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98 聖女について

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 また長い回廊を通って皇宮の中心部に戻り……。

「疲れた?」

 無口になった私の顔を覗き込むようにウォロが言った。


「うん、ちょっとね。のども乾いたし」

「陛下のところに着いたら、まずお茶もらおう。

 確かにミーアにはこういうところがあるよ。

『持てる者は持たざる者を救うべき』自分は好きな言葉ではない」

「どうして? 助けられるなら……。あ、うん、ウォロが言ってた『善意の搾取』ってことだね」

「そう、持てる者がたくさんいるならばいいかもしれないけれど、持てる者に持てない者が群がって搾取した結果がルチアだろう。持てる者は幸せになってはいけないのか? そう思う」


「じゃあ、孤児院のボランティアとかも本当は嫌だったの?」

「あれは、ちゃんと周囲の協力もあったし、ただ搾取されてるという感じでもなかったから。

 ネモにとって自分らしくいられる大切な時間でもあったんだろ?」

「うん、でも、活動が大きくなると、それはそれでいろいろ大変になるけどね」

「そうだな、ささやかな善意からスタートしたはずが、いつも間にか善意を強要されるようになるのは辛いな」


 皇宮の上の階の方まで来た。

 けっこう階段上ったよ。

 ウォロが奥の部屋をノックして開けた。


 促されて先に部屋に入る。

 皇帝陛下がいた。


「ネモ、ウォロ、騎士と親子の命を救ってくれてありがとう」

「ああ、ネモに何か飲ませてやってくれない?!

 魔法、大量に使わせられて、皇宮の中たくさん歩き回らせて……。

 休ませてもくれないし、お茶ひとつも出てこない。

 魔法を使えて人を治せるからと言っても、自分達も人間で疲れるし、のども乾くんだけど」

 ウォロがうんざりしたように言った。


 皇帝陛下が頷くと、侍従がドアの外に出て行き、すぐにメイドが入って来てお茶の用意を始めた。

「どうぞ、休んでくれ」

 ソファーに座り、お茶を飲む。

 のども乾いていたし、美味しかったので瞬く間に飲み干してしまった。

「……これは気づかず悪かった」

 陛下が私の飲みっぷりを見て言った。


「いえ、落ち着きました。本当にのどが渇いていて……」

「悪かった。ダンテも医師もたぶん患者のことばかりで……。

 昨日も神殿でそうだったんだろう。

 神官に言われたよ。ミーア帝国にいる間、ちょっと力をお貸し頂ければいいのですがと。

 ネモ、昨日はエルメスの所で倒れたんだって?」

「倒れたというか、本当に疲れてしまって……。食事もとれないくらい疲れて、ただ寝てしまいました」

「ちょっとではないな……」

 陛下の表情が曇る。


「ネモは本当に人を助けたいと思って持てる以上の力を出してしまう時がある。

 自分はネモが治療の場に出ることは反対だ」

 ウォロが言ってくれた。


「王国では聖魔法はどのように運用されているのだ」

「個人で治療をする人はいない。みんな国に属しているな。

 学校の中では友達や怪我した人にかけたりするけど、それも強要されたりはほとんどない。何かあればまず医者に見せるし、聖魔法持ちが近くにいればその後のフォローを受ける感じかな。

 王国には強い聖魔法持ちが多い。なぜ多いかというとスキルを持つ者を見つけ出して育てているからだ。

 育てているからこそ、医師が診て必要と判断された患者が必要な魔法治療を受けることができているんだと思う。

 そして受け取る人の方も、たまたま聖魔法持ちの人がそばにいて来てくれてラッキーだったと感謝してくれるような……そういう風潮がある。

 来てくれなかったと逆恨みされたり、もっとと求められたりとかそういうことはないよ」

「まず医師の診察を受けて、必要ならば、か……」

「ミーアでもできる? 判断する医師に賄賂が集中する気がするけど。

 家族間の愛情が強いのはいいことなんだけど、うちの家族だけでも! という人が多いよね」

「そうだな。すでにこんなに私のところにも陳情が来ている」

 手紙の束を見せられる。

「ネモのことをどこからか聞いただけの貴族からの陳情だけでこんなにある。神殿にも昨日の治療の話を聞きつけて、訪ねてくる人が増えているそうだ。しかもネモの名前とウォロの婚約者ということまでわかってしまっている。

 マリヤムの所にも連絡が来ているのではないか?」

「母はそういうのは気丈に対応できる人なので大丈夫です」

「そうだったな」

 陛下は微笑んだ。


「さっき、4人をウォロとふたりで治療して思いました。

 ひとりでやるのは無理があります。

 医師や看護師に参加してもらい、聖魔法を持つ者が複数人。休憩を取りながらならできなくはないと思いますが……、そんなにたくさんは……」

 私は言いながらルチアが浴びていた怒号と懇願の喧騒を思い出して身体を震わせた。


「昨日はそんなに恐ろしい目に合ったのか?」

 陛下が心配そうに言った。

「いえ、その、過去の……」

「ネモが言っているのはベリネ王国の時のことだよ」

 ウォロが言葉を足してくれる。


「ベリネ? ミーアに滅ぼされた? 古代の王国?」

「信じられないかもしれないけど、ネモはルチアの記憶を持っている。

 昨日のことがきっかけで、昨夜思い出したそうだ」

 陛下は驚きの表情をして私を見た。


「銀髪で銀目のエヴァンスも見たってさ。

 それで、エヴァンスの剣でルチアが自害したことを話してくれた。伝わってる話と違うけど」

「そうか……。それは本物だな。皇帝になった者にしか伝えられないことだそれは……」

「エヴァンスが聖女はもうミーアには存在させないとしたんだろう。

 聖女は忘れてもらって、きちんと聖魔法のことを周知すればいい。

 聖魔法持ちは保護するなり帝国で教育するなりしてさ」

「そう簡単に言うな。先代から少しずつ進めて、やっと4年前からウォルフライト王国の魔法学校へ留学生を送り出すことができるようになったんだぞ!」


 そうなのだ。皇帝もただ静観しているだけではないのだ……。

「魔法については魔法学校の魔法対戦で上位入賞の実力者が来ているし、こちらの学生に見せることができると思います。

 その時に、魔法の属性や他に聖魔法があり、どんなことができるか実際に見て話を聞いてもらい、若い人達から意識を変えてもらうのはどうでしょう?」

 私の提案に陛下が頷く。

「そうだな。一度、ウォルフライト王国の魔法学校でどんなことを学んでいるのか、わかると、研究者達も評価を変えるかもしれない」

「それぐらいなら、みんなも協力してくれると思う。

 治療については本当に慎重にやらないと逆恨みを買いかねない。

 今、ネモと自分のほかにふたり聖魔法持ちの人がいるけれど、もし1日だけお願いして治療の日を設けても、その後の混乱や問い合わせはひどくなって続くと思う。

 今日みたいに突発的なアクシデントや事故なら、自分達がここにいる間なら協力できるけど、神殿や古代の治療院でネモに聖女のまねごとをさせるのはダメだ。絶対やらせない」


 ウォロが言うと陛下は笑って言った。

「でもマイベルは治療させたんだな」

「それは……」

 ウォロが赤くなって口ごもる。

「そうだ、家族を大切にするミーア、だからな。

 その気持ちはわかるだろう。

 ふむ、この陳情の中から、お前達が治療してもいいと思うものを選ぶのはどうだ?」

 陛下が手紙の束をテーブルにどさっと置いた。


「私達が選ぶ?」

「手紙だけじゃわかんないよ、大げさに書いてきてる人もいるだろうし」

 ウォロが言うと陛下が付け加えるように言った。

「なら、選んだ家に医師に行かせて、正確な症状を確認させよう。

 3人……、いや、5人はどうだ?」


 私達は根負けして、手紙を見始めた。

 

 寝つきが悪く朝すっきり起きれない……。これは医者から早寝早起きを勧めてもらってくれ。

 健康のために痩せたい……。運動してくれ。

 手のひらに鋏で怪我をしてしまい、痛い。手の怪我は痛いよね……。これは保留にしておこう。

 5歳の子どもが急に歩けなくなった……。これは何だろう。保留に。


 保留からさらにウォロと相談してより分けて行くと、ちょうど5通残った。


 これを調査してもらって、医師の診断後に行くか決めることにする。


「聖女じゃないからな。聖魔法持ちのふたりってするんだぞ!」

 ウォロがちょっと怒りながら言った。


「そういえば、魔道具の方はどうなった?」

「あー、もうあっちもこっちも!!  

 魔道具の方、メイリンがランスに魔道具を贈ってきた。

 謎の魔道具職人の物だよ。メイリンに惚れさせる奴。

 分解して効力は失わせた。ランスがそれを身につけて、ふりしてる」

「ダイゴの盗まれたかもしれないのは?」

「メイドの中にブレスレットを失くしたという人がいた。

 たぶん、操って仕事をさせた後、回収したんだろう。

 盗まれてるね」


「そうか、ありがとう ウォロ」

「もうこういうことはダイゴに聞いてくれよ……」

 ウォロがうんざりしたように言う。


「私はお前の方が話しやすいし、話も短くて好きだがね。

 今日はありがとう。もう昼だ。昼食を一緒に食べよう」

 陛下が笑って言った。

読んで下さりありがとうございます。

午後出かけることになり、早いですが投稿することにしました。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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