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黎明のアヴィオン - 第13調査大隊航海記  作者: 新井 狛
第三章 アステロイドベルト
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第6話 痛覚遮断 ②

「さて、どういう事か説明しテもらえるんですよね? ……おや、クピドさん。ハイドラさんも」


 部屋を追い出されたユウにゆっくりとした発話で不機嫌さを示したシエロだったが、次いで出てきた子供たちに目を留めて声のトーンを戻した。


「こんにちはー、シエロさん」


 クピドがひらひらと手を振る。その手のひらにマニュピレーターで軽く触れて、シエロは首を傾げるような仕草で機体(ボディ)を傾ける。


「お二人も調整ですか?」

「いいえー、わたしたちは反物質砲の件でちょっと」


 クピドの言葉にうんうんと頷きながらハイドラが無意識に腕をさすっているのを見て、ユリウスが再び気遣わしげな表情を向けた。


「なあ、ホントに酷い事されてないんだよな……?」

「されてませんよ?」

「そのためにわたしが付いてってるんですよー。ちゃんと見張ってますから大丈夫です! それよりも糧食班ですよユウさん、今日ですよね!?」

「研究所育ちの君たちのその軽さが心配なんだよなぁ……」


 心配そうなユリウスと対照的に、子供たちはそわそわとした表情でユウを見上げる。


「ね、ね、動物がいるんでしょう? わたし、お母さんの記憶では知ってますけど自分で見たことはないんです!」

「うん、いるよ。牛と、豚と、鶏がいる」

「「おおー……!」」


 珍しくハイドラも普通の子供のような反応をしている様子を見て、ユリウスはそれ以上の野暮な言葉をひっこめた。表情を緩めて子供たちの頭に手を置く。


「糧食班の手伝いは力仕事だぞ、まずは朝食をちゃんと食べないと。食堂いこうか」


 そうだね、とユウも頷いて相棒(シエロ)を振り返る。


「シエロ、夜にちゃんと話すよ。それでもいいかな」

「ええ、構いませんよ。食堂に私もご一緒しても?」


 * * * 


 子供たちを追い出した研究室に、コール音が鳴り響く。アサクラはしばらくそれを無視していたが、数分間鳴り続けるそれに諦めたように応答ボタンを押した。


「なぁに、ノブ」

『キリヤ。すまないが班長会の前にアステロイドベルト探査の件で少し意見を聞きたい。時間を貰えないか』

「えぇー。今ぁ?」

『ノクティス迷宮で遭遇した通信偽装タイプの分析レポートを見た。4か月前の第11調査大隊の最終通信記録と照らし合わせて確認したい事がある』

「はぁ……。わかったよ、今から行く」

『……お前、大丈夫か?』

「何が? とりあえず切るよ」

『あ、おい待』


 言いかけたシキシマの言葉を無視して、一方的に通信を切る。


「カンのいいやつ」


 そう呟いて、白衣のポケットからピルケースを取り出した。中身を掌にあけ、水もなしに飲み下す。

 次いで器械台の下段にひっそりと置かれていた、赤い肉片が入ったすりガラスのように濁った標本瓶を保冷庫に仕舞いこんだ。保冷庫の隣のキャビネットからユウに渡したものと同じ補助装置を取り出すと、白衣の内ポケットに捻じ込む。

 そうして整備開発班の副班長は、ため息交じりに研究室を後にした。

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