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弱き王の物語  作者: ふるたく
1/10

世界情勢と僕の役目

今から数年前、この部族に王国軍が攻めて来た。


その戦いは激しいものになり、両軍に多大な死者を出した。


多大な死者を出した王国軍は撤退を選択する。


この部族は攻め難し、と、判断したからだ。

------------------------------------------------------------


そもそも王国軍は圧倒的な戦力をもっていた。


戦いの始まる前は、その戦いは一方的なものになる、と誰しもが思っていた。


しかし蓋を開けてみれば、痛み分け。


いや、最初の戦力差を考えるとこの結果は王国軍の完全なる敗北と言えた。



、、王国軍はもう少し攻めれば部族を落とせたのではないか?


そう考える者もいる。


しかし、実際に戦った者ならば、この部族を攻めるのは困難。撤退は妥当、と考えるだろう。


、、とは言え


それは何故起きたのか?


それが問題だった。


その圧倒的な戦力差を物ともしない


その部族の力とは


一体何だったのだろう?


その答えは部族の者ならば誰もが知っている。


それは


前王の


見事な手腕によるもの、


だということを、、、、


------------------------------------------------------------

とある山の中。


この辺りを一望できる見通しの良い切り立った崖の上


にある草の広場。


パンッ!パンッ!



手を叩き、手を合わせてお辞儀をする。


目の前には墓。


とある墓の前。


死んでしまった父上の、墓。


墓の前には花瓶にささった一輪の花と水がグラスに一杯。


ちょうど10秒ほど。


僕は合わせた手を崩し、墓に背を向ける。



×××「もう、良いの?リオウ」


僕に問いかけるナナミ姉様。


リオウと呼ばれた少年「うん。さ、姉様、帰りましょう」


と、僕は笑顔で姉様に答えた。


------------------------------------------------------------


僕の名前はリオウ。


この、小さな部族の若き王だ。



三年前に父を亡くし、それ以来、僕はこの部族の王としてその役目を負っている。



今は時期が良かった。



世界は今、世界的に停戦協定、和平への道を歩み出している。


そうでなければ前王が死んで、僕が次の王として即位したその直後に、


この部族は周囲の国に攻め込まれ、滅ぼされていただろう。



この部族が、能力の無い若輩者が王になっても存続しているのは、そういう背景があったがゆえだった。


×××「王、宜しいですかな?」


と、少し考え事をしている僕の元へ、物腰静かな初老の男性が声を掛けてきた。



------------------------------------------------------------


×××「王、今日の予定を申し上げます。」


と、初老の男性、、、バドが僕に本日の予定を告げる。


バド「午前中までに視察が二つ。完成した機織り工場と兵の養成所を視察して頂きます。


次に軍事会議が12時半より開始します。2時間を予定しております。


次に15時より部族の農作物の問題についてレクチャーを受けて頂きます。これも2時間を予定しております。


次に17時半より、武王による王の鍛錬、

そして21時より、、そして22時より、、、23時より、、、、、、」


頭が痛くなりそうだった。


そして畳み掛けるように


バド「そして明日、行われる西部族王との対談の資料を合間に見て頂くようお願い致します。」


バドは至って淡々と機械的に伝えてくる。


バド「では、本日もよろしくお願い致します。」


そしていつもの様に頭を下げて、部屋を出て行こうとしたバドを、僕が引き止める。


僕「、、ああ、バド?」


バドは振り返り


バド「なんでしょうか?」


僕「予定は、分かったけど。」


バド「はい。」


僕「ジョウイからの連絡は、まだ無いの、かな?」


予定は分かったけれど、僕が知りたいのはこっちの方だった。


バドは少し何かを考える様に間を置いて、



バド「申し訳ございません。失念しておりました。ジョウイ様より、明後日の昼に着く、と連絡を頂いておりました」


と、深く頭を下げるバド。



、、バドが連絡を忘れるとは思えない。


けれど、それはあまり深くは考えなかった。何故ならバドは不道徳な行動は取らない。おそらく僕にそれを伝えるのは今でない、と判断して、僕に伝えなかったのだろう。


その理由は分からないが、知る必要も無いと考えた。


それより


ジョウイが、明後日、戻ってくる、、、、


僕はその情報だけで嬉しかった。


僕「分かった、ありがとう。今日も宜しく」


バドは、「はい」と、軽く会釈をしてから部屋を出ていった。


ふふ、明後日か、、、、、


僕は目尻を落とし、口元を緩ませながら、明日の会談の資料に目を通し始めた。



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