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弱き王の物語  作者: ふるたく
2/10

姉様

×××「リオウー??」


午前の視察、機織り工場まで行こうとした途中で声を掛けられた。


その声に振り向くと、そこにはナナミ姉様がいた。


ナナミ「忙しそうね」


姉様はニコニコしている。


僕「そんなんでも無いけど」


ぶっきらぼうに答える。


別に強がる訳でも無かったが、そんな風に否定の言葉を返していた。


(実際目が回るほど忙しいわけじゃないし)


そんな僕の心を知ってか知らずか姉様は言葉を続ける。



ナナミ「そんな忙しいリオウのために」


と、勿体ぶったように少し間をおいて


ナナミ「元気の出る事教えてあげる!」


と、得意げに僕に言い放つ。

余程、、、それを聞いたら、僕が喜ぶと確信があるのだろう。

私に感謝しなさい、と胸を張っている姉様。


その態度で僕はピーンと来た。


僕「それって、、、ジョウイの事?」


ナナミ「えっ」


姉様は、"なんで知ってるの!?"と、目を見開き、口を開けて驚いた表情をする。


次に目線を落とし、


ナナミ「なんだ、、、聞いちゃったんだ、、、」


つまんないの、、と、ガッカリした顔になる。



ふふ


僕は、そのコロコロと変わる表情の変化が大好きだった。


僕「バドに聞いた」


ナナミ「えっ、んもーーー」


今度はその綺麗な顔のほっぺたを真っ赤にして丸々と膨らませる姉様。


そして眉間にシワを寄せ


ナナミ「リオウには言わないでって、私から言うからって、言ってあってたのに、、、、」


と、独り言の様に愚痴っていた


僕はふと思った。


、、、ああ、それでか。僕が聞くまでバドがジョウイの事を伝えなかった理由。


姉様に口止めされていたのか。


後々姉様に怒られているバドの困った顔が目に浮かび


僕「ごめん、僕から聞いちゃったんだ」


と、フォローしておいた。


ナナミ「んもー、そんなの関係ない!」


と、姉様の怒りは収まらない様子だ。


バドが姉様に怒られるのは避けられそうに無いな、と、僕はそこでフォローするのを諦めた。


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僕「ごめん、そろそろ行かなくちゃ」


話を切り上げようと姉様に伝える。


忙しくは無いが、暇はないのは事実だった。


ナナミ「うん、そっか、分かった」


姉様は僕の責を知っている。だから僕の仕事の邪魔を決してしない。


けど、合間を見て、元気付けてくれたり、励ましたり、僕の弱音を聞いたりして僕を陰から支えてくれている優しい人だ。


(本当の事を言えば、僕は姉様ともっと話していたいんだけど、、、)



と。




、、、あ。



しまった。



少し顔を出してしまった僕の本音。



僕はすかさず心の奥底に仕舞い込む。



、、、、、、、。



これは、誰にも気付かれてはいけない僕だけの秘密中の一つ、、、。



そう、誰にも。



ふと姉様が僕の事をじーっと見ている事に気がついた。



僕「な、なに?姉様」



姉様は少し考えたように間を開けて


僕の目を見て


ナナミ「じゃあ、最後に一つだけ!」


と、ニコッと微笑み


ナナミ「ジョウイ帰ってくるの、楽しみ?」


と、聞いてきた。



姉様は、何かを求めている。



、、、僕は、




僕「うん!」




と、心からの声を伝える。



ナナミ「そっか!良かった!」




、、、姉様は僕のその嬉しそうな顔で何かを満足したみたいだ。


ナナミ「じゃ、私が腕によりをかけてご馳走を作ってあげるからね!楽しみにしててね!」


バイバイ、と、手を振って、姉様は去っていった。



僕「、、、、、、、」



姉様を見送る。



僕「、、、、、、、、、」


僕「、、、、、、、、、」


と、そろそろ本当に行かなくちゃ。


思考が停止してしまっていたようだ。


硬直した頭に喝を入れて、僕は機織り工場まで小走りで走り出した。


その途中


(姉様が料理を作るのか、、、。ジョウイが泣いて喜びそうだな、、、)


なんて、二重の意味を掛けて未来を予測していた、、、

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