111 ここはどこだ?
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
お風呂がすっごく広くて「温泉みたい!!」と叫ぶ。
「よくおわかりですね。温泉を利用しています」とメイドが教えてくれた。
あー、広いお風呂、最高!!
石鹸もシャンプーもとてもいい香りの物が用意されていて、すごい!
大きな湯船も極楽だー! 気持ちがいい!!
気分が良くなって風呂から出ると、用意されていたのは白いラフなズボンの上に長めなチェニックを合わせたような……、どこかの民族衣装で見たことあるようなものなんだけど、とっても着ていて楽だった。
これがホウエン王国の部屋着らしい。
髪もゆるく結い上げてくれ、すっごく楽~!
「この部屋でお過ごし下さい」と連れて行かれた部屋はすっごい豪華でびっくりした。
こんな大きな天蓋付きのベッドは初めて見た。
めっちゃお姫様な部屋じゃない?!
メイドが冷たいお茶を持って来てくれる。
何これ、本当にすごいんだけど……。
部屋にあの黒服のモイラさんが来てくれて、自己紹介してくれた。
この屋敷での私のことはすべて任されていることと、モイラとお呼び下さい、とのこと。
モイラはこの屋敷のメイド長。
ここは神聖ホウエン王国内のあるお屋敷。
それしか教えてくれなかった。
王都の中なのか、それとも違う街なのか?
当主の名前を聞いたけれど、教えられないと言われた。
さっきの銀髪のハイルが当主なのかとも聞いたけど、教えられないと言われる。
実業家のハイレディンの屋敷ってわけでもないのかな?
自分のいる屋敷がわからないと連絡できない……。
私の名前を聞かれたのでネモフィラと答えた。
ネモフィラの名前がどこかからでも漏れれば、ウォルフライト王国の誰かが気がついてくれるかもしれない。
ネモフィラ様と呼びますと言われた。
ハイルと会って話せるか聞いたところ、後で会えると言われる。
この屋敷内なら自由に過ごしていいが、常にメイドを連れて歩くことと言われ、担当のメイドを紹介される。
部屋に案内してくれたメイドだった。
サナという名前で船でのハイルに似た浅黒い肌に黒い瞳、茶色の髪の女の子という感じ。
年齢は私よりふたつ上だった。小柄なので同い年ぐらいな感じに思える。
そう言えばハイルは何歳なんだろう?
ミーシカ王子が22歳と聞いたから、そのまま22歳くらいと思っていたが、本当は違うのかも?!
サナに聞くとハイレディンは19歳だと教えてくれた。
思っていたより若いのか?!
確かにそう言われると、クラウス先生とかより、ランスやアポロを思い出させるようなちょっと子どもっぽいところもあった気がする……。
モイラと入れ違いに銀髪のハイルが入ってきた。
「ハイルだよね?」
「なんでわかるかな? 聖女の力?」
口調が船でのハイルでちょっとうれしくなる。
「ミーア帝国の人の感じ方なの。その人の『気』を感じるんだよね。だから、姿が少し変わっても、演じたりしていても、なんとなくわかるんだ。
黒髪の時も銀髪の時もハイルって呼んでいいの?」
少し考えこまれた。
「まあ、屋敷の中だけだし、ハイルでいいよ」
ということは、銀髪の時は本当は違う名前を名乗っているんだな。
「どっちが本当の姿なの?」
「さあ、どっちの方がいい?」
「どっちでもいいけど……。あんまり姿は気にしないし」
「そうなの? 婚約者は黒髪だったよな」
「そうだけど、別に黒髪が好きとか、そういうことはない。
だいたい、人と仲良くなる時も、男とか女とかにもこだわらないから、いつもウォロに注意される……。油断するなって」
「へー、面白いな。あ、これ約束してたもの」
「約束?」
左手を掴まれ、引っ込めようとしたら強引に薬指に指輪を嵌められた。
大きな透明な聖石が付いている。
「指輪してたのは右手なんだけど!」
「新しいものを買ってやるって約束したろ。婚約指輪だから左手だ」
「は?!」
慌てて抜こうとするが、抜けない?!
「何これ? 抜けないけど! 魔道具?」
「婚約の指輪だから。今からネモは俺の婚約者だ」
「私はウォロの婚約者だよ!!」
うー、後で光魔法でショートさせて壊してやる……。
「そういえば、聖女なのに結婚していいの?」
前世の宗教観だと聖女に結婚のイメージはない。
「結婚によって精霊との契約がなくなるわけじゃないから。
今、ウォルフライト王国からネモを追ってきている奴らがネモを探しだすのをあきらめたら、神殿に連れて行って、正式にこの国の聖女にするから」
「依頼主って神殿?」
「ああ、神殿と国王って言ってもいいかもな。
俺はその仕事を任され、請け負っただけだけど……。
ウォロだっけ? ネモを追ってきてくれたおかげで、神殿と王城にはしばらく近寄れなくなって……。
俺の手元にいることになったってわけ。
しばらくかかるだろうから、その間に恋に落ちて婚約したってことにすればおかしくないよな」
「いや、全然おかしいって!!
私には婚約者のウォロがいるんだから!!」
「……あんまりうるさいこと言うと、そのウォロって奴、殺すけど。
いなくなればいいんでしょ? そいつが」
ハイルが笑顔で言う。笑顔なのに冷たい感情がこちらに押し寄せてくる。
これは本気だ……。
私は黙った。
「わかったみたいだね。いい子だ。
サナ、頼んだよ。俺の大事な婚約者だから」
「はい、かしこまりました」
サナはハイルのことをよく知っているみたいだ。
後数日でウォロ達の船がこの国に到着するはず。
マッちゃんに頼んで話し合わないと。
「今日は疲れていると思うから、ここでのんびり夕食を食べるといい」
ハイルが席を立った。
入れ違いに夕食の料理を載せたワゴンを押したメイドが入ってきて、食事の仕度をしてくれた。
とりあえず食べて、ひとりになったらウォロに連絡! そして指輪ショートさせよう!
夜、寝る仕度をしているとハイルが部屋に様子を見に来た。
何冊か本を持って来てくれる。
詩集に、精霊、聖女について書かれた本だった。
なかなか部屋を出て行かない。早く出て行って欲しい。
「後、何か欲しいものはないか?」
「じゃあ、ノートとペンを。それから木剣が欲しいです。長剣で少し細身の物を」
「木剣でいいのか?」
「はい、剣の練習するので……。本物を希望してもいいの?」
「それは却下だな。木剣なら許そう。剣の練習ね、なるほど」
「後、練習する時の動きやすい服。シャツとズボンでいいんだけど」
「服は、明日、店の者を屋敷に呼ぶ予定だ。その時に言えばいい」
「今はそれくらいです。ではおやすみなさい」
もう寝たいという意味をこめて寝る挨拶をする。
「ウォロという奴とはどこまで……。まあいいや、まだ時間はあるし。おやすみ」
出て行ってくれた。
サナが内側から部屋の鍵をかけ、明かりを消してくれる。
枕元に小さな明かりをひとつ残してもらうようにお願いする。
サナは部屋の中のドアで続き間になっている隣の部屋にいるそう。何かあれば呼んでくれと言われる。
私はしばらくベッドに横になり、静かにしていた。
周囲の音が少しずつ少なくなる。
そろそろいいかな?
私は左手の指輪を観察する。
うーん、今までの魔道具の魔石より大きな聖石だな。
私ひとりの力でショートさせられるかな?
『婚約指輪って言ってたな』
マッちゃん! ひとりでショートさせられるかな?
『今のネモならできると思うぞ。光魔法ならいけるだろう。
思念化して大量に流し込めると早いと思う』
よーし、やってみる!
私は光魔法の思念化を行う。
光のエネルギーだけ取り出してまとめるみたいな作業になる。
前はなんとなくふわっとした光のイメージでやっていたのだが……。
今は動き回る光の点々達からエネルギーを分けてもらい、練って大きな塊にしていくような、強いイメージができた。
ある程度大きい塊になると、それを聖石に入れていく。
聖石が明るく輝き、急に白く濁った。
『うむ、できたな』
これでショートできたんだ!
指輪は無事に外せた! やったー!!
『では聖石の濁りを取るぞ。まだ光魔法は使えるか?』
うん、大丈夫!
『石が透明になるのをイメージしてゆっくりと光魔法の光で石を包み込むんだ』
私は外した指輪を持ち、片方の手の指で聖石に触れた。
光魔法の点々達がその周囲を飛び回る。
祈るようにして指輪の聖石が透明になるのを願った。
濁っていた聖石がどんどん澄んでいく。
また右手の薬指に嵌め、抜いてみる。
大丈夫だ。ただの指輪になったみたい。
壊したことがばれないようにまた嵌めておく。
その時、もしかして他の付加価値があったのでは? と思い至った。
『考えられるとしたら、4属性魔法の抑制かの?』
うーん、それもありそうだよね……。
小さな魔法で試してみてから、ショートさせれば良かった……。
早く指輪を抜けるようにしたくて、焦っちゃったな。
いざという時まで、属性魔法は使わないようにしよう……。
そうだマッちゃん。ハイルがウォロを殺すって私を脅かすんだ……。
気をつけるようにウォロに伝えて……。
『ウォロ、ハイルがネモに対してウォロを殺すと脅かしてくるそうじゃ。
気をつけるようにと』
うんうん、本当に気をつけて。
『ネモもそんな脅かしに屈せず、嫌なことはしなくていいからな! と言っておるぞ』
うん、わかった……。おやすみなさい。
『おやすみ、ネモ』
光魔法を大量に使ったからか、疲れが急に来た。
私はそのまま、ぐっすり眠りこんでしまった。
読んで下さりありがとうございます。
少し書き進められたので、午後投稿できました!
これからもよろしくお願いします。




