ユウタロウとオカルトマニアのヨリちゃん
夏休み。それはツクツクボウシがなく頃、テレビで放送を丸一日頑張る番組の宣伝をちらほら見かけると。
終わりが近いと気付く。
「ユウ!来年、中学生だろ?夏休みは俺んちに来いよ」
ガタンゴトン、ガタンゴトン
盆休みも過ぎ日常に戻っている電車の中で、大学生の従兄弟と共に揺られているユウタロウ。
「うーん。部活って休みあるの?」
「あるよ。何?野球とか?」
「まだ決めてない!」
ガタンゴトン、ガタンゴトン
「ふーん」
「ヨリちゃんはなに部?」
「んあ?こう見えても、中高野球部だぞ。そんなに強くなかったけど。遅くまで練習あるのが気に入ったんだ。自主トレで走り込みもあっけど、そのついでに心霊スポット巡り出来っから、夜出ても叱られない」
「へえ?なんで?」
「ユニフォーム来て走るんだよ。頑張ってね!とは言われるが、叱られはしない。普通にホロホロ出てたら駄目だろ?」
ガタンゴトン、ガタンゴトン
ろくでもない事を教えている従兄弟。
ろくでもない事を決意するユウタロウ。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
「ヨリちゃんのおかげて宿題終わった、ありがとう」
「いいって、それで全部?」
「うん、工作はお母さんと『こども館』に行くんだ、あと、えーと。あ!自由研究」
ユウタロウは指折り数えて思い出した。
……!忘れてたし!
「自由研究って、キッド買ってきてやるやつだろ?」
「ううん、僕は毎年自分で考えてやってる。お母さんや、先生からやり直し言われる事あるけど」
「は?やり直し?なんで」
「研究発表会でそれはダメって言わるんだ、その時はキッドで済ませるけど、つまんないもん!」
ガタンゴトン、ガタンゴトン
「どんな自由研究やってんだ?」
興味を惹かれた彼は問いかけた。ユウタロウは去年は『どすこいオネエの捜索隊』、今年の『メリーさん観察日記』を話した。
「へぇぇ!面白いことやってる、そうだ!これやるよ」
足元に置いたデイパックの中から、ゴソゴソ取り出したのは小振りなデジタルカメラ。
「ええ!いいの?ヨリちゃん」
「携帯あるからな、部屋には一眼レフもあるし、そうか、ククク。『メリーさん』ね」
「うん。でもこれから先、どうやってまとめようかなって」
「そうだな……、うーん。あ!そろそろつくぞ、忘れ物するなよ」
ガタタン、ガタンゴトン、ガタタン、ガタンゴトン
ガタタン、ガタタン、ゴトン、ゴゴキィィィ、シュゥゥゥ、ガタガタ
タッ!ブ。シュゥゥゥ。
開かれたドア。
「俺、こっから一度出て私鉄に乗り換えだけど、ユウはバスだろ、一人で大丈夫か?」
「うん、一人で大丈夫」
ザワザワとした中を歩く二人。
「コンビニ、時間あるか?ユウ。喉乾いたし、腹減った」
「うん、大丈夫」
ステーションに入っているコンビニ。適当にカゴに放り込む従兄弟について歩くユウタロウ。
会計を済ませると、イートインスペースで、デイパックに品物を入れると、残りが入ったレジ袋をユウタロウに渡す従兄弟。
「帰って食べろよ、ジュースはここで飲んでもいいし」
「わあ。ありがとう!帰って食べる」
「だけど、シュークリームは食うなよ」
ペットボトルのキャップをねじり開けながら、教えるオカルトマニアのヨリちゃん。
「なんで?」
「使い方を教えてやる」
ゴクン。微炭酸のそれをひとくち飲み込むと、何かをヒソヒソ教えるオカルトマニアの従兄弟。
「うん、うん!へぇぇぇ!そうなの!それでそれで?ウンウン、デジカメ……、わかった!やってみる!」
自由研究の追い込みが始まる!




