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131 聖魔法の研究と魔法対戦(クラウス視点)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は時々入る他視点の話です。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 ネモの聖魔法についての考察をカトレア先生から相談され驚いた。

 

 確かに聖魔法に対しての認識や定義は各国でかなり違う。

 聖女に対してもだ。

 

 聖魔法の研究が進んでいるウォルフライト王国では聖魔法使いというくくりになり、聖女という認識や教義はない。

 どちらかというと他の国よりも科学的に捉えられているのだと思う。


 ミーア帝国は過去に聖女が殺されたという歴史があり、それを繰り返すまいと聖魔法や聖女が禁忌とされていた過去がある。


 ホウエン王国は精霊と契約できるのが女性だけ(王との子を産む)という制約があるため、光魔法の治癒が使える力の強い若い女性は聖女と呼ばれると説明された。


 ネモとウォロのことがなければ、こんなに他国の魔法事情のことや裏までも知ることはなかっただろう。


 ウォロには魔道具作りの才能が有り、ネモは聖魔法の力を格段に向上させている。

 もしかしたら、守護霊としてふたりについているサンマチネス、古代の大魔法使いに近い聖魔法力をすでに持っているのでは……と私は思っている。


 ランスがネモに好意を持っていることは気がついていた。

 婚約者のウォロがいるのに、なぜだろうとは思ったが、こういうことはいくら年長者が言って聞かせてもこじれるだけだと思うので、何も言わずに見守っている。


 まあ、でもそのおかげでネモとウォロが助かることもあり、ランスの魔法使いとしての自覚も出てきたように思う。

 アンドレアスやネモとのつながりから、王城と関わりのある仕事を希望しているようだが……。

 少し前までは、卒業してからのこと、そして将来やりたいことがはっきりしていなかったので、その時のことを考えれば、すごい成長したなと思う。


 魔法対戦の練習でアリスとネモ(昨年4位)が聖魔法を許可しての試合をすると言うので、カトレア先生と観に行くことにした。


 アリスはネモの3歳年上の異母姉。

 4属性持ちで聖魔法も使える。

 カトレア先生、ネモと同じく神の愛し子である『ユーチャリス』という名も持っている。

 第1王子アンドレアスの婚約者だ。


 私が学校に来た時はすでにネモと和解した後だったが、ネモを嫌い、意地悪をしていたこともあったのだという。

 その頃は才能はあるが努力はせず、成績も良くなかったと聞いている。


 それが最終学年で魔法対戦の選抜代表に選ばれるとは、かなりの努力と研鑽を積んだのだろう。


 ネモは得意の光魔法を素早く展開させているが、最初は何をしているかよくわからなかった。

 途中、アリスがとても大きな闇魔法を使い出し、驚く。

 ウォロの闇魔法の使い方に似ている。

 ここまでの力があったとは!!


 ここでネモが空中に光の網のようなものを展開させた。

 早い!

 これは光魔法をすでに空中に放出していたのだろう。

 そこで一番最初にしていた光魔法がその放出だと気がついた。

 なるほど、アリスが土の防御壁を張ることを予想して、視点を確保ということもあったのだろう。

 この光魔法による視覚の共有&視点確保ができる聖魔法使いは数少ないはずだ。

 私やカトレア先生もできない。


 光魔法の強さと早さが圧倒的だったネモが優勢勝ちとなった。

 ただ、時間制限がなければ、アリスが盛り返す可能性は十分あったと思う。


 試合後、ふたりで仲良く試合場から歩いて出たが、急に立ち止まり、アリスがネモの右腕をつかんだ。

 するとアリスの手から闇があふれ出してきてように見えた。

 闇魔法ともうひとつ何か禍々しいエネルギーを感じた。カイオーの時にも感じた気配だ。

 人間の負の感情というか、嫉妬や妬み、そんな感情でもあるような……。


 ウォロが駆けつけ、ネモを助けようとする。

 アンドレアス王子もそばに行くが成す術がない。


 アリスは闇に呑み込まれ、ネモも吞まれようとした時、ウォロがネモの左手を握り一緒に呑み込まれていく。

 私とカトレア先生は駆け寄りながら、全部を見ていたのだが……。

 3人が闇の大きな塊に呑み込まれてから、現場に到着した。


 光魔法をかけ闇を中和しようとする。


 なかなか消えない。


 周囲にいる人間が焦り始めたころ、闇は急に引き……、3人は無事に姿を現した。


 これは、古代の文献で読んだことがある『闇落ち』というものではないか?

 強い力を持つ魔法使いが絶望したり、強い怒りというような激しい感情、しかも負の感情に心が振り切った時に起きる……。


 号泣するアリスとアンドレアスの方に我々教職員は付き添うことになり、ネモとウォロは少し離れた所でふたりで話をしていた。

 2年生なのに、本当にウォロは落ち着いている。


 次の日に生徒会室を使わせてもらい、ネモとウォロとも話をしたが、ふたりは大丈夫なようだ。怖い思いもしていない様子。


 魔法対戦大会後にネモとレイモンドとウォロ(急に自分も行くと言い出した)とで、王立病院の医師を訪ねる約束をした。


 ネモはいつも通りで、ウォロがネモを守ろうとしている……、いつもの姿だった。

 

 


   ◇ ◇ ◇ 




 魔法対戦が始まり、最後の5人が決まった。

 

 5年 アンドレアス(火風) 昨年優勝

    ランス(水風)    昨年同率2位

 4年 ノーラ(火土水)   昨年代表 2回戦敗退(ネモに負け)

 2年 ウォロ(火土)    昨年同率2位

    エドワード(火風)  昨年も代表 2回戦敗退(アンドレアスに負け)


 決勝戦にこの5人が勝ち上がった。


 2年のライト(水風)(昨年4位)も強いのだが、今回は2回戦でアンドレアスと当たって負けてしまっていた。

 ミーア帝国で一緒に過ごすことが多かった3年マイネ(火土)(昨年も代表 1回戦敗退)も2回戦で敗退となった。


 聖魔法クラスの1年生アルテイシア(火水)も出場していたが、1回戦で4年のノーラ(火土水)と当たり負けていた。

 3年のレイモンド(火水)は今年は自分から辞退したようだ。

 まあ、カルタロフ伯爵家にとって大きなことが起きた後だし、少し休みたいと思うのも無理はない。

 

 その元凶の父親はネモがホウエン王国に誘拐される事件でウォルフライト国王に頼られることになり、私やギーマ先生と協力してホウエン王国で一時期過ごしていたのだが、魔道具作りと聖魔法の使い方は独自のクセがあるが才能が有り、何を考えているかわからないところがウォロと似ている。

 ウォロにとっては従兄弟になるらしいが……。


 アンドレアスとエドワードが対戦して、アンドレアスが勝ち上がり。

 ランスとノーラが対戦して、ランスが勝ちあがった。

 

 ウォロは去年のアンドレアスと同じ立場だ。

 

 ここからアンドレアス、ランスと2戦し、両方に勝てば優勝ということになる。


 しかし、アンドレアスはエドワードとの対戦でかなり体力を消耗した。

 時間いっぱいまでかかり、何とか優勢勝ちをもぎ取ったという内容の試合となったからだ。


 そしてランスも3属性持ちのノーラに苦戦。優勢勝ちに持ち込んだという試合内容だった。


 これはウォロにはチャンスかもしれない。


 同じ属性のアンドレアスに何とか優勢勝ちしたウォロは、その勢いでランスにも勝利した。


 ランスは、ネモやライトと同じ(水風)だ。

 ウォロにしてみれば対戦し慣れた属性相手だったのだろう。

 時間いっぱいかかったが、優勢勝ちに持ち込んだ。


 ネモと2年の仲間達が大喜びしている。


 私はランスを見やってから、アンドレアスとアリスを見た。

 大丈夫そうだ。アリスから闇魔法の気配は感じない。


 5年の仲間達が彼らを、彼らの戦いをたたえていた。

 いい仲間だ。

 アリスとネモの件で4年の頃は結束がなくなり学年崩壊していたという話も聞いたが、今ではアンドレアスとランスとアポロを中心にまとまっているそうだ。


 表彰式の後、ランスと話をしてから、少し遅めにカトレア先生の研究室に戻ると、ネモがちょうど出てくるところだった。


「ウォロに優勝おめでとうと伝えておいてくれ」

 そうお願いすると、ネモは微笑んで「はい!」と返事をして去って行った。


「何か相談だったのですか?」

 ネモが去ったドアの方を見ながらカトレア先生に聞いた。

 そういえば、病院の方の訪問日時を決めなくては……。


「避妊の方法を聞かれたわ。もう誰にも相談できないからって。

 本当に焦ってたのね。……未婚の私に聞くとはね!」


 びっくりした。

「な、何を?!

 生徒が、そんな相談?! いいのですか!!」

「あなたの弟のランスのせいも少しあるのよ」


 カトレア先生によると、去年の魔法対戦の時に、ウォロとネモが対戦することになり、ウォロが手を抜こうとしたのだそうだ。

 その時、ランスが知恵を授けると言って……、ネモに『私に勝ったらひとつ何でも言うことを聞く』と言わせたらしい。まったく、何をやっているんだか……。

 ウォロは本気を出して勝ったわけだが……。


「それでウォロは味をしめちゃったらしいのよね。

 何かある度にご褒美とか約束というようになってしまって、今回も優勝できたら、と約束させられちゃったみたいよ」

「で、本当に避妊の方法を教えたんですか?!」

「教えたわよ。だって妊娠したら困るでしょう」

「まだ、2年! 14歳の学生ですよ!」


 カトレア先生は笑って言った。

「あの子達なら大丈夫よ。こうやって将来のこともちゃんと考えてる。

 それにウォロも本当にそこまでのことをするか、わからないじゃない?

 ネモだって、それを知ったからと、どんどん先に進むような子じゃないのはわかるでしょ?

 とはいえ、何も知らないままだったら、この先、不安でしょうし……、ね」


「まあ、女性の方の心配や不安もわかりますが……。

 婚約者とはいえ、あのふたりがもうそんなことを心配する関係になっていたとは……」


「かわいいふたりよね」

「驚きましたよ!」

「そう? 私はあのウォロがそんなかわいいこと言ってネモに甘えてるのがかわいいと思ったけど……」


 カトレア先生も少し変わっているからな……。

 まあ、ミーア帝国では16歳で結婚できる。

 でも、まだ1年以上もあるぞ?


「前に、在学中に結婚できるのかと聞かれたこともあったわ!」

「……何と答えたですか?」

「前例がない、寮生活なので結婚した夫婦を対象とは考えられていない、と答えたけれど。

 一番最初の前例になるのも、いいんじゃない?」

読んで下さりありがとうございます。

午後投稿する予定です。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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