112 神聖力=聖魔法?
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなって、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
朝、サナに起こされた。
昨夜久しぶりに光魔法をたくさん使ったのでやはり疲れていたらしい。
いつもなら自分で目が覚めるのに……。ちょっとくやしい。
そのまま部屋で朝食を食べた。
このサナってメイドは若いのにすごい有能だ。
まず、絶対、私から離れない。
何か取りに行く、伝えに行くという必要があっても自分からは動かない。
私なら自分で行っちゃった方が早いと行っちゃうと思う。
そして動きも落ち着いている。
もしかしたら、剣術とかもすごく強いのかも。
その後、モイラが来て別の部屋に連れて行かれる。
私はさりげなく周囲を観察して、屋敷の中の位置とか、別棟とどの廊下が繋がっているのかとか確認したかったんだけど……。
サナが私がじっと見る方向にすっと回り込んで立つんだよね。
おかげで結局、よくわからなかった。
とりあえず自分の部屋は3階(窓から飛び降りて逃げられない高さ)、しかも屋敷のちょうど真ん中あたりの部屋で、左右から見やすい。
ドアにしても窓にしても常に人も目がある感じ……。
ただ私の部屋の窓からは森が見えるのだけれど、連れて行かれた2階の部屋の窓からは遠目だけど城のような建物と時計塔らしい高い塔が見えた。
船から見たのはこの時計塔か?
ということはここは王都のそば?
郊外にある屋敷とか別荘ってとこかな?
2階の広めの部屋には服がずらりと並べられていて、洋品店がそのまま来たみたいになってた。
ハイルが『店の者を呼ぶ』って言ってたな。それか!
部屋着からシンプルな白のロングドレスが何着もあり、そこからお店の人が1着選び出したものを着せられる。
サイズや肌の色や髪色と合う白色を見ているみたい。
次に微妙に違う白で、襟の形が違うものに着替えさせられた。
勧めてきた女性に頷かれる。
「この白が良いですね。それから襟ぐりはこの形が骨格的に似合います。本当に美しい首とデコルテをされてますね」
褒められたのか? 営業の言葉?
モイラが普段に着る服とドレスをと注文していたので「シャツとズボンも欲しい!」とお願いする。
すっごい怖い表情で見られて、びくっとしたが、ハイルにいいって言われてるし!! と思い、もう一度言った。
「剣の練習の時に着るシャツとズボンが欲しいです!」
サナがモイラに何か言ってくれている。
ため息をついたモイラ。
「御主人様と約束をされているなら、仕方がないですね……」
サナ、ハイルがいいと言ってくれたこと伝えてくれたんだ!
後でお礼言わなきゃ!
とりあえずすぐに着られる仕立て済みのシンプルなドレスを3枚、下着を3組、シャツとズボンを2枚ずつ(ズボンと言っても普通のズボンより幅広でワイドパンツみたいなちょっとおしゃれなもの)購入することを決めた。
私がじゃなくて、モイラがだけどね。
後、ドレスを2枚注文してたみたい。
今度デザイン画をお持ちしますと言われてたけど、着る機会はないだろうと思うので……。
もったいないけど、いらんわとは言えんし。
白いサンプルドレスから、購入したドレスの1枚に着替えて部屋に戻った。
部屋のクローゼットに今買った服や下着がしまわれるのを見てた。
いい天気だから外に行きたいな。庭歩けないかな。
屋敷の周囲も見られるかもだし。
サナに聞いてみるが「今はダメです!」と断られる。
あ、ズボンのお礼言わなきゃ!
「サナ、さっきのズボンとシャツの件、ありがとう!」
「いえ、御主人様の意思をお伝えしただけです」と冷静に返事された。
『御主人様』って言うんだよね。モイラもサナも。
まあ、私にも銀髪の時の名前を知られないようにという配慮、なんだろう。
窓を開けて外の空気をたくさん感じながら本を読むことにする。
サナがその様子を見て、部屋のカギを閉め(いつも私からは見えないように閉めるので、たぶん私には開けられないように細工してんだろう)、部屋の中のドアを使い隣の部屋に引っ込んだ。
3冊の本の表紙を見てから、聖女についての本を手に取った。
ふむ。この国では精霊が神聖なものとして崇められているわけね。
神聖ホウエン王国の神聖は精霊の意味なんだ。
で、その精霊に認められ契約を交わした者が精霊から力を借りて『神聖力』を使えるようになる、それがウォルフライト王国やミーア帝国で言うところの『聖魔法』なんだ。
契約により力を借りているから魔法ではないというわけか……。
やー、わかるけど、長年学んできた定義というか概念があるので、わかるけど置き換えて考えるのがすぐにはできない。
契約した人の中でも強い神聖力を持つ女性が聖女として国と王を支えてきたのだという。
私は契約なんてしてないんだけどな。
転生する時にデルフィニウム様に、聖魔法使えるようにしておくよ!! という感じだったはず。
たくさん短期間に使っていたら、少し感じ方が変わって、光や闇に意思や個性があるのがわかるようになったけれど、それが精霊ってことなのか?
うーん、よくわからないな……。
神聖力には光、闇、治癒、草、大地、清浄などいろいろな力があるのだそう。
草……。王城でランスを拘束した草の蔓……。あれ、ハイルの神聖力なのか。
だから、私の闇魔法、闇神聖力? に気がついたのかも。
精霊って神のことなのか?
それともそれぞれに何か特定の精霊がいるの?
まずそこからわからない。私が契約してる精霊?
神殿に行くといろいろわかるのかな?
4属性魔法はそのまま魔法と呼んでいい。でも、ウォルフライト王国よりミーアに近い感じかな。
技能とか技術とかそういう扱い。
そうか、国によって魔法の定義や感覚がこんなに違うんだ。
じゃあ、私の属性魔法もそんなに脅威のようには感じてないのか?
抑制しようとはしない?
本当に確かめずに魔道具の指輪をショートさせてしまい、後悔しかない。
でも、船では魔法の攻撃をしないように言ってたし……。
あー、何をどうしたらいいんだ?
その時、マッちゃんの声が聞こえた。
『明日の朝にはホウエン王国へ到着するぞ!
ネモのいる屋敷から見えた時計塔の角度は覚えているので、入港する時、確認する。
それでネモのいる方角がわかるかもしれん。
アルテ号のこともわかった。
ハイレディンは商会の名前だ。
ホウエン王国、プーラン王国、ウォルフライト王国と3つの国に拠点を持っていて、ミーア帝国にも支部があるらしい』
そんなに手広くやっているんだ。情報網のことがわかる気がする。
『総帥は2年程前に代替わりし、今は浅黒い肌に黒髪の若い男だそうだ』
それ、ハイルだね!
じゃあ銀髪のハイルは……。
貴族だってアルテ号の船乗りが言ってたよな。
ホウエン王国の貴族っていうのが考えられるか。
『そうだなたぶん。貴族の時は銀髪。商会の時は黒髪なんだろう。
魔道具で変えることもできるしな』
そんな魔道具があるの?
『正規品ではないな。闇社会の物だろう』
そうだ、年齢だけはちゃんとわかったんだ!
『19歳の銀髪の貴族だな。そやつを見つけて追って行けばネモのいる所も推測できそうだな』
うん、待ってる。
今、この国の聖女についての本を読んでいてさ。
私、精霊と契約なんてしてないけど?
『それな。生まれる時に自然に契約してる。つまり、運命というか神の采配というか。
よっぽど力が強くないと精霊の姿は見られないそうだ』
古代でもそうだったんだ。
まだわからないことだらけだけど、まあ、少しずつ理解して行こう。
その時、部屋の間のドアがノックされサナが入ってきて、部屋のドアへ直行する。
部屋のドアが開けられハイルが入ってきた。
鍵が掛かっているから、サナの方の部屋に知らせてっていうこと?
ドアガチャガチャされてないけど、どう判断するんだろう?
ふと頭に『寝ています。起こさないで!』というホテルのドアノブにかける札が浮かんで、まさかね! と思った。
でも、案外、そういうシンプルな方法なのかも。
ノートとペン、木剣を持って来てくれた。
お礼を伝えながら受け取る。
今日の服のこともお礼を言った。
「庭で剣の練習してもいいですか?」
聞けるときに聞かないと!!
「庭はダメだ。室内に練習場があるから。そちらにサナに連れてってもらえ」
室内か。庭に出るのやけに警戒されるな。
「退屈なのか?」
「まあ、部屋からあまり出られないし……」
「屋敷の中なら自由にしていいと言ったが?」
「何があるかわからないし」
「では、案内しよう」
ハイルが立ち上がり左手を差し出す。
私は立ち上がり、手を握るのは躊躇して、左腕につかまった。
3階は私とサナの部屋、隣にもう一部屋客間があるそう。
向かいの部屋はハイルの部屋だそう。
そんなに近くにいたんだ!
神聖力持ちなら、こちらも使う時、力が広範囲に広がらないよう気をつけた方がいいな……。
2階には広めの部屋と客間がいくつか。
それに図書室があった。すごい!
私が背の高い本棚を見上げていると「ここはホウエン以外の国の本もたくさん揃えてあるから。
そう言えば、ホウエンの文字は読めるか?」と聞かれた。
今まで私に渡してくれてた本はウォルフライト王国の文字の本だったので、ホウエンの文字の意味がよくわからず首を傾げた。
1冊の本を選ぶと広げて見せてくれる。
ウォルフライトの文字に似ているけど、ちょっと古代文字入ってない?
「大丈夫。なんとなくわかる」
口語はウォルフライト王国やミーアと同じ。
ちょっと言葉使いが違うとかそれぐらいなので違和感はない。
もしかしたら、神殿とかに行くともう少し古い言葉や言い回しを使うのかも。
ミーアもそんな感じだったもんな。
図書室の窓は……、鉄格子かよ!!
私ががっかりした表情をしたのを見たサナがくすっと笑った。
ハイルは気がつかなかったみたい。良かった……。いや、サナに見られたら良くないのか?
1階は厨房や温泉や広い食堂、剣の練習場(というわけでなく、いろいろな多目的に使う広間だそう)などがあった。
連絡通路みたいなので繋がっている別棟に使用人の部屋があるのだそう。
屋敷の中は歩き回っていいんだよな。
他の使用人なら、ハイルの貴族の時の名前ポロッと言うかもしれないし……。
読んで下さりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。