106 夏休みの続き(前)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「ミカは家に一度帰らなくてもいいの?」
大使館についてほっとしてから聞いてみる。
「どっちでも……」
「そうか、じゃあ、今日はこのまま私達と大使館で過ごそうか!
明日、王城に行ってからまた考えよう!」
ミカに携帯ペンのお土産から好きな物を選んでもらう。
私とウォロも選んだ。
残りは9個か。
夏休み後11日間もある!
思ってたより早く帰ってこれたから、勉強や魔法の練習も始めないと……。
孤児院の方も気になるな、明日セレナとライトに話を聞くのが楽しみだ!
次の日の朝、たぶん何やかや練習するんだろうなと思ったのでシャツとズボンを持って行くことにする。
また、王城の離宮で合宿みたいなこと言われるかもなあと思いつつ、まあ言われてから考えることにする。そう言えば、合同で誕生会しようって話してたよね。それも夏休み中にできたらいいな。
お土産を多めに持って、王城に向かうと、すぐに離宮に通された。
アンドレアス達にエドワード達。
もう剣の練習してるし、ランスとアリスも少し離れた所で魔法の練習をしていた。
さっそく、ミカが剣の練習の方に参加していた。
私とウォロとオードリーは魔法の方に参加し、魔法の展開時間を短縮する工夫について話し合った。
最初から大物ボンッ! よりも、準備しといてそれを繋ぐ方が実は早いのかもしれない説があり、タイムアタックして比較したりした。
昼食をご馳走になる頃、ライトとセレナが来た。
従者とメイドが大荷物持ってますけど……。
「えっ、今日から王城で勉強合宿でしょ?!」
ふたりに言われて笑ってしまう。
やっぱやるんだエドワード……。
まあ、5年生ズと過ごせるのも最後だしね。
はっ、ウォロにまた変なこと聞くんじゃないぞ! 言わないように言っとかなくちゃ!!
孤児院の方はと聞くと、建物は直り、7月末にアンドレアス達と自主的な形になってしまったが、勉強会をしてきてくれたそう。
8月末にまたみんなで行けたらいいねと話していたと。
「じゃあ、絵本を元にしたお芝居しよう」
ランスが言い出し、オードリーが企画演出を買って出た。
「今夜から練習しよう!」とランスが言うのでオードリーと顔を見合わせた。
「ごめん、今日は何も用意して来てないから大使館に帰るわ。明日、泊りの用意してまた来る」
「なんだ、予想ついてただろうが!」
エドワードが急に話に入ってきたのでびっくりする。
「そんなの言われなきゃわかんないよ」
私が言い返すとミカを見て言った。
「ミカとウォロはそんなに仕度とかいらないだろ?! 今日からここに泊れ!」
「えっ? いいの?」
あれ、ミカ、けっこううれしそう。
ウォロはちょっと渋そうな顔をしている……。
その表情を見て私とオードリーは下を向いて笑ってしまった。
結局、私とオードリーは今日は帰り、仕度をして明日また来ることになった。
ウォロとミカの荷物や勉強道具も頼まれる。
残ってくれていた5人(ライト、セレナ、アリス、アンドレアス、アポロ)にお土産を渡し、エドワードに陛下と王妃様にと携帯ペンとお茶の葉を渡しておいてもらうことにする。
午後勉強してから、私とオードリーは大使館に帰った。
それから4人分の荷物をまとめた。
時間があるので、私は制服のスラックスを作りに行くことにした。
オードリーとシーラも付き合ってくれ、たまには外食してみようと、有名だという王都のレストランに行くことにした。
あ、ここ、エドワードとランチ食べたとこだ……。
3人だけだったので個室は予約せず、席だけの予約にしたのだが……、それが良くなかった……。
若い女の子がふたりとメイドひとり。
注目を浴びてしまったみたいで、数人から声をかけられた。
その中のひとりが食事を終えて出ようとした時を狙って待ち伏せしていたらしく、この後お茶でもどうかとしつこく誘われた。
「今、食事を終えたばかりで、お茶は飲みたくありません。失礼します」
私がとうとう怒りながらそう言うと、相手もカッとしたようで、私ではなくシーラを蹴ろうとした。私はとっさにシーラを抱き寄せ守った。
なんて奴!!
睨み合っていると「ネモじゃないか?」と声をかけられる。
振り向くとライトのおじいちゃんだった。
「ミュラー伯爵! お久しぶりです!」
「どうした?」
「あの、この人が……」と言いかけると、相手は逃げた。
「ありがとうございます。助かりました」
私とオードリーはミュラー伯爵にお礼を言った。
「いやいや、かわいい娘さんだけで食事をしていたら、誘わない方が失礼かもしれんしな」
いや、そんなことはない。
「そういえばミーア帝国に行っていたんだってな。ライトとセレナに聞いたよ」
「はい、一昨日帰って来て、今日からみんなは王城で合宿してます。
私とオードリーは仕度が間に合わなかったので明日から参加の予定で、たまには外で食事をと思ったのですが……」
「そうか、ウォロがいないと大変だな。馬車まで送ろう。今度ぜひウォロと一緒に遊びに来ておくれ」
「はい、ありがとうございます」
ミュラー伯爵の従者が私達の馬車に乗るまで付き添ってくれた。
「ありがとうございます! 伯爵によろしくお伝えください!」
馬車に乗りこみ、3人でため息をつく。
「良かったね、知っている人に会えて!」とオードリーが言った。
「そうだね。女の子だけで食事をしているだけでこんな目に合うなんて、思わなかったね。
シーラ、大丈夫だった? 怖い思いをさせてごめんね」
「いえ、ネモ様に守って頂いて……、ときめきました!」
「えっ?」
「ネモ様素敵です! 皇子様みたいでした!」
「それは……ウォロみたいな?」
ふたりが首を傾げ合って、笑い出す。
「いえ、どちらかというとダイゴ様っぽいかなと」
シーラの言葉にオードリーが大きく頷く。
「そうよね、ウォロよりダイゴ様の方がお話に出てくる皇子様っぽいわよね!」
まあ、そういえばそうかな。
でも私はウォロが一番好きだけどな。
「あ、ネモ、ウォロのこと考えてたでしょ!」
オードリーに言われて慌てる。
「えっ、だって、ウォロのこと話してたでしょ! 当然だよ!」
次の日、荷物を持ち、しばらく王城の離宮に泊ることを大使に伝えてから王城に行く。
今日はみんな魔法の練習にしたそう。
うん、魔法対戦もあるしね。
練習していると、陛下がマリアと男性を4人連れて見学に来た。
オードリーがはっとして私を突く。
「なに?」
「あれ、昨日の!!」
見ると声をかけてきた男がいる。陛下と話している男性の従者らしい。
「知らんぷりするか?」と私が言うと「そうしよう!」とオードリーも頷いた。
エドワードとアンドレアス、アリスが呼ばれて紹介されている。
私とオードリーはウォロの後ろに隠れた。
「ネモ?」
怪訝そうなウォロ。
ランスが「どうした?」と覗き込んでくる。
オードリーが言った。
「昨日、ネモと食事に行ったら、しつこくナンパされて……、それがあいつなの!」
いや、言い方?!
しかも、ウォロに言っちゃダメでしょ?!
「どいつ?」
ランスが反応する。
「あの、後ろの従者みたいな人」
オードリーの言葉にウォロが言った。
「従者が声をかけてきたということは、命じたのはあいつだろ?!」
陛下と話している男性を睨む。
いや、怖いから! 違うかもしれないじゃん!!
私達がわたわたしているのに気がついた陛下がこちらに来ようとする。
わー、来なくていいから!!
「エドワードの学友でミーア帝国のウォロ皇子だ。
ウォロ、こちらはプーラン王国のミーシカ王子だ」
陛下が紹介してくれたけど、プーラン王国は北方の大きな国だ。
ちょうどミーアとウォルフライト王国の北の上の方みたいな位置の国。
ウォロが後ろにいた私の肩を抱いて押し出し、横に並ぶようにする。
ミーシカ王子と従者らしい男が表情を変える。
ミーシカ王子はうれしそうな顔になり、従者はゲッ!というような顔に……。
「あなたは! 昨日お見掛けしました! またお会いできるとは!
ミーア帝国の関係者……なのですか?」
「自分の婚約者、ネモフィラです。昨夜、そちらの男性にしつこく声をかけられ困ったそうです」
ウォロが従者を見る。
ミーシカ王子が困ったような表情で従者を見て言った。
「それは失礼しました。私が彼女達と知り合いになりたいと思い、声をかけてもらったのです。
不快な思いをさせていたなら、申し訳ない」
「はい、断っても断っても聞いてくれず、しまいにはこちらのメイドを蹴ろうとしたので、とても不快でした」
私ははっきり言った。
しっかり王子に怒ってもらいな!
従者が恨めしそうな顔でこちらを見ている。
「それは大変な失礼を……。もうひとりの女性とメイドの方も……、ああ、あなた方でしたね。申し訳ありませんでした」
ミーシカ王子がこちらに丁寧に頭を下げて謝ってくれる。
従者もそれを見て頭を下げた。
「シーラ、もう忘れられる?」
「はい、ネモ様、ありがとうございます」
シーラの言葉を聞いてから言った。
「謝罪ありがとうございます。こちらももう忘れますので。
女性を蹴ったりしないようにこれからは気をつけて下さい」
陛下とランスが面白そうな表情をしている。
もう本当にこのふたりは!!
「こちらの女性を紹介していただけますか?」
ミーシカ王子がオードリーを見る。
「ミーア帝国第2皇子の婚約者オードリー様です。ミーアの公爵令嬢です」
私が紹介した。
「こちらもミーアの皇子の婚約者……、するとあなたもミーアの貴族ですか?」
「いえ、私は……」
あれ、なんか必要以上に情報を聞き出そうとしてないか?
私が黙ると陛下が言った。
「彼女は我が国の辺境伯爵令嬢だよ。彼女達もエドワードの大切な学友だ」
「そうですか……、ウォルフライト王国の辺境伯爵令嬢……」
背筋がぞわっとした。
読んで下さりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。