元パーティメンバーの末路
「くそっ、完全に迷ったな」
最強の剣士である俺、カイゼルは、パーティメンバーと共に迷宮内を歩き回っていた。
パーティのお荷物を追い出した後、景気づけに迷宮を探索していたのだが、道に迷ってしまった。
「むぅ、カイゼルよ。リーダーならば構造くらい把握しておけ」
「黙ってろカイン!」
お前もパーティの一員なら覚えておけよ、誘因系スキルしか使えないデクの坊が。
リーダーに協力的じゃないサブリーダーなんざお荷物と変わらねぇ。
ちっ、迷宮から出たらお前も追放してやる。
よく考えれば前線でカインがモンスターを惹きつけなくても、エレナの魔法スキルで雑魚は掃滅できるわけだしな。
「それにな、いざとなったら転移水晶で逃げればいいんだよ、こんなのは。あのお荷物の分の金があるんだ。アイテム代を差っ引いても」
「えぇーっ!? アタシはイヤ! だってあれ使うと酔うんだもん! 絶対にイヤ!」
また始まった、エレナのワガママが。
基本的に俺たちはユウマの持つ探知スキルで出口まで帰っていたが、転移水晶でも代用は効く。
だからユウマはいらないって言ってたのはエレナのくせに。
これだからガキは嫌いなんだ。何が最年少魔法使いだよ。
「皆さん、お静かに願えますか? 玄室から彷徨い出たモンスターがいるかもしれません。子供の遠足ではないのですから、お静かに。程度が知れますよ、情けない」
「あぁ!? 祝福魔法しか使えない後衛職は黙ってろ!! いいか、誰が前線でモンスターを仕留めてると思ってんだ!!」
癪に障る奴だ。エリザベッタは一言多い。
その余計な一言が神経を逆撫でしやがるからタチが悪い。無表情で人を小ばかにする嫌味な女。
何が対アンデッドのエキスパートだ。アンデッドだって退魔アイテムを使えば余裕だっての。
「あーぁ、ユウマを追い出すんじゃなかったなぁ! 代わりにカイゼルが出ればよかったのに!」
「なんでそうなるんだよ! あんな支援スキルしか使えないような奴!」
「だってさぁ、ユウマって何も言い返さなかったもんアタシが何言っても。ちゃんと話聞いてくれたし! カイゼルは自分勝手だよ!」
カインとエリザベッタは何も言わないが、無言で頷く。俺の堪忍袋の緒が完全に切れた。
なんで俺があんな役立たずと比べられなきゃならないんだ。
いいや、そもそもだ。ユウマを追い出すことを決めたのは俺たち全員だろうが。
「ふざけるなっ! なんで俺のせいみたいになってんだよ。ユウマを追い出すことを決めたのはお前らもだろうが! 自分は関係ありません見たいな顔してんじゃねぇよっ!!」
俺が声を荒らげると、皆目を逸らしやがる。『責任はリーダーにある』とカインが抜かす。
やってられねぇ。デクの坊にクソガキ、小言女。どいつもこいつも俺を舐めやがって。
「ふぅー........! おい、適当な玄室に入ってモンスターを殺るぞ」
........いったん頭を冷やすか。適当な雑魚モンスターをいたぶって憂さ晴らしだ。無暗に入るのは危険だと止めらるが、知ったことか。リーダーは俺だ。黙って俺の言うことを聞いてりゃいいんだ。
「よさんかカイゼル。駄々を捏ねるな。おい、どこに行く気だ」
「なに拗ねてんのよカイゼル!」
「危険だと言いいましたよ? 危機管理もできないんですか、貴方」
全員を無視して俺は玄室に入る。
問題なんてない、俺たちはS級冒険者パーティだ。
王国最強が集ってるんだぞ。仮に魔王が出て来ようが倒してやるさ。
「グレーター・ドラゴン........! へへへ、おい! 準備しろ!!」
「むっ、扉が消えた........? カイゼル、迷宮を出たら覚えておけよ」
「へっ。迷宮を出るころには俺たちは名実ともに最強だ!! エレナ! 魔法は使うなよ! エリザベッタは祝福魔法スキルを使え!! カイン、てめぇはいつも通りだ。前に出ろ!!」
玄室にいたのは、グレーター・ドラゴン。迷宮最強のモンスターだ。
だが、こんなのは火を噴くトカゲに変わりない!! 一気に片を付けてやる!!
「ここは、最大出力で行くか。誘因スキル発動! ≪守護者の城塞LV.3≫!
さぁこいグレーター・ドラゴンよ!」
「祝福魔法スキル発動。≪聖光の大結界LV.3≫。念には念を入れて.......これでいいですね。エレナさんはくれぐれも魔法スキルを撃たないことです、邪魔になりますから」
「わかってるわよ、うるさいわねぇ!!」
誘因スキルに誘われたグレーター・ドラゴンは、まっすぐにカインへと攻撃を向ける。≪守護者の城塞≫と≪聖光の大結界≫の効果で、今のカインはあらゆる攻撃を無効化すると言ってもいい。引き寄せられている間に、俺のスキルで終わらせる。
(逆さに付いた鱗? 弱点はこれだな!)
グレーター・ドラゴンに肉薄して、全力全開。
≪英雄の凱旋撃LV.3≫を叩きこむ。
ユウマの弱点必中なんざなくても、弱点を突くなんて容易いんだよ! 攻撃が必中?
それが何だってんだくだらねぇ。そんなものは、技術さえあれば再現できる。
やっぱりあんな奴は追い出して正解だっだぜ!
「―――ォォォォォォォォォォォォォァァァァァ!!」
「っ!? デケェ声出してんじゃねぇよ、火吹きトカゲがっ!!」
な、なんだ!? くそっ、生命力が可視化されてねぇから効いたのか
そうじゃないのかわからねぇ!
逆さに付いた鱗を切りつけた瞬間、グレーター・ドラゴンが絶叫を上げる。同時に、なにか力が抜けていくのを感じた。
これは........スキルが解除されたのか!?
「ぐぉっ!? うぐぅあぁぁぁぁぁぁぁ!?....ぁぁっ...うぐぇ........ぇぁ........」
「カ、カイン!? う、嘘だろ!?」
スキルの解除されたカインが、グレーター・ドラゴンに噛みつかれた。
鎧で噛みつきを防いでいたのも束の間。喉奥から放たれたブレスによって生きたまま焼かれていった。
断末魔の叫びが途切れると共に、咀嚼されてグレーター・ドラゴンの腹に収まる。
身体の一部が残っていれば蘇生はできるが、カインはもう助からない。モンスターに食われたらお終いだ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? こ、ここから出してっ!! カイゼル!! 速くアイテムを使ってよっ!!」
目の前でカインが食われる光景を見たエレナが、パニックを起こす。
「つ、使えねぇんだよアイテムが!! 反応しない!!」
頼みの綱のアイテムも反応がない。これは、スキルを封じたんじゃなくて補助効果を全て解除したんだ!
でもおかしいぞ。ユウマが居た時はアイテムの補助効果だけは消えなかったのに!!
「あ、あはは。私を食べるのは止めてくださ」
引きつった笑みを浮かべて後ずさるエリザベッタ。
その上半身が、続けて吐かれたブレスで消し飛んだ。パラパラと、焼け焦げた服と肉の混じった灰が舞う。肉の焼ける臭いを残しながら、下半身が膝をついて崩折れる。
「ひぃぃぃぃっ!? 出してぇぇぇ!? ここから出し」
俺は、グレーター・ドラゴンのカギ爪による連撃を、紙一重で回避した。
だが、恐慌状態に陥ったエレナはそのままカギ爪で引き裂かれてしまう。柔らかいものが掻きまわされる音が、俺の耳にへばり付いた。
「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ≪英雄の凱 うぐぁっ!?」
スキルを発動しようとした俺は、そのまま石壁に叩きつけられた。口から漏れ出た血が、行き場を失くして広がった。
なんでだよ、なんで攻撃ができない!? ユウマが居た時は、俺の攻撃でモンスター共は『怯んでた』ってのに。あぁ、来るな。来ないでくれ!!
や、やめろ死にたくないっ!!
「助けてく.......ぇぁ........ぐぇっぎ」
頭に感じた落下感。意識を失う直前に見たのは、自分の身体が食われる光景だった。




