始まりの始まりはこっから。
ア〜ア〜ア〜!カタコトカタコト。ガサガサガサガサ!
ヒイ!な!何だ?おい、コレか?中身何だろ。やめとけ?気になるし!それにヤバいヤツだったら、動画上げたらバズるんじゃね?夏だしよぉ!
ア〜ア〜ア〜!カタコトカタコト。ガサガサガサガサ!
震えるなよ、ち、ちゃんと撮っとけよ。えー、今、えっと午前2時、歩いてると粗ごみ置き場に、ごみ袋発見!集積日を守ってない、不法投棄ですねー。他にも色々、放置されてますよ。おわ!家電もあります。
ご覧の通り、ゴミも怒っている様子です。皆さん、不法投棄はやめましょう!キリ!そうこの袋の中身は主張をしています、では。ゴクン。触ってみましょう。
ア〜ア〜ア〜!カタコトカタコト。ガサガサガサガサ!
は!箱みたいなモノが入ってます。ゴクン。あ、開けてみましょうか、、う、ゴクン。動いているし、産まれたばかりの仔猫でも、入っているのかな。放っておけば死んでしまうので、あ、開けてみたいと思います。キリ!
………、…………。
おや?静かになりました。こちらの事がわかってるんですか、ね。ゴクン。カメラ寄ってきて、か、開封します!ガサガサ……!は、箱が出てきました!えと、な!なあんだ。お人形の箱でした、かわいいめりぃちゃんってお名前です。ちょっとあちこち、破けてます、さっきの声は、お喋り人形だったとか、動く音は、ごみ置き場だし、Gでも入ってたとか、野良猫とか。アハハ、ははぁ、
………、………。
え?中身を出せって ?う、そ、そうですね。あ、アヤシイ感じはし、しません。スイッチが切れたのかな?大変静かな、な、中身です。お、おしゃべり人形って、あ!ありましたよね。えと。なんだっけ、こんにちは、一緒に、めりぃちゃんと遊んでねって、喋るのとか。あ?なんでその名前?しょうがないだろ。
これが、めりぃなんだから、
「あ?」
「ひ!」
……、あ!あ!あー!あー!あー!あぁぁぁあぁぁぁ!
ガサゴソガサゴソ、コトコトコトコト!
「ヒィィィ!」
「うわぁぁぁ!」
「で!出たぁァァァ!メリーさんだァァ!っべぇぇぇ!ヒィィィ!」
『ここから出してぇ!』
「ひ!ヒィィィ!ひぁぁぁ!さ!先に逃げるなよぉぉ!うわ!うわ!うわァァ!憑いてくるなぁぁ!!」
ボコン!アスファルトに叩きつけられた紙箱の音。
ボコン!カスス!アスファルトを何回か転がる音。
ダダダダダダ!ヒィィィ!ヤベェぇぇ、ヒィィィ!!電話かかってきたら、どうしよう!
逃げる声と音。
パパァ!キキキィ!離れた所から車のクラクション、急ブレーキの音。
箱をは大きくひしゃげて、黒の上に転がる。
シ……、ン。と静かなその場所。じ、シジ。直ぐ側に立ち、何もかも視ている様な街灯の明は静か、薄らと照らす。
放置された壊れたテレビ。
パッと元がないのに電源が入った!パッと明るく白い。
じゃじゃじゃジャァと砂嵐。声だけが流れてくる。
『は~い♡みんな元気にしてるぅ?都市伝説のアイドル、電話ノムコウ側の、メリーさんだよお!』
放り投げた拍子に蓋の口が開いていた。ぐしゃらまになった金茶の髪の毛がもぞりと動く。
『ちょっとぉ!そこのコ!ちゃんと画面の前に来てくれない?ディレクターの、貞子姉さまに怒られちゃうわよ!』
バカみたいに明るい声に反応をする、ぐしゃらまな金茶の髪の毛を持つ本体。
ごそ、ゴソ、ごそ。這い出す、ふわふわピンクのワンピースを着込んだお人形。外に出るなり、四つん這いでしばらく咳き込んでいた。
『おぇぇぇ!ゴホ!ゲホぉぉ!ふぐぇぇ!パンヤが口から出そうだよ、クソ!あの!大きいサイズ!おぼえてろ。ハイハーイ!今行きます。ふぅい!ヤッタァ!ワタシは、自由だぁぁ!』
よろよろと立ち上がり、気脈の乱れを整えると、両手を上げて丑三つ時の空に雄叫びを上げた、アヤカシとして、産まれたばかりの彼女。白い明りを放ち、ザアザァ音立てる砂嵐の前にコトコト動いて行く。
キャッキャとした声が出迎えた。
『きゃあ!みんな!驚きのニュースがあるわよ!なんと!私達のえっとぉ、何番目になるのか解らない妹、新たなる都市伝説、メリーさんがたった今、爆誕よぉ!さあ!こちらにいらっしゃい!画面に、触、れ、て』
ざぁざぁ、ジャァジャァ、白く光り四角い画面の向こうの砂嵐。言われたままに従う、産まれたばかりの彼女。
砂嵐がぐにゃりと奇妙に動きうねりを創る。白い光の色が変わる、赤い青い、黒い、黄色い、緑、パッパパッパ!砂嵐が消えて行き、何処かのチャンネルをクリアに映し出した時。
ボッフン!弾けた画面の映像、画面からグゥと、突き出された砂嵐の手のひらに、ガッツリ握られ取り込まれた、ぐしゃらま金茶の髪の毛の、かわいい♡めりぃちゃん。パンヤの身体がみちりとひしゃげる。
シュゴゴゴゴォ、引っ込む手、そして、パチン!軽い音が響いてゲロを堪える、めりぃちゃんもろとも、姿を消した。
シ……、ン。と静かなその場所。じ、シジ。直ぐ側に立ち、何もかも視ている様な街灯の明は静か、薄らと照らす。
誰も居ない、不法投棄された家電や粗ゴミが散らばる、ごみ置き場。
放置されている壊れたテレビは、シン、と黙り込み、真っ暗な画面で無口を決め込んでいた。