104 国立学校と光魔法
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
マリヤム宮に帰り、夕食を食べるとすぐ眠くなる。
「ネモ、大丈夫?」
マリアに心配される。光魔法の見え方が変わったことを話したいが、そこまで余裕がなく「うん、眠い」と返事してすぐ自分の部屋に戻り、メグが部屋着に着替えさせてくれた。
ウォロと話すって約束してたのになあ……。
私はベッドに横になるあたりからもう寝ていた。それぐらい疲れていたということなんだろう。
なんとなく目が覚めた。身体の右側が温かい。
右側を向いてみると、やっぱりウォロがいた。
寝てるのかな?
私もまた目を閉じかけた時、左頬を撫でられる感覚がして目を開けた。
「起きた?」
「もう朝?」
「まだ。寝る? 話しできる?」
「うん、まだ眠いけど……、話はできる……」
ウォロが抱きしめてくる。
うん、温かくて寝ちゃいそう……。
「ネモ、起きてる?」
「うん、なんとか」
夜、話すって言ってたんだもんね。
「寝なよ。無理しないで」
ウォロが言ってくれて「うん。約束したのに、ごめんね……」と呟き返したら、もう記憶がない。
目が覚めたのは朝食時間ぎりぎりの時間だった。
メグが起こしに来てくれたのだ。
ウォロはもういなかった。剣の練習に行ったのか?
大きなあくびをしながら起きる。
かなり体力は回復していたけれど、まだ疲労感が少しある。
朝食を食べたら、もう少し休もうかな……。
遅れ気味に食堂に行くともうみんな食べ始めてて「体調大丈夫か?」と心配されてしまう。
「うん、まだちょっと疲れが残っているけど、大丈夫だよ」
席について朝食を食べ始める。
食べ始めるまで食欲があまりなかったけれど、お茶を飲んですっきりしたら食べたい気持ちが出てきた。
しっかり食べないと!
午後からは忙しいし!
ウォロとエドワードを中心に学校で見せる魔法の話をしている。
対戦用の魔道具がないから、デモンストレーションみたいな感じにするそう。
それから剣に魔法をまとわせて魔法の防御壁を斬るということを見せたいのだそう。
2年生はまだ習ってないし、3年のマイネもまだだ。ランスは剣があまり得意ではないし……。
ネモに頼めないか、と言われる。
「うーん、じゃあ、光魔法を誰かの剣にまとわせるよ。それならできそう」
「それでいいなら、俺も魔法を剣に入れるのできるよ」とランスも言った。
「本当はひとりで全部できるところを見せたいんだけどな……」
エドワードが考えながら言った。
「クラウス先生は、できないの?」
私の疑問にみんなはっとする。
「そうだよ、クラウスがいるじゃん!」
ランスがなんで思いつかなかったんだという感じで言った。
大丈夫そうかな?
私はマリアを見た。話には参加しているが、ほぼ聞き役のようだ。
話がまとまり、持って行く物などまとめようとエドワードとティエルノとミカが部屋を出て行く。
私はマリアに「少し相談いい?」と声をかけた。
ウォロがこちらを気にしたので「大丈夫、光魔法のことだから」と伝えると、頷いて、部屋を出た。
「何? 光魔法のこと?」
「うん、ここのところ毎日使っているからか……。
光魔法が、光の点々が、なんていうか、かわいいんだけど。それってよくあること?」
「かわいい?」
マリアが聞き返してくる。
「私が『頑張れ!』って心の中で思うと、ぴょんぴょん跳ねたり、逆に『ココが悪いんだよ!』って知らせてくれるみたいな動きをしたり、張り切って行進するみたいに動いたり、なんかかわいいんだよ。
それに、ウォロと私のでは違うのがわかった。
ウォロのは白っぽい強い光で、私のは黄色っぽい、それに元気に跳ねてる。
そうだマリアのも見せて!」
手を繋いで軽く流してもらう。
青っぽいかな?
青白い感じ。私に近い明るさで、動きが滑るように優雅。
「どう?」
「うん、青白いきれいな光。動きが滑るように優雅な感じ」
「面白いわね! そんな話聞いたの初めてよ!」
「後でクラウス先生にも聞いてみよう。光魔法がこんな風に見えると、闇魔法はどう見えるんだろう?」
自分の部屋に戻り、荷物を少し整理したりとのんびり過ごす。
昼食を食べながら、決まった今日の流れをざっと説明してもらう。
「ネモ、体調はどうだ?」
エドワードが気にかけてくれた。
「うん、もう大丈夫だよ」
「もしクラウス先生に魔法の剣術断られたら、ネモにしてもらうから」
「えー、じゃあ、動ける服の方がいいか……」
あわてて食べて、シャツとズボンに着替えた。
大使にもらった短剣も身につけておくことにする。
一応、着替えとしてワンピースを1枚持って行くことにした。
馬車に乗り込んでしばらく自然が多い方へと走って行く。
車窓の景色が楽しかった。
「やっぱり学校は皇都の中心から少し離れてるんだね。魔法学校と似てるのかな?」
「そうね。人数も多いみたいだし、広い場所が必要だからでしょうね」
マリアが答えてくれる。
学校に着くと、一足先にシズカ宮の馬車が着いていたらしく、ダイゴやオードリーが迎えてくれた。
マイベル達も見学が楽しみとうれしそうにしていた。
エドワードが早速クラウス先生に剣術のことを聞いている。
「できなくはないが……。私もあまり剣術は得意じゃなくてね」
「でも、ランスよりはできるでしょう?」
私が聞くと「ランスよりってなんだよ!」とランスが言い返してきた。
「ごめん。でも、他に言いようがない……」
私が苦笑いしながらそう答えると「うー、なんかむかつく!」とランスが叫んだ。
しょうがないじゃん!!
「じゃあ、ネモ。頼むな。ライトの防御壁を斬って怪我したんだっけ?」
エドワードに話しかけられる。
「うん、風のね。今日は何?」
「光魔法だよな。何でも行けるの?」
「行けるけど、そう大きく切れないと思うよ。やってみるけど。あ、剣! 誰かの借りないと!」
私の言葉を聞いていたランスが貸してくれた。
「俺のなら、細身だから使えるだろ」
「ありがとう。剣持ってるなら、ちゃんと練習すればいいのに……」
「なんか言った?」
「いえいえ、ありがとうございます!」
時間があるので、ランスの剣を振ってみる。
うん、ちょうどいい。
けっこういい剣だよ。
運動場を確認して、魔法の射程や威力を確認する。
みんなもう調整はしっかりできるから大丈夫だけど、一応、防御壁を展開させておくことにした。
エドワードとマリアが音声拡大の魔道具でウォルフライト王国魔法学校の紹介と説明をした。
ウォロが、簡単に王国では4属性が主流で、聖魔法という属性もあり、それはミーアより研究が進んでいることを説明する。
観客のみんな、不思議そうな顔をしている。
そうだよね。魔法でも国が違うと全然違うもんだよね。
エドワードとティエルノが火魔法を打つので、私とランスがアイスファイアの防御壁を張った。
アイスファイアは珍しいのかざわざわした。
ふたりの火魔法の威力もすごい。防御壁があるから安心して強く打てたみたい。
相殺され、運動場に蒸気が発生する。
私はそれを風で散らした。
次にエドワードが風、ティエルノが土で防御壁を展開。
私が水、ランスが風で攻撃した。
お互いを相殺。
土の防御壁を相殺するなんて、ランスの風魔法すごい威力だけどね。
私は無理。
そこで私とティエルノは引っ込み、エドワードの方にオードリーとウォロが加わった。
ミーアには火魔法を持つ人が多いので、いろいろな火魔法のアレンジを見せることにしたのだ。
ランスが防御壁を作り、マリアが説明していく。
聖魔法の紹介で、私とウォロが出た。
闇魔法を体験してみたい人を募ると、勇気のある5人の男子が出てきた。
寝る魔法をかけることを説明して、ウォロがかける。
5人が抵抗するが、30秒ほどで全員寝た。
軽くだったので、私とクラウス先生で光魔法で中和して目覚めさせる。
闇魔法と光魔法は他にもいろいろな技や状態に変化させることができ、魔道具にも利用されることをクラウス先生が説明する。
次に剣術に魔法を追加するというもの。
4属性の魔法でもできるが、今回は光魔法のものを見て頂きますと説明があり、私の前にウォロが炎の防御壁を出した。
炎か……。水掛けたいわ。でも剣で斬らなきゃ。
私は落ち着いて長剣に光魔法をまとわせ、入れ込むことも意識してみた。
剣が金色に光る。
『わー!!』と光達が勇ましく剣の中に流れ込んでいくのが見えて、微笑んでしまった。
よろしく頼むよ! そう念じると、きりりとした表情(あれ、顔があるわけじゃないのにそんな風に感じた)を見せて頷く光達。
なんだかひとりじゃないという安心感がある。
剣を構える。
風魔法で、自分の脚力を上げ、跳びあがり防御壁に切り込む!!
縦に斬って、着地してから横にも斬る。
思っていたより広範囲に相殺でき、熱い思いや怪我をしないですんだ。
剣の中の光達が『やったー!!』という感じで喜んでいる。
ありがとう。
すると、ペコっとお辞儀されたような気がした。
この後、4属性についての質問に答えたり、自分の魔法を見てアドバイスして欲しいという人に練習方法やイメージについて話したりした。
聖魔法も治癒の力について聞かれ、医師の診察や治療と組み合わせるととても効果があることや、魔獣による毒を素早く中和できる効果があることなど話した。
「ネモ様はモーリオン皇子の婚約者ですから、魔法学校を卒業後はミーアで聖魔法を教えられたりするのですか?」と聞かれた。
「まだわかりませんが、そうできたらいいと思います。しっかり学んできますね」
そう返事した。
学校が用意してくれた控室に戻り、お茶とお菓子で労われた。
私はランスに長剣を返した。
「ありがとう、いい剣だね! 使いやすかった。ランスのだからかな?
魔法と馴染みやすくって、光魔法が喜んでた」
「へー、そうなんだ」
ランスがそう言って受け取り、クラウス先生が「どれ?」と手を伸ばして剣を抜いて見た。
「うん、まだ残ってるね。ネモ、光魔法の威力が上がってないか?」
「はい、上がってるというか……。先生、光に意思があるみたいに感じたり、他の人の光魔法の色の違いがわかったりするんですけど……。それは良くあることですか?」
「色?」
「私は黄色で跳ねまわる。マリアは青白くて滑るような動き。ウォロは白くて強い光でゆっくりという感じ。先生のも見てみたいな」
私は手を差し出した。
クラウス先生が手を握り光魔法を流してくれる。
「赤……いうより、オレンジかな? 炎みたいにゆらゆらしてるきれいな光」
私が目を閉じてそう言うと「すごいなネモ!」と言われる。
「それぞれの癖というか個性というか、確かにあるんだけど、それが人にはわからないから魔道具で判別してたんだよ! それができるのは大変珍しいと思う!」
「そうなの? 治療やりすぎたから、変になったのかと思った……。大丈夫そうなら、良かったです!」
陛下とダンテが国立学校長と現れる。
「ウォルフライト王国のみなさん、そして、ミーアのウォロ、ダイゴ、オードリー、マイネ、……ネモ。
どうもありがとう。
魔法の重要性を若者に伝えるとてもいい会だった」
陛下がみんなにお礼を伝えてくれる。
ダンテが私の所に来て「魔法の剣術、すごかった!」と褒めてくれた。
「ダンテは火魔法だよね。属性魔法でもできるから!」
「そうだな、少し魔法も頑張ってみるよ」
その後、陛下の馬車で伯爵と子爵の所に連れてってもらうことにした。
ダンテが代わりにマリヤム宮に戻り、魔法のことをエドワード達に教えてもらうという。
アニーも予後が良く、光達も骨に集まらなくなった。大丈夫そうだね。
もう歩けるよと言うと、恐る恐る立ち上がり、びっくり顔ですたすた歩いた。
「歩けるけど、すぐには無茶しないでね」
私が言うと、母親とアニーはうれしさで抱き合って喜んでいた。
良かった。
次はシャルル。
熱も下がり、咳も出ず、しっかり寝られて食欲も出て来たと言う。
身体に光魔法を流すと、下腹部に集まるが、昨日よりはいいみたい。
「ウォロ、また上からかけて!」
私とウォロで中と外からかけると引っ掛かっていた手ごたえがなくなる。
あ、これ完治したってことかな?
「内臓の炎症もなくなりました!」
私が医師に伝えると、医師はシャルルを診察して頷いた。
夕食をと言われたけれど、陛下が用事があると断ってくれて、馬車にすぐ乗り込んだ。
「ありがとう。この目で治療を見て……。
素晴らしい力だが、やはり広く知られてしまうと利用しようとしたり、医術の方も依存してしまいそうだな。
ウォロの言うように、ルールをしっかり作って守らないと……、聖女と同じことになりかねないな」
読んで下さりありがとうございます。
午後投稿する予定です、
これからもよろしくお願いします。




