自由研究追い込みユウタロウ
翌朝。コンビニでシュークリームを手に入れたユウタロウ。
異界。昨夜の事で集まる面々。
「変な感じがしました!コロシニイクヨ先輩!」
ブッ!念波が途切れた時を思い出す、めりぃ。
「邪魔が入った?そんな事、あるのかなお菊先輩、どう思われますか」
「そやなぁ……、あちらさんにも、ひょっとしたら、うちらとおんなじモンが、お側にいはるのやもしれん、それは、縁あるモンや。ソレが邪魔しはったんや、なんぞ、思い当たる事ないか?」
スゥぅ……、垂直に浮かび上がる市松人形のお菊先輩。
「ええ?」
キョトンとするめりぃ。知り合いなんていたっけ?めりぃは、その他大勢の『かわいい♡めりぃ』を思い出す。
箱が歪んでいない、その他大勢。
箱が破れていたから、ワゴンの上においやられていた自分。
「あー?なんか、ヤな事思い出しました。」
「ヤな事?どんな事?もしかしてイケメン細マッチョ、ゴリマッチョを巡っての三角関係?恋の相談なら任せて!めりぃちゃん!」
ウキワクとし、身を乗り出すどすこいオネエ先輩。
「ヤ、そんな事ではなく、同じワゴンの上に、いけ好かない『クマ』がいたんです」
……、アイツも首に巻かれたリボンが『汚れあり』で、半額ワゴンにいたのにさ、私のことボロとか、ボロとか!ボロとか!
「へえ?その『くまはん』、どうなってん?」
キロリ。黒玉の目玉に光が宿るお菊先輩。
「えっと、アイツは確か買われたんだっけ、わたしの代わりに……、ハッ!男の子だった!まさか、ユ、ユウタロウ?」
――、フ。ユウタロウ殿、昨夜は、しかとこのクマゴロウが、お守りいたしましたぞ!
両親が居ない昼の時間は、リビングで過ごすユウタロウ。フローリングに腹ばいになり、数年後の自分が見たら、黒歴史として封印しそうな表紙のノートを広げ、何やら書き込んでいる。
クッションの上には、アヤカシ化を遂げたクマゴロウが、ちょこんと座っている。
「ねぇ、クマゴロウ。昼間っから、幽霊とか、妖怪とかって出るかな?」
……、ユウタロウ殿!目の前に居るでござる。
「電話かけてみようかな」
……、折り返しは、拙者が『切る』でござる。
「うーん、あ!『公園でかくれんぼ事件簿』見なくちゃ!テレビ、テレビ、お母さんいない時じゃないと、見れないもん」
ペンやノートを広げたままで、ネット接続してある『密林特別』を見る事にしたユウタロウ。
お気に入りのホラーアニメの時間。この番組は、ちょっと内容がけしからんと全国PTA連合から、要注意を受けていた。
ウキワクしながら見ているユウタロウ。頭の中では、電話かかってこないかな。期待でいっぱい。
「クマゴロウ、メリーさんって知ってる?」
……、知ってるも何も、ヤツは敵でござる。
「自由研究、仕上げたいんだ!電話かかってこないかな」
……、自由研究!それは『宿題』というモノでござるか!拙者はユウタロウ殿、側近くに控えておるので、知っているのでござる。
「これまでのことや、ヨリちゃんに教えてもらった事は、ノートにまとめたんだよ、あとは……」
……、なんと!ユウタロウ殿!まだ終わっていないでござるか!
「うーん。やっぱり夜かな?でも玄関開けて、お母さんに見つかったらうるさいし」
……、知らぬでござるが、夜のほうが、何やら力が強い気がするでござる。
「……、やっぱりお母さんに話とこ!去年だって、踏み切りについて行ってくれたんだもん!変な自由研究しないって、怒らないよね、お母さんだって、『小説家になっちゃえ』でホラー小説書いてるの、僕知ってるもんね、ヒヒ!」
ジャジャジャジャーン。続く。画面から音楽とセリフ、あー面白かった!番組を見ている間に、計画を立てたユウタロウ。
仕事が終わり帰ってきた母親に、どう言おうかな?セリフを考えながら、冷蔵庫からジュースを出すべく、そこに向かう。
中にはシュークリームがちょこんと座っている。




