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ANIMA  作者: けんはる
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道の支配者

「――エース」


「エース!!」


 誰かに名前を呼ばれて、エースは目を覚ました。メアリーだった。目覚めるとそこは聖堂にある客室のベッドの上だった。


「良かった……エース、急に倒れて目を開けなかったから」


 メアリーたちは安堵した様子で胸をなでおろす。エースは【無限覇道】発動後に、気を失っていたようだ。


「まじか……俺、気を失って……そうだ! 俺今変なとこに……」


 エースを違和感が襲う。


「あれ……俺何してたんだっけ……」


 先ほどまでのことが思い出せない。砂嵐のような曖昧な記憶しかなく、そこで何を見たのかを全く覚えていない。


「記憶が曖昧になるのは、無限覇道の発動者によくある症状だ。無限覇道とはすなわち生命を乗せた道。同じ道の上に生きる生命の記憶や意識が流れてくる」


 アレンはそう説明する。同時に、自分も昔に似たような症状をよく体験したという。見たことのない景色や、この世のものとは思えない怪物と意識空間で対峙したこともあるという。

 しかしそれらの現象が起こる理由は明らかになっていない。また、意識が現実世界に戻った時に記憶が曖昧になっていたり、体験したことをはっきりと覚えていることもあるという。


「それにしても、無限覇道の才能があるとはな……」


「えぇ、無限覇道の発動者は歴史上、王や独裁者という上位階級についていることが多いです。極めればとても強力な能力ですよ」


 ミカエルの言う通り、定められたものかはたまた偶然かは分からないが、かつての【創生世界中央政府】の元首や、世界の七つの大陸で国家転覆の革命を起こさせて指導者として世界の王に君臨した【カルタ・ミヤモト】などが【無限覇道】の発動者の例として歴史に名を連ねている。


「その中でも、道の支配者は別格だ」


 ガブリエルの言う【道の支配者】という単語をどこかで見た気がする。


「道の支配者とは、無限覇道の発動者の中でその時代にただ一人、最も巨大なエネルギーを持つ者に与えられる称号のようなものだ。同時に、道の支配者とされる者は他の発動者と違い、より強力な衝撃波などの攻撃手段がある。しかし、500年近く道の支配者はこの地上に降臨していない。それにその全貌は未だに解明されておらず、歴史書を見れば理を超越した存在であることは確かだ」


 ガブリエルは本棚から古びた本をとって見せた。それは歴史書のようで、その中のガブリエルが指す一文には【時の支配者が天より与えられた力を行使し、人民を従わせ、海を怒らせて波を立て、敵国を海の下へと沈めた。】と書かれている。


「恐らく、これは道の支配者のことだな。俺たちが使うような衝撃波を海に向けて放って津波で敵国を攻撃したってとこか」


 アレンの説明にエースは驚愕する。あの衝撃波のようなもので国を沈めるほどの津波を生み出すとは。


「まぁ、そんなことよりだ。すごかったぞエース。お前は磨けば強くなる」


 アレンにそう言われ、エースは嬉しそうな顔をして立ち上がる。


「俺、強くなって戦いたい……! 俺に戦い方を教えてくれ!」


 アレンたちは快く受け入れた。


「エース、お前にはきっと剣のほうが合ってる。ガブリエル、余ってる剣はなかったか?」


「あぁ、倉庫に何本か余ってたぞ」


 エースたちは聖堂の裏にある物置のような倉庫に入る。エースはそこに並べられた埃を多少被った剣の中から、銀色の刃に革製の鞘に入れられたよく言えば普通の剣を手に取った。


「これにする」


 その剣を持って、先ほどの森の中の開けた場所に向かう。


「まだエースは無限覇道の初心者だからな。天野流はエネルギーの流れの調節など様々な技術がいる。だから剣に無限覇道を流す戦い方をマスターしよう」


 アレンの言うように天野流はとても難しい武術であり、世界で最も人口が少ない武術と言われている。その数は現在だと十人に満たないほどだ。


「剣術は俺が教えるよ」


 ガブリエルがそう言った後に、アレンは拳に黒い霧をまとわせる。


「こんな感じで剣に黒い霧をまとわせれるか?」


「えっと……ふんっ!!」


 力強く剣を握るが、黒い霧は現れない。


「力任せじゃなくて大事なのはイメージだ」


「黒い霧をまとう剣を強くイメージして、流し込むように剣を握るんだ」


 アレンの言う通りにすると、剣にわずかだが黒い霧をまとわせることができた。


「その剣は今、無限のエネルギーをまとっている。ただ、エネルギーを注ぎ続かなければすぐに霧は消えてしまうがな」


 霧が消える仕組みに関しては、有数の質量で満たされている空間に無限のエネルギーを加えると、空間上に無限エネルギーが拡散するためであるという。


「もっとだ。もっとエネルギーを流し込むんだ」


「ふー……」


 段々と霧が濃くなっていく。刀身が黒くなっていく。


「なんだ……重てぇ……」


 剣に負荷がかかって重くなっていく。剣を握るエースの手は震えている。


「エース! 剣を思いきり振ってみろ!」


「……ふん!」


 力一杯で森の木のほうに剣を振り下ろす。剣は地面に刺さった。その瞬間、剣先から地面が裂けだして巨大な谷間が生まれて木々が飲み込まれていく。


「なっ! なんだこの威力……!」


「これが無限覇道だ、エース」


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