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114 逃げる

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 夜中に目が覚めた。屋根の解放部から星が見える。

 すごくきれいな星空だ。

 

 立ち上がり湖の方を眺めると、火や明かりがちらちら見えた。

 道にも出て来ないから、また森を探し始めたのか?!


 まだ遠いけれど、こちらに来るのも時間の問題か?


 私はそっと下に降りて、周囲を窺う。

 真っ暗だな。


 どうしよう。ここに残るか、出て少しでも遠ざかるか……。

 迷った末、出て歩くことにする。

 

 川沿いに歩くことは予想されるだろうし、建物があれば家探しされるだろうし。


 目が暗さに慣れてきて、川の音を確認しながら、川に近すぎないように進むことにした。


 少し行くと大きな木があり、それに登ってみることにした。

 風魔法で勢いをつけ、足をかけて登る。

 枝ぶりを確認しながらゆっくりと葉の生い茂る上部まで登ることができた。

 大きな枝が横に広がっていて、思っていたより居心地も良い。横になることもできそうなぐらい広い。

 これなら下からも見えなさそうだし、遠目からも葉の中に隠れているのはわかりにくそう。


 ほっとして、湖の方を見る。

 水車小屋の近くまで明かりが迫っているのが見えた。


 足跡とかが残ってしまっているから、靴を履き替えたことや小屋にいたことはばれちゃっただろう。

 木の上は予想しにくいと思うから(ドレスで登るとは予想できまい)、今度はここでじっとしているか……。


『ネモ、なかなかうまく逃げているな』 

 マッちゃん、夜中なのに話して大丈夫?

『ウォロはネモが心配で寝ておらんよ』

 ちゃんと寝てって……。

 明日の朝、入港したら何か起こるかもだから、そっちこそ気をつけて!

 明るくなったら場所を確認して、動けるようなら王都の方へ行ってみる。

『無理するなよ』

 

 うん、じゃあ、おやすみなさい。


『おやすみ。ネモ』


 次の日の朝、下の方から聞こえてくる人の声で目を覚まし、じっとしている。

 通り過ぎて行ったようだ。

 まだ他の人がいるかもだし、戻ってくる可能性もある。

 じっとしていると話し声が聞こえた。


「水車小屋から川に沿って進んだのなら、こちらに行ったはずだ」

 ハイルの声だ。

 私は息を殺して、聞き耳を立てる。


「こんなに道の方に出て来ないとなると、どこかで怪我をして動けなくなっているかもしれない。

 下の方にうずくまっているかもしれない。よく探してくれ!」


 いや、なんか、そんなに心配してくれると心が痛い。


「ウォルフライト王国の使節を乗せた船が間もなく入港します。

 どのようになさいますか?」

「しばらく入港させるな。審議に時間がかかっていることにして、そのまま待たせろ」

「わかりました。昼までは時間が稼げると思います!」

「それまでには俺も港へ向かう!」

「お待ちしています!」

 何人かの足音が遠ざかる。

 

 ハイルとふたりぐらいがまだいるような気配だ。

 早くどっか行って。

 ……王都の港までそんな時間かからないで行ける場所ってことだよな。


「ネモ!!」

 急に叫ばれてびっくりする。

「おい! 返事しろ! ネモ!」

 あ、見つかったわけじゃない……。

 ドッキリしたよ……!


「魔道具にも反応がないのですか?」

 あ、サナの声。


「ああ、反応はない」

 ハイルのがっくりした声。


 やっぱりこの指輪、魔道具だったか。

 居場所特定する系だったみたいだな?!


「そのうち王都の方へ出てくるでしょう。

 今はどこかに潜んで隠れていると思われます。ウォルフライト王国の使節団を押さえた方が確実かと」

「それはそうなんだが。この森の中で女性がひとりでさまようなんて、心配で……」

「そこまで心配しなくても大丈夫ですよ。

 私を出し抜き、草魔法からも逃れ……。ただの令嬢ではないですね。

 心配するほどか弱い方ではございません」

「それはそうなんだが……。この手に抱きしめていないと、不安でならない……」

 ん? 

 抱きしめるってなんで?


「そこまでお慕いしていらっしゃるのですか?」

 ん?

 慕う? 聖女として利用すんだろ?


「ああ、初めて見かけた時に、この子だと……」

 それは、一目ぼれって奴ですね。

 えっ?

 誰に? 

 あ、私に? 


 昨日の会話が思い出される。

 私をレストランで見かけて声をかけさせたのか?!

 全然思いもしなかったから、すっごい勘違いしまくって返事してたかも。

 でも、私のことお子ちゃまって言ったし、大人っぽくてまあまあきれいだけど、そこまでじゃないよな的な発言してたよね?!

 聖女になるから婚約するみたいなことも言ってたし。


 また知らない間に人を傷つけてた……のか。

 でも、今回は仕方がないよな。

 誘拐されてんだし、こっちは。


「ならば、箱に入れて大切にしまっておくべきでしたね」

 サナのすごい冷たい声。


 こわ! サナ、怖いよ。

 サナにだけは捕まらないようにしないと、命の危険を感じるね……。


「行きましょう」

 サナに促され、ガサガサ遠ざかる足音。


 確実に周囲の足音が消えるまでじっとしている。

 さて次はどうするかな?


 マッちゃん、昼まで入港を引き延ばすらしいよ。

 それにハイルがそっちに向かうみたい。


『わかった。ネモも気をつけてな』


 私は残りのパンを出し、食べ始めた。

 水もコップに溜めて飲む。


 一息ついて、木の上から360度観察する。

 このまま一度港から遠ざかるかもだけれど、違う街を目指すか……。


 木から降りて、ハイル達が戻った方とは逆を目指して川沿いを歩き始めた。


 途中で橋を見つけ、村か街が近いことを感じた。


 髪の毛も一度解いてリボンやピンを外し、ポニーテールに結び直す。

 左の手の大きな聖石の指輪をまだ嵌めたままだったことに気がつき、外して一番長いリボンに通して結ぶとカバンの中に入れた。


 途中で薬草を見つけたので、摘みながら進む。

 何か聞かれたら、薬草を採集しているとか言おう。


 小さな街に出た。

 ちょうど祭りか何かをしているみたいで、今日は通行料もいらないのだという。

 この日を狙って近隣の村から行商に来る人も多いみたいでそんなひとりと思ってもらえたよう。

 ラッキー。

 近くの村から薬草を採取して歩いてきたので売りたいというと、薬草を扱うお店を教えてもらえた。


 薬草を売り、近くの古着屋に入り、動きやすそうなズボンとシャツをヒールの靴と交換してもらう。

 ドレスも買ってくれるというのでたぶん足元見られてるんだろうなと思いつつ、買い取ってもらった。

 

 露店のお店でパンと果物を買って、急いでその街を離れた。

 靴とドレスはすぐ話題になってしまうだろうし。


 でも、ここからは王都の港を目指して移動しないと。

 親切だった門番に王都の方への道を教えてもらうと歩き出す。

 

 時々、道の横の森の中を歩いたりしていたが、馬が数頭急いで出てきた方の街へ向かうのを見かけた。

 あー、もうわかっちゃったのか!

 そこからは道は通らず、時々、道の様子を確認しながら進んで行った。


 途中、マッちゃんからウォロ達が無事に入国できた知らせがあった。

 

 次の街は入らずに森を抜けてスルーした。

 夕方、坂を上り丘の上に出た。

 見下ろした風景の中に時計塔と城が建っている。

 そして港も見えた!

 

 マッちゃん! ウォロ!

 港が見えた!!


『ネモ、儂らは今、王城にいる。一応歓迎され、ネモを探すのを協力してくれるというていだがな……。

 ハイルも会ったぞ。すぐわかった。そいつは王の弟だ。王弟という立場で自由に国の内外で動いているようだ。気をつけろ』


 王弟か……。

 臣下にはなっていないんだな。

 そういや名前は?

 ハイレディン商会の総帥がハイレディンを名乗り、親しい者にはハイルと呼ばせているんでしょう。

 王弟としての名前は?


『それがよくわからないのだ。王弟殿下とだけ呼ばれていた』


 そうか……。

 とりあえず、隠れながら港の方へ向かってみる!

読んで下さりありがとうございます。

午後投稿する予定です。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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