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89 種からの発芽

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。


 ギーマ先生や警備局、クラウス先生と魔法研究所の方も新しい情報や進展がなく手詰まり。

 謎の魔道具職人の手による魔道具もぱったりと流通がなくなったということだ。


 他の視点から考えようとなると、やはりアルテイシアとレイモンドの方からということになる……。


 しかし、露骨に関わろうとすると特にレイモンドには警戒されそうだし……。

 こちらも様子を見ているという感じで動けない。


 今日は学校は休み。2年の選抜メンバーと5年の選抜メンバーが一緒に王城で練習するそう。

 去年の優勝、準優勝チームが一緒に練習してたら、他の学年との差がすごくついてしまう気がするがいいのかな?

 他の学年も頑張れ!!


 私達は孤児院でのボランティアだ。

 先日、ランスに売られたケンカを買って、盛大に言い合いをして大変疲れた。


 特にランスは後半エドワードのことばかり言っていたのに気がついてすごくイラっとした。

 どんだけ自分が傷つきたくないメンタル弱い男なんだ!

 おかげでその反動で夕食後にすごくエドワードに優しくしてしまい、気持ち悪がられた。


 ランスは幼児部だし、私は児童部だし、最低限の接触で構えていたが、ランスは何もなかったかのようないつもの通りの、明るく頼りになるんだけどちょっとチャラい感じで……。

 

 こちらが構えているのがバカらしくなり、もう私も気にしないことにした。

 メンタル弱いどころか、最強なのかもしれん……。


 それとも周囲に気を使ってんのかな?


 孤児院についてそれぞれに分かれて子ども達と過ごす。

 私達は児童部の子どもの勉強を見たり、魔法の相談を受けて練習方法などを教えたり、実際にやって見せたりしていた。

 

 実際、この孤児院の大きな子ども達は職業訓練として働きに出ることもある。

 その時に魔法が使えるとかなり有利になり、孤児院を出る年齢になった時に自立できるいい仕事に就けることに繋がる。

 実際、3月で孤児院を出た子は魔法や学業が優秀だと褒められ、仕事先がいつもよりすんなり決まったのだとシスターがうれしそうに教えてくれた。

 子どもとしての思い出とその後の人生の助けになれたのならば、こんなにうれしいことはない。


 幼児部の方に新しく入った生徒が多かったので気になってこっそり覗きに行ったが、大丈夫そう。

 みんな小さな子ども達が甘えるのをうまく受けとめて一緒に遊んだりしていた。


「偵察?」

 ランスに見つかった……。


「ちょっと新人が気になって……」

「思ってたほど変なのはいなかったよ」

「変なのって……、言い方……」

「ちょっと話もしたけど、兄弟がいる子が多いみたい。だから慣れてるんだろうな。

 そういう子じゃなければボランティアに申し込まないかもだけど。

 まあ、エドワードや……」

 ここでちょっとニヤリと私を窺うようにして続けた。

「ウォロ狙いの子は今日は来ていないしね」


「そうだねー」

 私もにこやかに返事する。

「……なんだ、動揺しないと面白くないんだけど」

 動揺なんてしてやるものか!!


 児童部に戻るとセレナとライトが立ち話をしていて私に気がつくと手を挙げて合図をした。

 あわてて駆け寄る。

「急がせてごめん! あっちはどうだった?」とライト。

「幼児部の方も大丈夫。とてもいい雰囲気だった。気になる人もいなかったし」

 セレナがにっこりした。

「よかったわ!」


「それで、何か?」

 私はふたりが立ち話をしていたのが気になり聞いた。


「少し前にシスターから言われたんだ。

 今日は児童部の子ども達に職業体験の斡旋をしてくれる貴族の方が来るから、ネモに挨拶に来てもらえないかって。

 ネモだけ? 僕も行けばいいだろうか? ランスにも声かける?」

「私はどっちでもいいけど……。ランスが一番上級生だし来てもらおうか!

 ライトは今日のリーダーだしね。ふたりは挨拶だけしてすぐ戻る?」


 セレナがランスを呼びに行ってくれたので、院長室前でランスを待った。

 3人揃ったのでドアをノックするとシスターの声がしたのでドアを開けた。


 部屋に入るとシスターが院長室の机の方に、こちらに背を向けてソファーに座る男性のがひとりいるのが見えた。

  

 少しくすんだ金髪……。私の中でざわっと嫌な感覚がした。

 そうだよ、貴族の見学は断っていたはず。

 なのに職業訓練の協力者だからと言って、今日、ここに来ているんだ?!

 いつものシスターなら、別日にすることを提案してくれているんじゃない?


 私が完全に部屋に入らず立ち止まったので、ランスとライトがぶつかりそうになって立ち止まる。

「ネモ?」


 ライトの声に男性が立ち上がりこちらを向いた。

「カルタロフ!!」

 私は銀色の瞳を見て叫ぶ。

 ライトとランスが慌てる。ふたりとも伯爵と直接会ったことはない。


 マッちゃん! ウォロに知らせて!

『孤児院にカルタロフが来てるぞ!』


 私はまだ空いているドアにライトとランスを突き飛ばすように押した。

 間一髪、ふたりを廊下に出すことは成功したけれど、ドアがすごい音を立てて閉まる。

 ふたりが廊下からガチャガチャドアを開けようとしているが開かない。


「闇魔法ですか?」

 私が言うと伯爵は頷いて言った。

「闇魔法の魔道具の効果だ、1時間ほどドアは開かない。ある程度の魔法なら弾くようになっている」

『ネモ、待ってろ! と言っている』

 王城だから、ここから近いか。

 マッちゃん、ごめん、ここからはマッちゃんの判断で話していいから!

『院長室にシスターとカルタロフとネモの3人で閉じ込められとる』


「シスター!!」

 私はシスターに呼びかけるが返事がない。

 

 ソファーが間にあるので、すぐに飛び掛かったりはされないか。

 私はシスターの方へ視線を走らせる。

 寝ているのか? 椅子に座って目を閉じゆらゆら揺れている。

 机の上に投げ出された様に伸ばされた左手首にブレスレットが光った。


「魔道具? シスターに?」

 ギーマ先生、クラウス先生に知らせないと!

『シスターは魔道具で操られてるようだ。ギーマとクラウスに知らせろ。

 ライトとランスは部屋の外だ。閉じ込められる前にネモが外に逃がした』


『……ウォロがまた怒っとるぞ』

 怒ってると言われても、とっさにそうしちゃったんだから、もうどうしようもない。


「ランス、ライト! 

 シスターは魔道具で従わされてたみたい!

 子ども達の安全を頼む!」

 大声でドアに向かって叫ぶと、一瞬の間の後、返事の様にドアがダンダンと叩かれる。 

 ひとりが離れる足音が微かに聞こえた。

 ライトが戻り、ドアの前にはランスかな?


 伯爵がドアの方に回ってこようとするので、私はソファーが間に常にあるような位置に、つまり部屋の奥へ移動する。


 とりあえず掴まれないようにしないと……。

 ドアがダメなら窓か?

  

 シスターの後ろの窓を見る。

 申し訳ないけど、壊させてもらう! ごめんなさい!!

 

 風魔法で窓を内側から吹っ飛ばす。

 すごい音がした。子ども達怖がってないといいけど……。


 そのまま、窓に走り寄り、足をかけて飛び出ようとして後ろに引き戻された。

「えっ?」

 振り返るとシスターが私の服を掴んでいる。

「シスター?!」


 操られていた時のアンの表情を思い出した。

 同じだ。


 伯爵が近づいてくるのに動けない。

 悪意はあるのにウォロの魔道具が発動しない?!

 服を掴むくらいじゃ攻撃とみなされないのか?

 いや、これ女性だからまだいいけど、男性だったらアウトやぞ?!


 私はシスターのブレスレットを外そうとするが抵抗された。

 完全に気絶しないと無理か。

 時間があれば中和してショートさせられるかもしれないけれど、どれくらい時間がかかるかわからないし、そんな余裕は今ない!!


「ここ王城に近い! 仲間がもうこっちに向かってます!

 早く逃げた方がいいですよ!

 それに、さっきのふたりがあなたがカルタロフ伯爵だと知ってる」

 

 私は伯爵にそう叫んだ。もう帰ってよ!!

「そうだな、もう少しうまくいくかと思っていたが……。

 もちろん逃げるが、その前にもう一度ミーア帝国の皇子にきっちり警告をしておかないとね」


 私は光魔法の防御壁を展開した。

 もう掴まれたくない。

 窓から逃げたいが、シスターが離してくれない。

 伯爵の闇魔法の黒い塊が光の防御壁を消していく。


 私は自分の身体に光魔法をかけておくことにした。

 闇魔法が入ってきたらしばらくは中和できるはず。

「シスター、ごめんなさい!!」


 私はシスターの手に軽く電撃を当てた。

 痛そうな顔をするが離してくれない。

 あ、意識は伯爵だからか……。

  

 その時、窓から私と伯爵の間にランスが飛び込んできた。

 私に掴みかかろうとしていた伯爵の手がランスの腕をつかんだ。


 ランスに闇魔法が注ぎ込まれる。


『ネモ、魔道具を!』

 マッちゃんに言われてシスターのブレスレットを外す。

 伯爵が闇魔法を使用中だからか抵抗されず、私の服から手を離し崩れ落ちるように床に倒れた。


 伯爵はランスから手を離した。

 ランスがふらふらと壁にぶつかって座りこむ。


「ランス!!」

 私がランスに手を伸ばそうとするとマッちゃんに止められる。

『触ってはいかん!』

 でも、ランスが!!


 その時、伯爵がはっとしたようにドアを見て、窓から飛び出て行った。

 

 ドアが吹っ飛んだ。

「「ネモ!!」」

 ウォロとエドワードだった。

 ウォロの光魔法で中和し、エドワードの風魔法で吹っ飛ばしたんだ!!

(火じゃ火事になっちゃうもんね……)


「ランスが、私の代わりに伯爵に闇魔法かけられて!!

 マッちゃんが触るなって!」


「それなら触らない方がいい。とりあえず、エドワードも触るな!」

 

 ランスが頭を振ってため息をついた。

 瞳に生気が戻ってきた。


「大丈夫?」

 私が顔を覗き込むように声をかけると、ランスは片手で自分の口の当たりを覆って、真っ赤になった。


「気持ち悪いの?」

 私があわてて中和しようと手を伸ばすと「触るな!」と後退あとずさって壁にぶつかる。


 ウォロとエドワードに気がつき聞いてくる。

「ウォロ、光魔法で中和する時、かけられた闇魔法の映像って見えるのか?」

 ウォロが私を見る。

「うん、中和する時、映像が見える。

 私の時はマッちゃんが遮断してくれてたからほぼ黒いもやもやでよくわかんなかったけど……」

「じゃあ、ネモは見ない方がいい……」


 ん?

 私に見せようとした映像を見たってことは……。

「私の映像か!!」

 

 ランスが真っ赤になりながら頷く。

「すっげーエロい」

 

「……あの変態伯爵!! 誰に中和してもらうんだよ! そんなの!!

 あ、でも私じゃないなら警備局に被害を訴えられる?」

「えっ、この内容話せと言われてもそれは……」

 ランスがもごもご言う。


 シスターも間もなく気がつき、院長室のドアと窓が破壊された現状にまた気を失いそうになってた。

 ごめんなさい……。


 子ども達は、ライトが建物から遠い幼児部の庭の方へみんなを避難させてくれていて、全員無事。

 ギーマ先生と警備局も到着し、破壊した経緯を聞かれる。

 シスターも一緒に話を聞いてもらう。

 シスターはカルタロフ伯爵は知っているが、今日来たことは知らない、覚えていないという。


 私は魔道具のブレスレットを出した。

「これはいつから身につけていたのですか?」

「1年ほど前からです。伯爵から頂きました……」

「種蒔きだな。他にもネモやウォロの関係しているところに蒔かれてないか調べた方がいい」

 ランスが言った。

 

 その時、クラウス先生も到着し、魔道具を簡易鑑定にかけると、やはり謎の職人の物で、壊れたドアの魔道具も鑑定でき、同じだった。

「壊れていても鑑定できるんですね!」

 そっか、壊しても良かったのか?!


 とりあえずカルタロフ伯爵に襲われたことは確実なので警備局がさっそく配備したそう。

 アルテイシアとレイモンドは学校にいたそうで、学校で保護されているという。


 問題はランスの頭の中の映像をどうするか……。

 ウォロかカトレア先生に頼むかな……。


 ウォロからはなんで自分が逃げなかったんだと聞かれた。

 あんなに自分で女子は気をつけろ、気をつけてあげてと言っておきながら、とっさに男子を逃がすという行動をした私。


「だって、何も考えずにとっさにふたりを押しちゃったんだもん……」

 ため息をつかれた……。

読んで下さりありがとうございます。

ブックマーク、いいね、ありがとうございます。

すごくうれしいです!!

これからもどうぞよろしくお願いします。

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