105 やっと帰れる!
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
マリヤム宮に戻ると、マイベル達も遊びに来ていて魔法についての話を夢中になってしていた。
結局、マイベルの属性は火と何だったんだ?
話を聞いていると火と水だったことがわかる。
セレナと一緒か。あー、早くわかって練習してれば、火事の時もう少し何とかできたかもしれないな……。
「カノンは火と土だよ! ウォロ兄さんと一緒!」
カノンが教えてくれる。
「そうなんだ! じゃあウォロに教えてもらえるね!」
「うん! ネモとランスとは違うんだよね……」
「そうだね。でも、違う人と仲良くするのも大切だよ。
今日の練習見たでしょ。練習する時に防御壁も張れるし、もし一緒に戦ったら?」
「あ、全属性の魔法が使えるね!」
「そう、組み合わせや相性を考えるのもとても大切」
「うん、わかった!」
その日はマリヤム宮でお別れの夕食会ということになった。
明日、帰る準備して、早めに寝て早朝発つことにする。
私達が発った後、エステル様は第5宮殿に移られるとのこと。
第4宮殿と似た造りなのだそう。
私は午前中にまとめていたマイベルにあげようと思って分けておいたものを部屋から取ってきた。
初級の魔法の教科書と読み終えた恋愛小説。
「マイベル使えそうならもらってくれない?」
喜んでくれた。特にこのセレナお勧めの小説はまだミーアには入って来てないそうで「きゃー!」と叫んでた。
「ネモも恋愛小説とか読むの?!」
ランスに覗き込まれて言われる。
いちいちうるさいな!
「セレナにお勧めされてね。面白かったよ」
「これ、三角関係でふたりの男の間で迷う話だろ? わかんの、ネモに?」
「小説は小説でしょ? 主人公は私じゃないし、まあ、悩むのはわかったよ」
「へー、自分はウォロだけってぶった切ってるのになー」
「あのねー、自分がすべての基準じゃないからさ!」
「それは自覚してるんだ」
マイベルがびっくりした顔をしている。
ランスがそれを見て「悪い……」と言って離れて行った。
「ネモはすごいね」とマイベルがぽつりと言う。
「物怖じせず、年上の男の人とも対等に話せるし、魔法も剣術もできるし……」
「いやいや、ランスとは学校でいつもあんな感じで話してるからであって、友達だからだよ。
魔法も剣術も学校で一生懸命やったから、寮の友達、そうだね、特にエドワードがすごい努力家で、寮のみんなを引っ張ってくれたしね。自分だけの力じゃないよ」
「私も魔法学校に入れたら何か変わるかな?」
「魔法学校だけじゃないよ。もういろいろ変わっているんじゃない?
やりたいことやしたいこと、たくさんあるでしょ?」
「うん……」
「応援してるよ! 身体には気をつけてね!」
クラウス先生、マイネ、ハロルド、クラウス先生の従者はもう少しミーアに残ることになった。
カルタロフのこともあり夏休みぎりぎりまで残るそうだ。
ランスは最終学年でもあることから、アンドレアス達と過ごせる最後の夏休みということもあり、私達と帰ることにした。
行きと同じペースで帰れれば、1週間以上夏休みを王都で過ごせるはず!
今夜はのんびりできる最後の夜。
オードリーの提案でウォロと私はシズカ宮に招待された。
4人だけで話す機会がなかったので……ということだ。
確かに、治療院で疲れて倒れてしまった後、気にはなっていたけれどオードリーとゆっくり話せていない……。
シズカ宮について、大きめの客間に通された。
私はシズカ宮の中に入るのはほとんど初めてでキョロキョロしてしまった。
マリヤム宮に似ている感じだけど、だいぶ落ち着いていて静かな感じがする。
オードリーとダイゴがお茶の用意をしたシーラを連れて来てくれた。
シーラに会うのも久しぶり!
明日、お土産を買いに行こうという話をして、シーラは下がった。
オードリーもダイゴも何から話したものか……という感じに見えた。
「なんか話あるの?」
ウォロが言うとダイゴが顔を上げ話し出した。
「皇太子選びのことだけど、僕はウォロがいいと思うんだよね。
でも、そうなると……、オードリーの公爵家がなんかいろいろ言ってきそうだし……」
「自分はダイゴがいいんだけど。陛下にもそう言ったし」
ウォロの言葉にダイゴが笑う。
「ウォロらしいな。
ネモは王国の人だから、辺境伯爵家は何も言ってこないと思うけれど、ミーアではね。
実際、オードリーは今回のことで、公爵家から呼ばれて、僕を皇太子にするために尽くせと言われたらしいよ。いい意味ならいいんだけど、ネモやウォロの悪いところを弱味をという含みもあるから……。
オードリーが落ち込んでしまってね。
そこでもうふたりに打ち明けることにしたんだ」
私はオードリーを見た。
「ごめんね、ネモ。
私、ネモのこともウォロのことも好きだし、私はどちらが皇太子になっても友達でいたいと思うのだけれど、父が……、いろいろ言ってくるし、もしかしたら何かしてくるかもしれない……」
「それはわかるよ。
公爵家にしてみれば、皇太子妃、皇妃を出した家になった方が影響力が増すもんな」
ウォロの言葉にダイゴが頷く。
「うん、すまない。僕達も気をつけるけど、何かあったり気がついたらすぐ教えてくれないか?
オードリーの家のことは気にせずに教えてくれ。それだけちゃんと伝えたくて……」
ダイゴとオードリーがまだ何も起きていないのに申し訳なさそうにしている。
「うん、わかった! オードリーこれからもよろしくね! 私達が仲良くしているのが一番だよね!」
私の言葉にオードリーが目を潤ませる。
「ネモ! ありがとう」
「お礼を言うのはこちらの方だよ。
いつも私とウォロをサポートしてくれてるもんね。
……弱味ならもうたくさん握られてる気がするよ!」
顔を見合わせて笑った。
「ま、この調子なら大丈夫だと思うな。
後はダイゴと自分がどこまで周囲の争いに巻き込まれないか、だな」
ウォロが言うと「うん、気をつけるよ。ありがとう」とダイゴが微笑んだ。
後はもう普通に学校の話や、ミクラとジュンの結婚や赤ちゃんの話、ダイゴの石の話などたくさん話をした。
「明日、お土産をここから買いに行って、戻ってきたらふたりをマリヤム宮に送るから!
じゃあ、おやすみなさい!」
オードリーにそう言われて戸惑う。
「ここ泊まるの?」
広めの客間を見回す。それぞれの寝室は?
オードリーが笑って「隣に寝室がついてるから!」と言った。
いろいろ気をつけろと言ったのはオードリーなのに、ここにウォロと私を放置していくのか?!
まあ、ダイゴとオードリーもまたしばらく離れ離れだし、たくさん話もしたいだろうし……。
「うん、おやすみなさい」
何とか笑顔で挨拶してオードリーとダイゴを送り出した。
◇ ◇ ◇
次の日の朝、朝食を食べ、オードリーとシーラと3人で買い物に出かけた。
馬車の中でオードリーに、私にいろいろ気をつけろと言っておきながら、なんであんな状況でウォロとふたりきりにしたんだと愚痴った。
「ウォロの機嫌良かったけど、ネモは違うの?」
そう聞き返され、昨夜のことを思い出して顔が赤くなる。
「まあ、王都に着いたらふたりで一晩過ごすなんてできなくなるんだから……」
「それはそうだけど……」
いや、ちょうどマリアにも注意されたばかりで、ふたりきりで過ごすのは控えようって話してたところで……。間が本当に悪かったんだよ。
「ねえ、ウォロと何したの?」
「言わない! 聞かないで!」
「そう言われると聞きたくなる」
「じゃあ、オードリーはダイゴとどう過ごしたのよ!」
オードリーも少し赤くなった。
「ほら言えないんじゃん!
お互いにこの話はおしまい!!」
私は大きく息をついて、気持ちを落ち着けた。
ライトに日持ちする調味料や珍しい油(ブドウの種とか米とかの油があった)、セレナとアリスとカトレア先生には花や果物の香りがするお茶にした。自分達にも買った。寮で飲んでもいいよね!
アンドレアスには……、オードリーに相談したらミーアの文房具がいいんじゃないかと言われ、携帯できるペンとインクのセットにした。ミーア風のデザインが素敵だ。
これいいな、色やデザインを変えて少し多めに買っておこう。兄様、アポロ、ギーマ先生、えーとお土産あげたくなる人が他にもいるかもだし、自分でも欲しいかも、ミカにもあげよう。
12個も買ってオードリーに笑われた。
オードリーの希望でミーアの有名なお菓子屋に行き、詰め合わせをいくつか買った。
私もジュンと大使館のみなさんにと思い、買った。
買い忘れがあるといけないので、それぞれ気持ち多めに買ったけれど、大丈夫かな?
シズカ宮に戻り、ウォロと合流してマリヤム宮に戻った。
そのまま荷物の用意をする。
手持ちはそんなに持って来てないけど、もらったドレスとかがある。
マリヤム様が後で大使館に送ってくれるというのでお言葉に甘えてドレスは送ってもらうことにした。
ウォロも古代魔法と魔法陣の本を一緒に送ってもらうことにしていた。
魔法陣……、図書館に読みに行けなかったな……。
まあ、次のお楽しみと思っておこう。
次の日の朝、ミルスマリア伯爵家の屋敷に行き、そこで馬車や装備を確認。
私達は来た時と同じく馬車と馬を併用することにした。
エドワード達もそうするということで、伯爵家に馬を用意してもらっていたのでスムーズに出発することができた。
ダナンに到着するとお父様が迎えてくれた。
お父様が来ているので、兄様が王都に行くことになり、辺境伯爵家の馬車と馬を出して、マリアが兄様と同じ馬車に乗ることになった。
行きで慣れてるからね。
5日間で無事王都に戻ることができ、エドワードとマリア達は王城へ。
私達は一度ミーア大使館に寄って休んでから、明日王城に行くことにした。
ミクラにはお菓子のお土産を渡してジュンの所へ帰ってもらう。
今回はダイゴの方の従者として行動することが多かったけれど、行き帰りはミクラがいてくれて本当に頼りになった。
ライト達も明日から王城に来るというのでみんなに会えるのが楽しみだ!
読んで下さりありがとうございます。
やっと帰ってきた!
話を進めるために、夕方、次の話を投稿する予定です。
これからもどうぞよろしくお願いします。