139 何もかも様子見
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ティエルノが自分の部屋に戻ったので、そのまま私達はドアを開けたままにして話を続けた。
「結局、陛下は自分の思い通りにするだろうし……。
新年のパーティーには参加する方向で考えておいた方が良さそうだな……」
「うん、そうだね……。
あー、学校の噂はどうしよう……」
「ティエルノも言ってたけど、エドワードの態度なんだからどうしようもないよ。
いつも通りにしてるしかない」
次の日の放課後、カトレア先生の研究室にウォロと行くと、もうレイモンドが来ていて、カトレア先生とクラウス先生と話をしている。
「ネモ! 病院から結果が来たよ!」とクラウス先生。
薬の検査の結果、研究室での検査機器より詳しいことがわかったが、だいたい予想範囲内。
つまり薬として充分使用できるということ。
特に私の体力回復薬の効果が素晴らしく、体力だけでなく身体の機能の回復まで考えられる数値が出たとのこと。ダンテからの連絡と同じ効果だ。
病院でも治験に取り組むことを検討しているとのことだった。
そのため薬を可能なら増産して欲しいとのことで…...。
カトレア先生が学校長に掛け合って教職員用の空き研究室を、私とレイモンドの薬作りの研究室として使えるようにしてくれた。
カトレア先生、仕事が早い!!
「自分も手伝うよ」とウォロ。
レイモンドも「アルテイシアにも様子を見て手伝わせていいだろうか?」と聞いてきた。
アルテイシアかぁ。冷たい視線を思い出す。
うーん。
カトレア先生に「アルテイシアの聖魔法ははどんな感じですか?」と聞いてみる。
カトレア先生は「彼女の今のレベルでは薬作りは難しいわね」と言ったのでレイモンドががっかりする。
「光魔法は使うことで力がどんどん強くなるので、アルテイシアも実際にやってみたら変わるかも。
ほら、ウォロも最初は闇のほうが得意だったけれど、私の怪我を治すために光魔法も上手になったしね。
レイモンドが光魔法の練習を見てあげて、カトレア先生からOKが出たら参加してもらおうよ」
ちょっとずるいけど、レイモンドとカトレア先生に丸投げしてしまう。
それでいいとレイモンドも納得してくれた。
カトレア先生の研究室でいつものようにベース薬を仕込んでから、新しい研究室の掃除をして、必要な機材をチェックし、カトレア先生を通して学校長に申請した。
「これだと今の3倍のペースで作れるな!」
レイモンドがうれしそうに言った。
病院では研究室のことを『ラボ』って言うんだよと話をしたら、レイモンドもウォロも面白がってくれて、この研究室はラボって呼ぼうとなった。
鍵はレイモンドと私で管理。一応カトレア先生にも持ってもらうことにした。
とりあえずこの後の本格的な稼働は定期試験後ということにして寮に戻る。
「レイモンドは自分の活動にアルテイシアを引き込もうと必死だな」
ウォロが言う。
「そうだね。自分の目の届くところにいて欲しいんだろうね。
薬作りは、私達が作っているのは光魔法の薬だし、アルテイシアにもいい影響を与えそうだしね」
「我慢するなよ」
「我慢してないよ。アルテイシアのこと、まだ関わる勇気出なくて、レイモンドとカトレア先生にほぼ丸投げしちゃってるし……」
「うん、そうやって適当に手を抜くのも必要……」
ウォロが私の肩を抱き寄せて、頭にキスしてくる。
「何?!」
「あっちから2年の女子が見てるから、牽制……的な?」
「ウォロと仲良し見せつけ作戦?!」
「なんだそのネーミングは?」
私達は顔を見合わせて笑った。
ウォロの牽制が効いたのか、試験に突入して噂どころじゃなくなったのか、エドワードもティエルノとずっと一緒にいたからか、とりあえず何事もなく試験期間に入り、無事終わった。
私達はすぐラボに行き、ベース薬の仕込みと、カトレア先生のところで作っていたベース薬で薬を作った。
箱に詰めるとレイモンドが届けに行ってくれると言う。アルテイシアを連れて行くそう。それならとお願いする。
「ネモ、冬休みに入る前にミクラとジュンの家に、オードリーとシーラを誘って行かないか?」
ウォロに言われ、明日行くことにする。
ウォロが大使館に連絡を入れてくれ、ミクラが朝に迎えに来てくれることになった。
生後6カ月のエレインはとってもとっても可愛かった!
もう私もオードリーもシーラもメロメロになった。
「かわいい!! かわいすぎる~!!」と私が言っているとウォロが「産む気になった?」と言った。
オードリーが「まだ早いから!!」と突っ込んでくれたけど。
のんびりお茶をしていたら馬車の音がして、ランスが降りてくるのが見えた。
ミクラとウォロが慌てて玄関へ出て行く。
「ネモ、病院に来てくれということだ!!」とウォロに呼ばれ、ジュンに挨拶して慌てて出て行く。
ランスが乗ってきた馬車にウォロと急いで乗りこむ。
病院近くで事故が起こり、聖魔法を使える人が集められているという。
今回、私とウォロの名前が挙がり、クラウス先生に頼まれてランスが呼びに来てくれたそう。
遊技場の施設(遊園地みたいなものか?)で火事があり、火傷や怪我の子ども達が多く運び込まれているという。
火傷は早めに治癒魔法がかけられると予後がかなり良くなる。
火傷は熱源から離れても、すぐに冷やさないと身体の深部でダメージが進んで行く怖さがある。
治っても傷になり引き攣れたり、動きが制限されたりとその後の生活に支障が出るし。
王立病院に到着し、ランスの案内でクラウス先生の所に行った。
クラウス先生が治療している子を一緒に診る。
焼けて落ちてきた木材が足を直撃したそうで……。
私は手を握り、体力回復と身体の中からのやけどの治療を開始した。
患部を冷やしたいな……。
私はアイスファイアを使うことにする。アイスファイアは高い熱から吸い取るから……。
足の方で子どもからは見えないから、小さめにして使う。
身体の中から確認するとうまくいっている。身体の奥で細胞にダメージを与えていた熱を吸い取ってくれた。
ただ見た目が火だからね。
火傷したばかりの子には怖いよね。
「任せていいか?」
クラウス先生に言われて頷く。
クラウス先生はウォロと次の子の治療に取り掛かった。
私はランスに「火傷の患部だけ冷やすのにアイスファイアが効くんだけど、見た目が火だから使いにくいね」と話しをする。
「炎の形態じゃなければいいんだろ?」
ランスが考え込む。
その間に治癒を勧めて、新しい皮膚が出てくるところまで治せ、医師に引き継ぐ。
クラウス先生とウォロが見ていた子は火傷は大したことがなさそうなんだけど、苦しそうで涙が出ているのに声が出ないようでパニックになりかけている。
私は彼女の手を握り身体の中を見ながら「大丈夫だよ」と声をかける。
見える腕の火傷より、気道が煙と熱で痛んでいたのがわかった。
「咽喉が苦しいね。わかったから、今、治療するね」
声をかけると安心した表情を見せる。
身体の中から光を集中させ、咽喉の方の治療を優先させた。
呼吸が楽になる。
火傷はウォロに任せることにする。
クラウス先生に連れられ、次の患者……。
運ばれてきた子ども達の手当てが終わったところでクラウス先生、カトレア先生(来てたんだ!)、ウォロとキャサリン先生とランスも交えてお茶を飲んで一息ついて治療について話し合う。
身体の中に光を流して全身の状態を見るというのは、他の聖魔法を使う人でもほとんどできないのだという。
流して回復させる、治癒力を上げるということはできるが、原因を探ったり、診断したりまではできないという。
流すのはできるが、その後、その光がどうなっているのか身体の中まで追うということが難しいらしい。
あれ、なんか普通にやってたけど……。
もしかして、聖女ルチアの記憶……とかなのかな?
「この治療をしたのは、君か?」
突然、話しかけられ肩をつかまれたので、その人を見ると、確かクルトのお父さんだった……。
「マーリン、どうしたの?」
キャサリン先生が驚いて声を上げる。
ああ、マーリンだった。先生って言ってたもんな。
「この内部の損傷まで、どうやってわかった?」
カルテを突きつけられる。
2番目に診た気道内の軽度の火傷の女の子だ。
「光魔法を患者の身体の中に通すと、具合いの悪いところに集まるんです。それでそこを重点的に身体の中から治療します」
「……君はそんなことができるのか?」
「はい」
「なんで、そんな力があるのに……」
マーリン先生の手に力が入り、私は怖くなる。
「離して下さい!」
ウォロが慌てて肩をつかんでいる手を払ってくれて、後ろに隠すようにしてくれた。
「君がミーア帝国の皇子だね。
将来はミーア帝国へ行くから……、王国のことはどうでもいいというのは本当なのか?」
マーリン先生の言葉に私も周囲のみんなもびっくりする。
なんだ、どんな話になっているんだ?!
読んで下さりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。




