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125 何が起きた?

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。


 寝たふりをしながらマッちゃんと話し続ける。


『ハイルはハイレディン商会に行った。

 ネモには眠り薬入りのお茶が出され、今寝たふりをしている。

 いつでも騒ぎは起こせるがどうする? と聞いているぞ』


 そう、どのタイミングで逃げ出せばいいんだ? ってこと。


 前回みたいに逃げ出してもどこにも行けなくて彷徨さまようのはもうごめんだ。

 知り合った家族を巻き込んでしまったし……。


『今、ランスをハイレディン商会に行かせることにした。もう少し待てるか?

 ハロルドとカルタロフにも連絡しなくてはいけないから、とのことだ』

 

 うん、もう少しだね。

 了解。


『了解、とのことだ。

 ネモ、やはり神殿の地下に降りるのは難しそうだ。

 ネモが騒ぎを起こしたタイミングで紛れ込めるかもしれん。

 なるべく大きな音を立てるような騒ぎを頼む、とのことだ』


 大きな音が出る騒ぎね。

 風魔法で、建物破壊するか!

 私は大きな音を立てる方法をあれこれ考え始めた。


「聖女様! 地下にいらして下さい!」

 ドアが乱暴に開いて神官がふたり走り込んできた。

 ひとりはさっきお茶入れてくれた人。

 もうひとりは大神官についてた片方だ。


 私はびっくりして起き上がる。

「精霊が! 精霊が! 大神官様が! 大神官様が!」

 大神官についてた神官が慌てて言葉をくり返す。


 なんだよ! 

 まだタイミングじゃないのに!

 腕をつかまれ引っ張られる。


「ちょっと! やめて!」

 私は抵抗した。


「薬が効いていない?」

 お茶を入れてくれた神官が怪訝そうな顔をする。


 あ、眠くなってから自我が保てなくなるとかそういう系の薬だったのか?

 悪いが飲む前に浄化したんでね。


 ごめん、もう騒ぎが起きている。

 地下の鍾乳洞でかな?


『地下の鍾乳洞で何か騒ぎが起きたようだ! 神官がネモを連れて行こうとしている!

 ネモ行くな! もうそこで騒ぎを起こせ!』

 マッちゃんがそう言うけど、騒ぎ起こしていいのか?

 

 私は風魔法で私をつかんでいた神官を吹っ飛ばした。


 ドアの所まで、お茶を入れてくれた神官が下がった。

 出て行き、鍵を掛けた音がした。

 

 閉じ込められたか。


 私は風魔法の竜巻を横にするとドリルの様に壁に向けて壁を破壊し始めた。

 バリバリゴリゴリとすごい音がする。

 ドアがダメなら壁に穴開けて進むしかない。


 階段のところまで横穴ができたので走って上りだす。

 階段までたどり着いた時、振り返ると水が廊下をひたひたと流れてくるのが見えた。

 地底湖が溢れてきてるのか?!


『逃げろネモ! 奴らが精霊と呼ぶ存在が、ネモを求めて追いかけてきている!!』

 私はあわてて階段を上る。

 

「ネモ!!」

 ウォロの声が上から聞こえた。

 階段から見上げるとウォロが階段を下りてきている。私の手をつかんで上に引き上げ、一緒に駆け上がる。

 広間に出ると神官達に囲まれる。

 ギーマ先生とクラウス先生が闇の防御壁を作り、通路を確保してくれた。


「何か追いかけてくる! 一緒に逃げて!」

 私は叫び、4人で神殿を飛び出る。

 広場まで逃げてから、神殿の入り口を振り返るとだらだらと水がこちらに向かって流れてくる。


 なんじゃあれ?!

 水が溢れてるなら広がって流れるよね?

 水に意思があるのか?


 広場にいた人も流れてくる水のありえない動きに驚き、逃げ出し始めた。

 小さい子どもをふたり連れた女の人が走り出した人達に押され、転んだ。

 私は光の防御壁を展開して、女の人と子ども達を水から守る。

 3人は素早く起き上がり逃げてくれ、ほっとした。

 

 水は光の壁に触れて一瞬ひるんだ様に動きを止めたが、まるで光の壁を食べるかのように盛り上がり壊し始めた。

 えーっ!!

 やはり、ただの水じゃない!!


 私達4人は広場の端まで来たところで馬車から声を掛けられる。

 ハイルとハロルドが御者台に乗っている。

「こっちだ!!」

 ハイルに言われて私達は馬車に乗り込んだ。


 水からどんどん遠ざかる。


 私はほっと息をついた。

 隣を見たらウォロがいた。

 必死過ぎて感動の対面どこじゃなかったわ。


 ウォロも同じだったみたい。

 顔を見合わせたら、私は涙が溢れそうになり、ウォロに抱きしめられた。


 私はこらえきれなくなり「わーん! 寂しかったよー!」と子どもの様に言いながらウォロにしがみついて大泣きした。


 馬車はウォルフライト王国の領事館に到着した。

 ジョシュア兄様がいて、合流。馬車の中でそのまま船に乗り込むように言われる。

 港に向かうとアルテ号がいた。

 ウォルフライト王国の船も。


 アルテ号に私とウォロとクラウス先生とランスとハロルド、そしてハイルが乗り込んだ。

 ウォルフライト王国の船にジョシュアとマリアとギーマ先生とカルタロフが乗り込む。


 もう準備ができてたみたい。

 そのまま、出航!


 アルテ号にはハイレディンも乗っていた。

 甲板にみんなで集まった時、ウォロを見て苦笑する。

「ハイルがでかいと言っていたが……。ネモと同い年なんだよな?! 本当にでかいな!」


 そして私に言った。

「ウォルフライト王国の仕事でね。

 今度はネモ達をウォルフライト王国まで届けるよ」


「仕事だ! で済ますんじゃねえ。お前達がネモや俺にしたのは立派な犯罪だ!」

 ランスがハイルに詰め寄った。


 ジョシュア兄様が間に入って止めている。

「ランス、言いたいことはわかるが、仕事を引き受けてもらう代わりにネモの誘拐のことはウォルフライト王国から訴えないことになったんだ。ここは引いてくれ」


「なんだよ! ウォロもなんか言えよ!

 ……おいウォロ、いつまでネモを抱きしめてるんだよ。いいかげん離せ!」

「約1か月分抱きしめたら……」

「なんだよ、1か月分って!」


 私は思い出して言った。

「そうだ、みんな1カ月以上ホウエン王国で私を助けようとしてくれてありがとう………。

 みんなが助けようと動いてくれていると信じられたから頑張れた……。

 それから、みんなは1か月以上なんだけど、私、あの魔法陣の箱に入っている時は時間がほぼ止まってて……。10日間と2週間知らぬ間に過ぎてた。だからつまり24日間、時間が止まってたの……」


「24日間も?!」

 ウォロが驚いている。

「うん、みんなが頑張ってくれてたのに……、なんか申し訳ない」


「じゃあ、ネモの方が年下だ!」

 ウォロがうれしそうに言った。

「えっ? 何? 私の方が先に生まれて……」

 思い出した。

 一番最初に出会った時、私の方が誕生日がちょい先だと聞いて面白くなさそうな顔してたんだっけ?!


 エドワードといい、何そんなことをこだわるんだ?!


「いや、誕生日は変わらないよ?!」

「だから誕生日から24日間引いて!」

「嫌だよ!!」


 その時、船が大きく揺れた。

 ウォロが私を抱きしめたまま、しゃがみこみ守ってくれようとする。


「なんだ? あっちの船が止まっているぞ!」

 ハイルが慌てている。

 

 ハイレディンはアルテ号も止めた。


 ふたつの船の間に渦潮が出現し、何か黒い大きなものが姿を現した。


 鯨? シャチ?


 それにしては胸ビレが長めだな。

 まるではばたいて飛びそう……。


「あれは……? 精霊カイオー? まさか?!」

 ハイルが叫ぶ。

 私が叫び返す。

「なに? カイオーって!」

「神殿に封じられていた精霊だ!」

「精霊? 精霊って、あんなに瘴気がたくさん?

 じゃあ、私が契約すると言われていた精霊?」


「あれは精霊じゃない!」

 クラウス先生が叫んで、説明してくれる。

「古代よりずっと前、海の誕生とともに生まれたとされる海の魔物の王だ」


「いや、あれは神聖ホウエン王国の地底湖で神聖力を守ってくれていたカイオーだ!!

 ここにいるということは、ホウエン王国はどうなったんだ?!」


 カイオーはとても苦しそうに潮を噴き上げた。

 疲れ切った人の深いため息みたいに私には感じた。 

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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