に見守れ!」

 ウォロが止めてきた。

「何でわかるの?」

「そりゃ、いつものパターンだからな……」


 昼食の後、自由に移動して歓談できるようにしたので、私はミーアの留学生達と話をしてから、エリザベスにも挨拶して話してみた。


 エリザベスも私と話したいと思ってくれていたそう。

 今度、食堂で一緒にお茶を飲もうと約束した。

 ティエルノのためじゃないよ。私が友達になりたいと思ったからだよ。 


 学生達はその後、馬車で無事学校まで送り届けた。


 カトレア先生とクラウス先生は、大変だったと後から聞いた。

 学校に連絡して、学校長がアルテイシアに会いに来たり、陛下とも学校を退学させるかとかそんな話をしたそう。

 

 結局、学校には籍を置いたまま、しばらく王城で生活して様子を見ることになったそう。

 属性魔法を使えないようにして(抑制の魔道具つけられるの、少し同情する)、王城の厳しいメイド長に預けられて育て直し(性根を叩き直す)を行う!

 聖魔法が少々使えるけど、まだ人を攻撃するまでは使えないとのことで、そこはマリアが仕事の合間に様子をみることになったそう。

 マリア、仕事が増えてごめん!

 

 でも、貴重な聖魔法使いだもんね。

 きっちり罪を償って、立ち直れれば……。

 そう思いながら、無理かもな……とちょっと心配もしている。

 

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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