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86 泳がせるはずが……

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 聖魔法の授業で、先生にそれぞれ課題を見てもらっている時に、ウォロがアルテイシアから声をかけられた。


「ウォロ様、聖魔法につていお話ししたいのですが!」

 レイモンドがアルテイシアを止めようとしたが、それを察したアルテイシアが急に私を見た。

「わかりました。ネモも一緒にどうですか?」

 今日誘われて驚く。

 一緒にってどういうこと?

 あ、ウォロが来るようにおまけということか?


「私と兄とウォロ様とネモでお話しするのはどうですか?

 それならいいでしょう!」


 近くにいたアリスがあわてて「私も参加していいかしら?」と言った。


「まあいいですけど」

 アルテイシアの言い方!! レイモンドの顔が引き攣っている。


「ではこの後、食堂でどうかしら?」

 アリスが話の主導権を取ってくれた。


「はい、ウォロ様! 一緒に行きましょう」

 アルテイシアがうれしそうに言った。


 泳がせるんだもんな……。うむ、我慢だ。


 授業が終わり、アンドレアスがアリスを迎えに来たので、アリスが5人で食堂で話をすることに伝え、目配せした。

 アンドレアスは頷き、一緒にいたアポロがすっと立ち去る。

 たぶん、エドワードやランスに知らせに行ってくれたのだろう。


 アンドレアスが時間を稼ぐようにアリスと話をし、食堂まで送ろうとゆっくりしたペースで歩きだした。

 アルテイシアはウォロに何か話しかけている。ウォロは最初は受け答えを言葉少なにしていたが、振り向いて私が歩いて行くのを待ち、一緒になると手を握ってまた歩き出した。


 アルテイシアに軽く睨まれる。


 アルテイシアがレイモンドに言った。

「お兄様! お兄様がネモをエスコートすればいいのでは?」

 言われたレイモンドも困惑している。


「ネモ、お兄様がエスコートするから、食堂までウォロ様と話をさせて欲しいのだけれど……」


 私はウォロと顔を見合わせる。

「……食堂に着いたらみんなで話をする、そういうことでしたよね?」

 ウォロが言ってくれた。

 アルテイシアがぷいっとした。


 やっぱり、ウォロに興味があるんだな。


 食堂に着くと、クラウス先生とランス、アポロとエドワードとティエルノ、ライトとセレナとオードリーとあちこちにすでに座っているのがわかった。

 

 アンドレアスが何気にランスの席に近付き、ふたりに挨拶した。

「アリス、私はここで君を待つよ」


 流れでその近くの席に座るようにアリスが促す。

 

「レイモンド、お茶を取りに行こう。アリスとネモは紅茶?」

 ウォロが私達を椅子に座らせてから言った。

「温かい紅茶で。ありがとう」と返事すると、アリスも「私も同じもので」と答えてくれる。

 

 レイモンドもアルテイシアにメニューを確認しふたりで取りに行った。


 アルテイシアが何も言わない。ウォロがいないと話す気にもならんのか?!


 アリスが「アルテイシア、学校に離れた?」と聞いてくれた。

「はいだいぶ慣れました。友達もできて楽しいです」

 それは良かった。

 私はぼんやりふたりの話を聞いている。


「ネモはどうしてウォロ様と婚約できたんですか?」

 急にアルテイシアに言われて、びくっとするくらい驚いた。


「急に何?」

 驚いた顔のまま言ってしまう。

「いえ、興味があるので」

 アルテイシアが真顔で言った。

 んー、ちゃんと答えるか……。

 隣のテーブルのランスが興味あり気に身を乗り出したのがちらりと見えた。やりにくいな……。


「えっと、辺境伯爵領のダナンはミーア帝国に近いのですが、そこにウォロが遊びに来ていて、お互いの身分を知らずに知り合って……。

 お互いに好きになって、ウォロのほうから正式に婚約を申し込んで頂きました。11歳の時、ですね」

「お互いの身分を知らずに?」

「はい、私も辺境伯爵令嬢と名乗らなかったし、ウォロも警備の関係からかミーアの貴族としか名乗っていませんでしたし」

「ふーん、そうなんだ……」


 その時、ウォロとレイモンドが戻ってきた。

「ありがとう」 

 紅茶を受け取る。


「それで何の話をしたいの?」

 席に着いたウォロがレイモンドとアルテイシアに言った。


「聖魔法についてです。ウォロ様は聖魔法持ちだといつ知ったのですか?

 ミーアでは調べないでしょう?」


 あ、やっぱり父親からミーアの話を聞いてはいるんだな。


「最近は調べるようになってるよ。

 ウォルフライト王国との関係も深まったこともあってね。

 鑑定のために魔道具も王宮と神殿にある。

 3年前からはミーア帝国からこの学校へ留学生を送っているし。ちょうどレイモンドと同じ3年生からだな。

 入学テストも王国からわざわざミーア帝国に入学テストをしに来てくれるようになってる。

 昔とはだいぶ変わってきているよ。

 ただ、聖魔法はミーアではそこまで知られていないし、研究も進んでいない。

 自分がこの学校で学んだ知識や技術をミーアに伝えられたらと思っている」


「素晴らしいです! 私もお手伝いします!」

 アルテイシアが両手を合わせてウォロをうっとりと見つめる。


「それはネモがいるから大丈夫」

 ウォロが私を見て微笑む。私も微笑み返した。


 でも、なんだか居心地悪い。


「ネモはもう皇帝にも会って自分の婚約者だと認められているしね」

「……そうなんですね。ミーアとは関係ないくせに……」

 ぼそっと言った後半の言葉、怖いんだけど。


 レイモンドが話題を変えようと声をあげた。

「剣術大会がもうそろそろですね。

 私も3年の代表です。

 ウォロは2年の代表ですね。去年は1年生が劇的な優勝をしましたし、今年はみんなから追われる立場ですね」

「あ、自分は代表だけど、補欠だから」

「え、あの強さで補欠?」

「罰みたいなもんかな?」

 ウォロがうれしそうに話をしようとするので、私はあわてて話題を変えようと言った。

「今年の1年女子で剣の授業を取っている子はいる?」


 アルテイシアがむっとして言い返してきた。

「今、ウォロ様の話を聞いているんです!!

 罰とは? 何かあったのですか?」

 あー、もう止めたのに、知らないよ……。私を睨むなよ。止めたんだからな!


「選抜の試合でネモと2回戦で当たったんだ。

 手を抜かない約束をしてたんで、ネモを場外に追い込んで勝ったんだけど……。

 ネモが体力ぎりぎりまで全力で戦ってくれてて。

 そんなネモがとても愛おしくなって、授業中なのに、その場でキスをしてしまって」

 レイモンドがお茶にむせて咳き込んだ。

 私が負けたくだりはニコニコして聞いていたアルテイシアの表情が強張る。


「それで、授業中にそんなことをしたからか、ネモからもやり返されたしね。

 補欠にされたのは先生からの罰ということなんだろうな」


「ネモのせいじゃないですか?! やり返したって、キ、キスを?!」

 アルテイシア、変な勘違いしてるな?!

 私がしたのは頭突きです。


「ネモのせいじゃない。アルテイシア、考えてごらん。

 急に人前でしかも授業中に……そんなことをされたら、ネモだって怒るさ」

 レイモンドはこの話、頭突きのことを知っているんだ。


「怒る? 婚約者のすることですから、全部受け入れるべきでしょう!

 ウォロ様、私は受け入れます」


 ん、何の話になっているんだ?

 ウォロも戸惑って言った。

「えっと……、ネモの頭突きを受け入れるってこと? 

 まあ、受け入れざるを得なかったけど」

「頭突き? なんてひどい!」

 アルテイシアが私を睨む。

 だから、話がごっちゃになってるんだよ!!


「アルテイシア、ちょっと話を整理しようか!」 

 私は声をかける。

「まず、ウォロの話は私にキスして、私が怒って頭突きしてウォロが鼻血を出したんだよ。

 それが事実。

 レイモンドも噂で聞いたのかな? 知ってたみたいだね。

 で、アルテイシアはウォロのキスに対して私が怒ったことをひどいと、婚約者ならキスを喜んで受けいれるべきだとそういうこと?」


 アルテイシア、ちょっと考えて頷く。


「ですって。ウォロ。

 アルテイシアなら怒らないってさ。

 でも、授業中に、まわり男子生徒ばかりのとこであれはないよ」

「魔法対戦大会の時もウォロ試合後に無理やりネモにキスしてたよな」

 急にランスが話に入ってきた。

「え、あ、そうですね。あれは全校生徒と保護者もいたから、大問題になって大変でした……」

 私がため息をついて言った。


「ウォロも学習しねえな」

「ネモがかわいいのがいけない」

 なんで! 私のせいにする!

「弱っているネモ、本当にかわいくて。ついキスしたり抱きしめたりしたくなるんだよ」

 なんて話を食堂でしてるんだ!!


「ウォロ黙って!! ここ食堂!!」

 私が真っ赤になって言うと、ランスがそれを見て言った。

「ほんと、弱ってるネモ、かわいいな」

  

 ウォロが私を隠すように抱きしめ「ランスは見るな」と言った。


 わー、もう、何の話だよ!!

 アルテイシアを泳がせるんだろ?!

 なんで私を困らせるっつうか、恥ずかしい思いをさせるんだよ!!

 はっ、これも泳がせる作戦なのか?


 レイモンドを見ると赤面して下を見ているし、アルテイシアも赤くなって目が泳いでる……。

 そっちの泳がせるじゃないでしょ?!


 アンドレアスが咳払いして言った。

「ネモがかわいそうだから、席外させてやってくれ」

 私はウォロの手から逃れると自分の紅茶を持って、オードリー達の席に避難した。


 オードリーがよしよしと迎えてくれる。

 セレナとライトは苦笑いだ。

「……ここまで聞こえてた?」

 私が恐る恐る聞くと頷かれる。


「珍しい5人だし、近くにアンドレアス様もいるしね。

 みんな興味津々で、静かにしていたから、けっこう声が響いてたと思うよ」

 ライトに言われて私はテーブルに突っ伏した。


 私の席にアンドレアスが座って、話を続けてくれるみたい……。

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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