11 北の山の湖
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
今回は転生物に挑戦中です。
ゆっくりと書き進めていますのでお付き合いいただけるとうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
次の日の朝、手配した馬車に荷物とジュンを乗せ、私とハロルドは馬に乗りダナンの中心部にあるアリステラホテルに向かった。
もちろん、馬に乗るし、街に出るので男の子の格好をしている。
ホテル前の車寄せの所にジョシュア兄様と3人がすでにいるのが見えた。
ジョシュア兄様は辺境伯爵家の馬車を連れてきていて、そこに3人を乗せようとしているみたいだ。
自分は馬を連れている。
「おはようございます!」と声をかけると、ウォロがほっとしたようにこちらを見た。
「ジョシュア兄様、馬車の手配ありがとうございます。
こちらで手配した馬車もあるのでどうするか聞いていい?」
3人に確認すると、ダイゴとミクラはジュンと一緒の馬車でいいと言う。
ウォロは私とふたり乗りだろうし。
でも、乗り心地はジョシュア兄様が用意してくれた馬車の方がいいはず。
「ジョシュア兄様、そっちの馬車に荷物とジュンとダイゴ達を一緒に乗せて下さいますか?」
「ああ、大丈夫だけれど、荷物と4人では窮屈なのでは?」
「ウォロは私と一緒に馬に乗るので大丈夫です!」
「……馬に一緒に?」
「はい、いつも移動の時はそうしてます」
なんかいろいろ言われないうちにさっさと荷物を大きな馬車の方に移動して、ジュンとダイゴとミクラに乗ってもらった。
ジュンの乗ってきた馬車はここまでということでハロルドにお金を払ってもらった。
ウォロが私と一緒に馬に乗ると、ジョシュア兄様が少しあわてて言った。
「いつも……ふたり乗りしていたのか?」
「はい、それが何か問題でも?」
すっとぼけて返事する。
確かに貴族令嬢らしからぬ行為かもしれないが、この格好の時の私は男の子だ。
「いや、わかった」
兄様もこれ以上言うのはあきらめたみたい。
ハロルドに先頭を行ってもらって、ウォロと私の馬が続き、ジョシュア兄様の馬が追いかけてくる。
馬車は馬車のペースで向かってもらって、途中で時間調整すればいい。
かなり郊外まで来たところでハロルドがこちらを振り返って、止まれの合図をしてくる。
馬が立ち止まると「ここで馬車を待ちながら休憩しましょう」と言った。
私達は馬から降り、道の横の茂みの方へ移動し、木に馬をつないで休憩した。
「馬に乗ると言うからひとりで乗るのかと思ったよ」
ジョシュア兄様が声をかけてくる。
「ひとりでも乗れるけれど。
今はふたり乗りが楽しいから、そうしてる」
「じゃあ、次は僕の馬に乗らないか?」
そう誘われたけれど、断った。
「ウォロとふたり乗りをするのが楽しいから。
他の人と乗るならひとりで乗った方がいい」
ジョシュア兄様がちょっと変な顔をしている。
そんな変な事言ってるかな?
兄様の反応に戸惑ってハロルドを見る。
苦笑いして首をすくめて見せてきた。
うん?
私、やっぱり変なこと言ってるのか?
馬車が見えてきたので、また馬に乗り出発した。
山の道を馬で駆けるのは楽しい!
振り返ってウォロを見た。
微笑んでいる。
ウォロも楽しいなら良かった。
湖が見えてきて、湖に沿って進み、別荘に到着した。
馬をねぎらって撫でてやって、馬庭の柵の中に入れてやる。
水場も用意されていた。
夕方になったら別荘の馬丁が馬小屋に入れてくれると言うのでお願いして、別荘の玄関に向かうと馬車が到着した。
荷物を下ろして、ジョシュア兄様の指示で部屋に運び込む。
私は2階の客間へと言われたので、ベッドが2台ある大きな部屋を選び、ジュンと同室にしてもらった。
1階の大きな客間にダイゴとウォロが同室。
ミクラとハロルドがその両隣の個室をつかうことになった。
ジョシュア兄様と明日来る予定のお父様は2階の自分達の部屋を使うと言う。
別荘の料理人が昼食の用意をしてくれると言うので、それまでジュンと私は客間で少し休むことにした。
「馬車、大丈夫だった?」
「はい、揺れも少なくて、さすが辺境伯爵家の馬車って感じでした。
ダイゴ様やミクラ様も楽しんでお話しされていましたよ」
「ジュンは何話したの?」
「お嬢様のことを聞かれましたので、少々」
「えっ! 何話したの?」
「いつも何して過ごされているとか、どんな食べ物が好きとか……。
大丈夫ですよ。
私が変なこと言うわけないでしょう!」
「それはそうなんだけど。
ミーア帝国の話とか聞けばよかったのに」
「あ、聞きましたよ。
両国の違うところと同じところ。
けっこう同じ部分が多くて、ミーア帝国にも行ってみたくなりました!」
ジュンは私が生まれた時に新人として雇われたメイドで、その時12歳だったそう。
母が亡くなり、私が王都に行ったタイミングで長年仕えてくれていたベテランのメイドが辞職したのだが、ジュンは残ってくれた。
だから、今は23歳になる。
そろそろ退職や結婚ということも考えないといけないけれど、私がまだどうなるかなので甘えてしまっていて、そういう話はなかなかゆっくりできていない。
この機会に話せたらいいな。
ジュンに着替えないのかと聞かれる。
今日はまだ剣の稽古をしていないのでこのままでいいと言うと残念そうな顔をされた。
「明日、お父様が来るから、それまでは好きにさせてもらおうと思って」
私がそう言うとジュンがにやりと笑う。
「ジョシュア様が驚きそうですね」
「あー。
少しあきれて放っておいてくれる方が助かる」
ジュンと食堂に行くと、まだダイゴ達が来ていなかったので呼びに行こうとしたらジョシュア兄様に呼び止められた。
代わりにジュンが呼びに行ってくれ、私は食堂に残った。
「いくら男の格好をしているとはいえ、家族以外の異性と親しくし過ぎではないか?」
「私はまだ11歳ですし、世間的にはまだぎりぎり子どもです。
私は今まで友達がまったくいませんでした。
彼らが初めてできた同じくらいの年齢の友達です。
未婚の女性とか、貴族令嬢とか、そういうのは置いておいて、今くらいしか友達と楽しく過ごすことができないんです。
ジョシュア兄様の心配もわかるけれど、せめて友達の滞在中は私のことを気にし過ぎないで下さるとうれしいのですが……」
「そうか……、そういうこともあるのか……。
しかし、気になることは言わせてもらう。
それが兄としての役目だと思うから」
「わかりました。気になることがあれば、直接、私だけに言って下さい」
「……僕が何かしたか?
今朝から、態度がおかしいぞ」
「……ごめんなさい。
確かに友達に楽しく過ごしてもらいたいたくて、気を張りすぎているかもしれません」
「わかった。
後でふたりで話せるか?」
「……はい」
確かに、ここんとこ、兄様に対してイライラしてたかも。
ウォロに何か言うんじゃないかとか、守らなきゃとか変に力が入ってしまっていたことに気が付いた。
自分はまだ子どもだからと言いながら、保護者みたいな気持ちもあり、ちょっと……気持ちがぐちゃぐちゃだ。
昼食を食べてから、みんなと湖の方に散歩に出た。
私が歩いているとウォロが心配そうにそばに来た。
「ネモ、大丈夫?
自分達のことで兄さんとけんかしてる?」
「うん……、後でちゃんと話すことにしたから。
私もちょっと悪かったと反省してる……」
「さっきの……。
兄さんにウォロとしかふたり乗りしないと言ってくれたこと。実はすごくうれしかった」
「本心からの言葉だけど……。
でも、義兄にそのままぶつけたのは悪かった。
みんなにも気を使わせてしまい申し訳ない……」
ウォロが私の右手を握ると微笑んでくれる。
私も気持ちを切り替えて微笑んで一緒に歩き出すと、少し離れた場所からジョシュア兄様がこちらを見ているのに気が付いて、たちまち気持ちが沈む。
何をどうしたらいいんだ?
散歩を終えて別荘まで戻ってくるとハロルドが「今日の剣の稽古をしますか?」と言ってくれた。
そうか!
もう、何も考えずに稽古に打ち込むのもいいのかもしれない。
剣の稽古と聞いて、ミクラも興味を持ったようだ。
ウォロも付き合ってくれると言う。
ダイゴはあまり興味がないそうで、外のテラスでジュンとお茶を飲んでいると言う。
ジョシュア兄様も一緒に稽古すると……。
もういいや、気にしないで稽古に集中だ!
ハロルドが木剣を取りに行ってくれている間にストレッチして腕や足を伸ばした。
木剣を受け取って素振りを始める。
ハロルドに見てもらって「そのまま100回」と言われたので続ける。
やり終えて、気が付くとハロルドとミクラが手合わせをすることにしたようだ。
ウォロもそちらを見学している。
ジョシュア兄様が「打ち込みをするか?」と言ってそばに来たので「お願いします」と言って軽く打ち込む。
ジョシュア兄様けっこう上手だ。
さすが父が後継として考えてることはあるな。
「もっと強く打ち込んでいいですか?」と確認すると頷くので、少し距離を取り再度打ち込みをさせてもらう。
兄様が「いつから稽古を始めた?」と聞くので「本格的には2ヶ月くらい前から」と答えた。
「何で剣を?」
「魔法学校で剣も学べると聞いたので、それまでに授業についていけるようにと」
「あれは希望制だろう?
女で学ぼうとするものは……」
「生きていくために学べる機会があるものはすべて学ぼうと思っています」
「……なんでそこまで人に頼ろうとしない?」
そう聞かれて答えられなかった。
なんでだろう?
読んて頂き、ありがとうございます。
エミリア(ネモ)がらしくなく、イライラしています。
後で大反省しますので、もう少し見守って頂けたらと思います。
次回も頑張ります!