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87 けんかを買う 

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 結局、その後、アルテイシアとレイモンドに伯爵家のことを少し質問してみたり聖魔法の魔道具作りについて話したそうだが、レイモンドが余計なことは言わないようにとアルテイシアを制止したりしていたそう。


 レイモンドとアルテイシアが帰った後、私達は2-1寮に向かい、そこでアンドレアス達にもカルタロフ伯爵のことを伝えることができた。


「なるほど……、あの様子だとアルテイシアは自分がミーア帝国の皇帝家の血を引いていることは自覚してそうだな。知っていて、ウォロに興味を持ち、近付いているということか」

 アンドレアスが言った。


「でも、ウォロとかなり近い親戚になるんだろう? 抵抗あるな」

 ティエルノの言葉に、クラウス先生が言った。

「ない話ではない。家を守るためにとか本家を盛り立てるためにという理由で、普通にそれくらいの関係なら婚約や結婚の話があるだろう」

「でも、この場合はアルテイシアだけが乗り気なわけで、ウォロは相手にしてないしな。

 ウォロがこのまま突き放せば、エドワードの方にまた戻って来るかもな!」

 ランスが余計なことを言う。

 エドワードが慌てる。

「それは、困るな!」


「って、もう、アルテイシアを怒らせる作戦なのか何なのか知らないけれど、私を困らせるようなことはやめてくれ……」

「作戦?」

 ウォロがぽかんとする。

「えっ? あれ、作戦じゃないの?

 何? 本気で食堂で、あんな恥ずかしいこと話してたの?!」

「恥ずかしいこと? 本当のことだろう。

 アルテイシアにあれだけ言えば、ネモしか愛さないことは伝わるだろう」

 私はまた真っ赤になる。愛って……。

 

 クラウス先生が苦笑いして「ウォロ、そういう告白はふたりきりの時にするものだよ」と言った。


 話を戻して……。

 アルテイシアが知っているならレイモンドも知っているはずだし、レイモンドはぼろを出さないようにかなり気をつけているので、狙うならやはりアルテイシアか……という話になる。


「ウォロが誘えばひとりでホイホイ来るんじゃないか?」

 ランスがひどい言い方をする。

「ランス、その言い方ひどい。アルテイシアだって女子なんだから……」

 私は思わず言ってしまった。


「女子だからって、アルテイシアがやったこと忘れたのか?

 5倍返しの魔道具でみんなを脅かして言うことをきかせようとしたんだぞ!

 ネモだってウォロに近づいてきて嫌だって言ってただろ!」

「それはそうなんだけど……。少し話してみて、普通の女の子だなと思うとこもあるし。

 なんか、恋愛感情を利用するのは抵抗あるよ」

「ウォロに嘘つかせて他の女子に声かけさせるのが嫌なんだろ!

 それをいい人ぶってさ。そんなにネモは品行方正な真面目ちゃんでもないだろうし。 

 あ、そう思われたいのか?!」

「そうじゃないけど。

 わかった。じゃあ、私はレイモンドと話をすることを考えてみるよ。

 アルテイシアの方はそっちで考えて」

 ランスと話をするのが嫌になってきて、そう言ってこの話は切り上げた。つもりだった。


「待てよ。逃げんのか?」

「何でそうなる。今は言い争いしてる場合じゃないでしょ」


 なぜ誰も止めない。

 私はみんなを見回した。みんなびっくりしたような顔をしている。

 クラウス先生が慌てたようにランスに声をかけてくれる。

「ランス、もうやめろ」

「なんだよ、ネモはいい子ぶってさ。本当はもっとドロドロしてるもんを抱えてるんじゃないの?!

 あ、無意識なのか? それはそれでたちが悪い」

「ランス!」

 クラウス先生が立ち上がってランスのそばまで行き、止めてくれる。

「ありがとうございます、クラウス先生。

 ランス、言いたいことまだあるんだろ? 外で話しよう。逃げないで聞いてやる」


 私は席を立ち、寮の玄関の方へ行く。

 ウォロが立ち上がりかけたのを見て私は言った。

「ウォロはみんなとこれからどうするか話してて。ランスの言いたいこと聞いてくるから」

 ウォロが私の声の冷たい響きに動きを止めた。


 私が寮の外に出ると、ランスも出てきた。

 少し寮から離れると向かい合う。


「とりあえず言いたいこと言いなよ。聞くから」

 私は静かな怒りを隠さないで言った。

 怒ってるんだからな。

 こっちがきちんと説明したり、引いてるのに、どんどんひどいこと言ってきて。


 ランスが黙っているのでこちらから言う。

「私がみんなからいい人だと思ってもらおうと無意識に計算して女子をかばったりして、本当は心の奥では闇の様にドロドロしたものを抱えている、たちの悪い女ってのはわかった。で?」

「……悪い、言い過ぎた」

「言い過ぎたじゃないよ。思ってるから言葉に出るんだよ。

 私はウォロの婚約者で、ウォロのことを愛してる。だから嫉妬もするし、ウォロを守りたいとも思うし。それをドロドロしてるって表現されたらそうかもしれないけど……。

 自分でも恋愛感情ってのは一番自分の弱いところだと思うから、他人のそういう気持ちを利用するようなことはしたくない。ただそれだけ。

 確かに私は鈍いとかよく言われるけど、自分なりに考えてる。

 ランスの話だってちゃんと聞いてるし、返事もしてる。

 ただ私を攻撃したいのなら……、ケンカしたいなら相手になるからそう言って」


「いや……、悪かった。ちょっとイライラして。ネモにぶつけた……、すまん」

「何にイライラしてたんだよ。このままだとまた同じことの繰り返しになるから、言って」


「だから……。どうしてもネモのことが気になる。

 ネモといると楽しいし、でも、ウォロもいるし、エドワードやティエルノ、最近はミカも。

 みんなネモと仲が良いし。

 ウォロが特別なのはわかっているけれど、それ以外の奴らとも仲が良いじゃん。

 俺は……、ネモに何も求めないつもりだったのに……。

 なんかもう、いろんなことが気になって……。ネモに俺のことをもっと見て欲しいし、もっと一緒にいたい」


 んー? うん、ウォロのことはわかってんだ。あ、だからエドワードをどう振ったのかの聞いてきた? 

 振られたくはないのか……。だから好きという言葉は意識して使ってこない……。

 ランスの方だって、自分を守ろうとしてドロドロじゃん!


「まず、自分の思いやイライラを押し付けるのはやめて。

 最近のランス、そういうところがある。

 それから私にとってランスは友達のひとりだよ。頼りになる大切なね。

 でも私にとって一番大切な人はウォロなの。それはこの先も変わらない。

 いくらランスがイライラしてもそれは変わらない。

 イライラしちゃう自分も辛いでしょ。それは私もわかる。わかるようになったからさ。

 でも、わかるからってなんでも受け入れることはできない。私にはウォロがいるから。

 この反論を聞いて言いたいことは?」


「……相変らず正論だよな。だから品行方正な聖女でもないだろうし! って思うんだよ。

 ネモだって、自分の気持ち押し付けてくるじゃん!」

「気持ちじゃないよ。事実だよ。私がウォロのことを好きなのは。事実は変わらん。

 押しつけじゃなくて、変わらないの!!」

「じゃあ、ネモのことを好きな人の事実は。

 俺の事実、エドワードの事実、それぞれに事実はあるよ。

 みんな変わらないんじゃない?」

「でも、好きから愛にというのはひとりじゃ完成しないでしょ。

 両想いにならないと、完成しない。片方が応えられない好きは辛いでしょ。

 あきらめて次の好きになれる人を探した方がいい」


「そうエドワードに言ったの?」

「その時はここまで言わなかったけど、あきらめてって。

 このまま片思いしててもいいかと言われたけど、あきらめてと伝えた。

 この先、同じことを伝えてくれる人がいても私はそう返事する」

「……わかった。無意識に計算してたちの悪い女ってのは撤回する。すまん。

 本当にウォロだけなんだな……。

 それ以外はどんなにネモのことを好きになっても友達にしかなれないんだな」


「うん、それが私の誠意。

 正論と言われるかもしれないけれど、私はウォロ以外の人からの、友情を越えた好きの気持ちに応えるつもりはない。

 それをきちんと伝えることが、こんな私のことを女の子として好きと言ってくれた人に対する、私の誠意だよ」

「……エドワードはまだ引きずってるみたいだけどな」

「でも、ウォロと私の親友でいてくれてるよ」

「そうだな、もうふたりを一緒の者として考えればいいのか……。ってすぐは無理だな。俺も少し時間がかかりそう。時間をくれ。ちゃんと考える」


 ランスだけ寮の方に戻った。

 私は夕暮れの周囲を見回した。

 あー、なんでこんなにしんどい思いしてんだ。

 おかしいな、婚約してるし、ウォロと一緒にいる姿を見せてるのに何でこうなるんだろう。

 私が変なのか?

 何か勘違いさせるようなことをしているのか?

 

 ウォロにオードリーにも油断しないように言われて気をつけてるつもりではあるんだけど……。


 今日は剣の授業もあったから、すごく疲れた。

『ネモ、戻ってこないのか? とウォロが言っているぞ』

 マッちゃんの声が聞こえる。


 マッちゃん、私はウォロがいるのに他の人に勘違いさせるようなことをしているんだろうか?


『ネモは男女というくくりをあまり気にしてない。魂で触れ合おうとするところがある。

 それでいて、女性と子どもと仲間は意識して守ろうとする。

 確かにな、そういう人物は男女問わずもてるのを儂は知っているよ』


 へー、昔もいたんだ、私みたいな人。

 その人は幸せになれた?


『その人物は男だったので、何人かの女性に振り回されることになり、結局、自分が本当に愛したひとりの愛を、得ることはできなかった……。だから、ネモのやり方でいいと思うぞ。儂は』


 ありがとう、マッちゃん。

 ……もしかしてそれマッちゃんのこと?


『えっ……』


 だってマッちゃん、子孫多くない? お相手ひとりじゃなさそう……。


『だからだな、昔と今じゃ、いろいろ違うことが……。

 ……まあ、そうだな。儂が若い時、特に勇者と呼ばれていた頃の話だな』


 勇者?! 魔法使いじゃないの? 


『最初は魔法剣士だったんだ』


 へー! カッコよかったんだろうな~!


『そうじゃな。儂カッコよかったぞ!!』


 ぼーっとマッちゃんと話していたら「ネモ!!」と後ろから声をかけられた。

 声でわかる。ウォロだ。

 私は振り向く。


「何で戻ってこない。心配した」

「ごめん、なんか疲れちゃって……。ランスどうした? 寮に帰ったけど大丈夫そうだった?」

「ちょっと元気なかったけど、大丈夫そうだった」

「そうか、わかってくれたかな……」

読んで下さりありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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