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15 初めてのことばかり(前)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。

このミーア帝国で過ごす1週間程度の話が終わったら、姉のアリス(ユーチャリス)がいる学校の話を始める予定です。

ゆっくり書き進めているのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 夕食は部屋に運んでもらえて、ウォロが一緒に過ごしてくれた。

 ダイゴはジョシュア兄様とハロルドと過ごしているという。

「あのふたり、なんだか仲が良くなっているんだよな。

 手紙のやり取りもしてたみたい」

 ウォロがうれしそうに言う。


 あー、ダイゴは手紙をくれるのに、ウォロはくれないからということだったんだな。

 兄様の言ってたことを思い出した。


 そうだ、贈り物を渡さなきゃ。

 私は自分の荷物からウォロへのプレゼントを取り出す。

 きれいな箱に入れてある。

「これ、私が作ったの。

 誕生日にはまだ早いけど、会ったらすぐ渡したかったから……」

  

 ウォロはうれしそうに受け取ってくれた。

 箱を開け、目を輝かせる。

「すごい! きれいな飾り紐だ!

 ありがとうネモ!」

「あの……、それ……」   

 自分の髪が編み込んであるなんてさらっと言えねえ。

 

 ジュンがさらっと言った。

「ウォルフライト王国では恋人に自分の髪を編みこんだ飾り紐を贈るのが流行っているんですよ」

「えっ、じゃあ、この金色のは、ネモの髪?」

 私は真っ赤になり頷く。

「……ありがとう。大切にする」

「うん、ウォロを思いながら作ったから……。

 身につけてくれるとうれしい……」

 ウォロが喜んでくれて良かった。

 引かれなくて良かったよ。


「自分も贈り物を用意してるんだけど、明日、見せるね。

 楽しみにしてて!」

「うん、楽しみにしてる!」

 なんだろう? 

 見せるって?

 魔法陣とか?!

 そう考えたら楽しくなってきて、くすっと笑ってしまった。


 ウォロが帰る時にダイゴも部屋に来てくれたので、飾りピンを今までの感謝をこめてと贈った。

「わ、きれいな石だね。

 聖石だ。それにすごくいい気を感じる。

 ネモ、この石に何かした?」

「何かって?

 ハロルドに教えてもらって、少し形を整えたけど?」

「何か祈ったりした?」

「あ、聖石だし、ダイゴを守ってくれるようにと思いながら作業はしてた」

「だからか。ネモの気を感じるよ」

「その、気っていうの、皇帝陛下も言っていたけど、魔力とかそういう感じのこと?」

「気っていうのは、その人の持つ力のエネルギーみたいな。

 それぞれに違うんだよ。その人と親しくなるとその人の気とか気の名残とか感じ取れたりするような。

 ミーア帝国独自の感じ方かもね。

 もしかしたら魔力と通ずるところもあるのかもしれない。

 ネモの気は明るくて光っぽい。そして温かくてやさしい。

 ありがとう、大切にするね!」


 そうか、気って、前世で言うとオーラみたいなものかな?


 その日の夜はぐっすり眠れた。


 次の日の朝、起きて仕度をして食堂でマリヤム様や兄様と朝食を食べた。

 食後にマリヤム様から一緒に来るように言われる。

 ジュンも一緒だ。

 

 一緒に廊下を歩きながら「ウォロからあなたに贈り物があって預かっているの」とマリヤム様。

 うん? 手渡しできないようなものなのか?

 やはり、魔法陣とか?!


 連れて行かれた部屋を開けるとミーア帝国の有名なシルク生地を使ったドレスが飾られていた。

 色は青と銀が使われている。

 靴やアクセサリーなども一式用意されていた。

「ウォロが用意したのよ。

 謁見式とその後のパーティーで身につけて欲しいって」

 謁見式は知っている。

 その後のパーティーって、何?

 私のびっくりした顔を喜びの驚きと受け取ったようでマリヤム様がうれしそうに言った。

「さあ、腕によりをかけて仕度するわよ!!」


 だから、大切なことは先に教えてくれ!!


 1時間後、私は謁見式に行くため、迎えの馬車に兄様と乗った。

「すごい気合入ってるな! きれいだよ」

 兄様はウォルフライト王国の式服を着て、私が贈った飾り紐を腰ベルトにつけてくれていた。


「これ、全部ウォロからの贈り物なの」

「あー、だから銀なのか。

 とても似合っているよ。

 いつものネモの雰囲気とは違ってるな。

 神々しいというか……。

 ウォロと並ぶといい感じだな。きっと」

「それから謁見式のその後のパーティーって何よ?」

「ウォロから聞いていないのか?」

「何にも聞いてない!!」

「ふたりの誕生日と婚約を祝うパーティーだろ?

 まだ12歳だから、夜会ではなくて、昼のパーティーにしたと聞いているが……」

「……私、ウォルフライト王国でもパーティーに出たことないんだよ!!

 お茶会ぐらいまでしか、しかも陰でこそっとしか出たことない!

 大丈夫かな?! 

 何の準備もしてないし、不安しかないんだけど……」

「まあ、大丈夫だろ……」

「うー、頑張ってみるけど、何かが起きちゃったら、兄様助けてね!!」

「あー、ダイゴもいるしなんとかなるって!」


 謁見式は無事に済んだ。

 兄様はこっちの方が自分が中心に進めなくてはいけないから緊張してたみたい。

 ウォルフライト王からの挨拶状や贈り物の目録を読み上げたりと忙しそうだった。

 私は並んで一緒に礼をするくらいだった。

 それはちゃんと兄様から事前に聞いていたからできたけど。


 この後のパーティーが問題なのだよ。

 控室に通されるとウォロがいた。

 あ、謁見式とは違う服を着ている。

 

 私と同じ青と銀のシルク生地を使ったミーア帝国の式服に、私の贈った飾り紐をベルトならぬ帯飾りにつけてくれていた。

 かっこいい! 

 やはり黒髪と相まって魔王感が増すわ!


「ネモ! 謁見式では話せなかったから……。とてもきれいだよ!」

 ウォロがうれしそうに声をかけてくれる。

「ありがとう、ウォロ。

 素敵な贈り物……だけど、私、このパーティーのこと何にも聞いていないんだけど!」

「だって言っちゃうとそっちでドレス用意しちゃうかと」

「うん、そうか。でもね、謁見式があるから用意はしてたよ。

 ……私、パーティーは初めてで、しかも、みなさんを迎える立場だよね。

 何をどうしたらいいのか……、ウォロ大丈夫?」

「大丈夫! 

 隣にいてニコニコしてればいいから!」

 ホントですね!! 信じるよ!

 ……ダイゴはどこ?


 ダイゴが呼びに来てくれて、私が何も聞いていないことを伝えると驚いて「ごめん」と謝ってくれ、移動しながら、客を迎える流れをざっと教えてくれた。


 ウォロと一緒にいて、挨拶に来るミーア帝国の貴族と挨拶をすればいいと。

 普通に自己紹介すれば大丈夫だからと言われる。

 その後、皇帝が来て、みんなで乾杯して、パーティーが始まればたぶん大丈夫と。

 たぶん?


 聞き返す間もなく、私はウォロの隣であいさつを受け、微笑み、自己紹介した。

 ダメだ、爵位はウォルフライト王国と似ているので何とか理解できたが、太守とか藩主、宮司とかもうよくわからない身分や職名が出てきてお手上げだった。

 宮司?

 日本の神社じゃないもんね? 宮殿の仕事の人?

 後でダイゴに聞こう……。


 皇帝が登場し(たぶんなんかふさわしい言葉があるんだろうけど)、挨拶をしてくれた。その中でウォロと私の名前が出て、ウォロが私をエスコートして前に出る。


 皇帝が誕生日と婚約のお祝いを言ってくれ、その言葉のタイミングに合わせてウォロと一緒に礼をすると、乾杯の準備が始まり、グラスを持たされる。


「ミーア帝国とウォルフライト王国の親交と友情に!」と皇帝が高らかに言うと、みんなグラスを高く掲げて「乾杯」「おめでとうございます!」などと声を上げ、グラスに口をつける。

 

 これで乾杯まで終わった……。

 私もグラスに口をつけるが、お酒の香りがしたので、唇に触れる直前でグラスを戻し、飲まなかった。

 ウォロを見ると一口飲んでしまっていた。

「これお酒だよ!」

「一口ぐらいなら大丈夫だよ」

 

 ダイゴが給仕を連れてきて新しいグラスと換えてくれる。

「これは飲んで大丈夫だよ」

 ダイゴ、本当に頼りになる!


「わ、お前飲んだの?」

「ちょっとだけな」

「乾杯の酒は強いからな……。

 気分が悪くなったらすぐ控室に捌けろよ」

「とりあえず、水分を多めに。

 これ、果汁のジュース? 

 これ多めに飲んどくといいよ」

 そんな話を3人でしていると、ひとりの少女が私のそばに来た。

「エミリア姫とお呼びしてもいいですか?」

「えっ、エミリアと呼んで下さい!」

 グレイの髪に黄緑色の瞳の同じ年代の少女だ。確か……。

「公爵令嬢でしたね。

 なんとお呼びしたらいいでしょうか?」

「オードリーとお呼びください」

「オードリー様、私、ミーア帝国のことはまだまだ不勉強で、いろいろ教えていただけるとうれしいです」

「ネモ、オードリーも3月に12歳になったんだ。

 ウォロと一緒に魔法学校を受験する予定だよ!」

 ダイゴがそう教えてくれた。


「じゃあ、一緒ですね!」

「はい、あの……、ネモとは?」

「あ、私、親しい人からネモと呼ばれることが多くて。

 贈名がネモフィラなんです。

 オードリー様も良ければネモと呼んで下さい」

「いいのですか! ありがとうございます。

 魔法学校でもご一緒できたらうれしいです」

 ジョシュア兄様もやって来る。

 私はオードリー様を紹介した。


「ウォロおめでとう!」と大きな男性の声がして、男性と腕を組んだ私より少し年上の少女が近づいてきた。


「ありがとう。ダンテ兄さん、メイリン姉さん」

 ウォロが返事をしている。

 確か謁見式で皇帝のそばにいたふたり。

 お兄様とお姉様か!!

 私もあわてて挨拶した。


「ネモ、でいいのかな?

 ウォロはちょっと変わったところがある弟だが、いい奴だ。

 よろしく頼む」

「はい、頑張ります!」

 そう答えるとダンテ様が面白そうに笑った。

「ははは、さすがウォロが選んだ婚約者だ。

 ウォロのことをよくわかっているんだな……」

 やっぱり緑の瞳だった。髪の色は茶色。


「よろしくね。今度ゆっくりお話ししたいわ!

 オードリーも一緒に招待するから来てね!」

 メイリン様は銀髪に紫色の瞳。涼し気な感じの美人。


「ありがとうございます」

 私はにっこり微笑み返した。


 ダンテ様とメイリン様はすぐ離れて行った。

 ジョシュア兄様を紹介する間もなかった。


 ダイゴによると、まだ下に9歳のマイベル様と5歳のカノン様のふたりの妹がいるそう。

 今日のパーティーはマイベル様の体調が悪く欠席されたそう。残念。

 6人兄弟姉妹か。

 

 ダイゴが心配そうに言った。

「メイリンには気を付けた方がいいかも」

「そうなの?」

「ダンテはそこまで裏がないけど、メイリンは……ちょっと、なあ」


「大丈夫です、ダイゴ様。

 私がネモ様をお守りしますから!」

 オードリー様が力強く言ってくれる。


「ありがとう」とダイゴが言って……。


「いえ、当然のことです」

 オードリー様がちょっと赤くなる。

 あれ、これはもしかして……。


 ウォロが「ちょっと外に行きたい」と言い出して私の腕を取る。


「お前大丈夫か?」

 ダイゴが心配そうだ。

「気分は悪くないんだけど、ちょっと暑い。

 庭を歩こうネモ」

「わかった!

 ダイゴとオードリーも楽しんで!」

 私はウォロと一緒に庭の方へ向かった。


 ウォロが私の右手を握るとどんどん進んで行く。

 私は早歩きでついていく。


 会場の音が微かになってしまう場所まで来てしまった。


「ここを見せたかったんだ」

 庭の中に小さな神殿のような場所があった。


「ここ、遺跡だったんだけど、父さんに頼んで自分が少しずつ直してるんだ」

 気持ちのいい風が吹き抜けた。

「素敵だね! 気持ちのいい所だ!」

「うん、ネモなら気に入ってくれると思って。

 だから、見せたかった」

  

 ふたりで小さな神殿の中に入る。

 周囲の緑と神殿の白い柱の感じがとても素敵。

 ダナンの遺跡は周囲に緑がほとんどないから。

 遺跡の神殿も昔はきっとこんな感じに緑の中に立っていたんだろうな。


 ウォロが私を抱きしめた。

「どうしたの? 気分悪い?」

 あわててウォロの顔を見上げる。

「ありがとう。一緒にいてくれて」

「それはこっちのセリフだよ。

 ウォロに会えて、一緒にいられて、私はうれしい。

 婚約のことも学校のこともすごく大変だったでしょ?

 頑張ってくれてありがとう」


 ウォロが顔を近づけてきたのでキスされるかと思った時に小さな女の子の声が響いた。

「ウォロ兄さん! その人、女神様?」

読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

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