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113 お子ちゃまか野良猫か

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 そのまま食堂で一緒に昼食を食べることになるが、給仕をしてくれたのはサナとモイラだった。

 本当に隙ないな……。

 

 他の使用人とできるだけ接触しないようにしてるのか?

 だからハイルがいない時はできるだけ部屋にいるような感じで圧かけてくるのか?


 んー。


「思い出すな。初めて見かけた時のこと」

 ハイルが唐突に言うので私は「はい?」となる。


「ウォルフライト王国のレストランで……」

「あ、従者がしつこかった!」

 そういえばあの従者、船でも見かけなかったな。


「あの時は悪かった。

 どこの令嬢か、名前だけでも聞いてくるようにと言ったんだが、先を考え過ぎてお茶に誘ったそうだね」

「はい、それで断りました」

「あの時、本当に名前が知りたかっただけなんだよ」

「そうですか」

 従者の話?

「まあ、でも、その後にまたその少女に会えて、精霊に思わず感謝したけどね」

「それは良かったですね」

「……ネモ?」

「はい?」

「ネモのことを話しているんだけど?」

「私の話? そういえばあの時の従者は船にいませんでしたね。

 でも、名前だけ聞かれても普通、貴族の令嬢なら名乗りませんよ。しかも、女の子を蹴ろうとする奴には絶対負けないし! うちのかわいいシーラはあんな奴に絶対渡さん!」

 ハイルがため息をつく。

「あいつはウォルフライト王国に残してきたよ。情報を集めるためにね」

「へー、またレストランで好みの女の子をナンパしないように注意してやってくださいね。

 従者の恥は、主人の恥にもなりますから」


「……ネモ?」

「何ですか?」

「従者に聞きに行かせたのは俺だよ?」

「……えっ? まあ、オードリーはかわいいですけど、私と同じでもう婚約者いるから、無理ですよ」

「えっ?」

「あ、シーラの方? 確かに一番年上で大人っぽいか!

 シーラ、あの後、なんて言ったと思います! 私が皇子様みたいにカッコよくてときめいたって!

 ダイゴ、あ、オードリーの婚約者はミーアのダイゴ皇子なんですけど、ダイゴ様みたいってふたりから褒められました。

 ダイゴも銀髪なので、今の姿のハイルなら女の子からお話の中の王子様みたいって思ってもらえるかも!  

 次は従者じゃなくて、自分で真剣に声かけに行ってみたらどうですか!」

「そのダイゴって奴が好きなの?」

「? ……オードリーが好きですけど?」


 ハイルがイライラし始めた。

 なんだ?

 一応ハイルは王子様みたいにかっこいいと褒めて、頑張れ! ってアドバイスしてみたんだけど。


「お前、鈍いって言われない?」

「お前って……。あー、よく言われてました。でも最近はマシになりましたよ!」

「それで?」


 エドワードとランスが頭に浮かんだ。

 エドワードには申し訳なかったけど……。

 ランスには気がついて対応しようとしたけど、あっちが振られまいとごねたから、なんとなくという感じになってるけど、ちゃんと伝わっているはず。

「うん、ちゃんと振りました」

「よくわからないけど……。お前が鈍くて変なのはよくわかった」


「変と言えばハイルも変だよ。

 ただ聖魔法持ちで治療ができる能力があるだけのお子ちゃまを婚約者にするって方がよっぽど変だ」

 ついぼそっと言い返してしまった。


「なんだと?」

「私のことをお子ちゃまと言ったのはハイルでしょ! 船の中で言ったじゃん!

 お子ちゃまって! 

 私がお子ちゃまなのに、治癒力目当てで婚約者とか言い出すから、それは変だろ」


 モイラが呆れて言った。

「本当にこの子が聖女様なのですか? 何かの間違いでは? こんな令嬢はいませんよ。

 偽者の野良猫でもつかまされたんでは?」


 モイラ、野良猫って言葉、何気に好きなの?

 そうだそうだ! 

 偽者ってことで、解放しろ!


 明日になればウォロも港に着くはず。

 半日くらいならひとりでも何とか過ごせるかな。

 そんなことを思ってしまい、注意力が薄れていた。


 気がついたら、ハイルが、すごく怒った顔をしたハイルが横まで来てて、掴みかかってくるところだった。


 椅子からずり落ちるようにテーブルの下に素早く逃げた。

 1階だから、ドアか窓から出られれば外に逃げられる!

 ちょうどデザートが運ばれてくるタイミングだったみたいで食堂のドアが開いた!

 私はドアに向かって移動する。

 サナが立ち塞がった。

 やっぱりこの人、できる! 

 入ってきたワゴンがすぐに止まれず、サナが少し横に避けた瞬間、入ってきたワゴンに手をついて、両足を揃えて上を飛び越え廊下に出る。

 サナが慌てて追おうとするがワゴンにぶつかりそうになりもたつく。


 やりぃ!

 スカートを抱え上げ、玄関に向かって全力疾走!

 と見せかけて、曲がり、使用人の棟に向かう。

 こっちの方が手薄なはず!

 

 振り返ると玄関のドアが草の蔓で開かないように縛り付けられてる。

 やっぱり!

  

 ジャンプして転がり使用人の棟へ入る。

 間のドアがすごい勢いで閉まり、蔓が巻き付く。

 こわっ!!


 私は使用人の棟を走り抜き、途中で靴と茶色のマントのような羽織り物とカバンを見つけて手に取り走った。

 思った通り、使用人が使う門も塀も低い。上に尖っている装飾もついていない!

 飛びつき、足を振り上げ乗り越えることができた。

 そのまま、森の中へ走りこむ。

 森の反対側が王都なんだろうけど、窓から見た時、そっちはまったく隠れるところがないので、馬で追われたらアウト。

 とりあえず森に隠れて考えよう。


 履いていたヒール靴をカバンにしまい、掴んできた靴を履いてみる。

 少し大きいけど、カバンにタオルがありそれを裂いて靴の中に敷いたらマシになった。

 とりあえず移動しながら、それを行い、カバンを肩から掛け、マントを羽織った。

 ドレスの淡い水色は森の中では目立つからそれが隠せれば。


 フードもついていたのでそれも被る。


 うーん、離れたから属性魔法しても大丈夫かな?

  

 追手の声が聞こえた。

 やばっ! 

  

 目の前に小さな湖が現れた。

 私は大きな水の球を作り、中に風を送り込んで自分が入れる空間を作り、その中に入る。

 そしてそのまま、湖の中に転がり落ちた。


 湖の底でフードを被りじっとしている。

 上から湖を覗き込んでも、このマントの色なら土の色に見えるだろう。


 水の中なら、追跡もできないだろうし。

 ただ、上の状況がまったくわからん!


『おお、なんだかすごいことになってるの?』

 よかった! マッちゃん! 湖の周りどんな感じ?


『十数人がネモを探しておるな。かわいそうにハイルは必死じゃぞ』

 ちょっと心が痛んだ。

 まあ、少しはやさしくしてくれたからな。

 でも、誘拐はいけないことだし、ウォロを殺すって言ったし、許しちゃいかん。うん。

 なんでマッちゃんはかわいそうなんて言うんだ?


 私がこのまま逃げたら、ウォロ達大丈夫かな? 

 入国の時に捕まったりしない?

 やっちまった後でいろいろ心配なことが出てくる。

 なんかいつもこのパターンだな私。

 

 しばらくじっとしている。

『一度引き上げて、道を封鎖する作戦に切り替えたようじゃぞ』

 あー、そうか……。

 どうするかな……。


『まあ、逃げて正解だとは思うが……。ウォロがまたやきもきしておるぞ。

 危ないことをしてって!』

 んー、でも、そんな感じになっちゃったんだもん。


 もう上がっても平気そう?

『もう少し待て、サナといったか? メイドが湖を気にしている』


 しばらくすると『みんな道の方へ行ったぞ』と言われて、水魔法で水流を作りだし、水の球を水面に浮上させ、風で身体を浮かせるタイミングで水球を割り、中から岸に飛び移った。

 

 うまくいった!

 濡れずに済んだ!


 しかし、道は全部封鎖されてるだろうし。

 行くなら、森に沿って隠れながら行くしかないかな……。


 私は湖から流れている小川を見つけ、それに沿って下ってみることにした。


 そうなんだよなあ。私、火魔法使えないから、夜どうしよう。

 木の上で過ごそうかな。

 

 どこか街まで行ければ、靴とか売れるんだけどな。

 まあ、封鎖されてるかもだけど……。


 歩いて行くと、壊れている水車小屋を見つけた。

 壊れて放置されたのか。

 中を覗くと、ずっと使われていないが屋根や壁もまだしっかりしていて、中も動物に荒らされた形跡はなかった。

 ここで、一晩過ごすか。

 中に入り、窓から見える所は避け、上の方に上がり、屋根裏の空間にたどり着く。

 水車のための解放部の近くでこちらからは外の様子も少し見られるから良さそう。


 ここなら、外から見えないし、もし、小屋の中に人が入って来てもすぐには見つからないだろう。

 私は座りこんで、カバンの中を落ち着いて確認した。


 さっき靴に詰めたタオルのほかに、コップと鋏とエプロンと紙に包んだパンが出てきた。

 マントのポケットには大判のハンカチ。

 コップを水車に掛かる水流で洗い、水を溜めて、においを嗅いでみる。

 うん、飲めそうかな?

 でもお腹壊したら大変だしな……。

 水魔法で飲めるきれいな水をコップに作り出して、それを飲んだ。


 ふう。

 さて、パンはどうかな?

 ちょっと硬いけど、古くはなさそう。 

 今日のお昼の残りという感じだ。

 少しずつかじってみる。

 うん、食べられなくはない。

 半分は残しておく。


 外はもう夕方だ。

 私はマントにくるまり壁にもたれた。

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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