めりぃちゃん三度電話をしてみたら!
うん。……、……、そう。友人の話なんだけどね。彼女、歩いてたの、悔しくて悔しくて、めちゃめちゃにしたい!って、合鍵をポストに入れに行く道を歩いてたの。
時間を見ようと、携帯を開いたらね。
……、ポーン、ピッピッピッ……
時報みたいな音が、耳の中に入ってきたんだって。
辺りを見渡しても誰もいない。本当なら怖いけど、三股かけられて棄てられていたからか、ちっとも怖くなかったって。
……、ポーン、ピッピッピッ……
……、ポーン、ピッピッピッ……
そのリズムに乗り、夜なのにイルミネーションで、バカみたいに明るい表参道を歩いていたら。
『上手くツカエヨ、消えゆくサービス、時報サービスからのプレゼントさ。ピッピッピッ』
って、資産家の独り息子。あるあるな女ったらし、昨日までの彼氏が住んでるマンション前に辿り着くと、そう『時報サービス』の声が聴こえたんだって。
……、……、……、クスクス。
ああ、ごめん。何でもない。どうでもいいけれどねって……、まさかのまさか?鍵返した?いつ。一昨日?へえ……。ううん、何でもない。
そっかぁ。悪いヤツだよね。ホント。ん?続き?そう、彼。ね。今、自宅に連れ戻されているんだって。そうそう、ガチガチに厳しいあの家にね。て。噂。
なぜって?それは……。
友人がラストに合鍵を使ったの。彼、不意に入った、一週間の海外出張だから、身辺整理出来てなかったのね。
彼女に鍵を部屋のポストに入れて置いてね。終わりだから。それだけしか残せなかったの。ユリと一緒かぁ……。
……、……、……、フフフフ。
ああ。ごめん。それで?
うふふ。それからね。部屋に入って、
……、ポーン、ピッピッピッ……
……、ポーン、ピッピッピッ……
呟きながら、彼の両親が設置していた固定電話の留守電を切ると、ググって調べてある場所に繋ぐと。
トークをオンにしたまま、部屋を出たんだって。
どこに?んー?国際電話回線のある番号にね。閃いたのは『時報くん』のおかげ……、!、だったそうよ!
ヤツも馬鹿よねー。コンシェルジュのいるマンションに、親に言われた通り住んでれば、通話料払わなくても……。
あ!コレはあくまでウワサなの。
――「家庭における固定電話の立ち位置、今ではもう寂しい立場に追いやられているのさ……、そのサービスのオレたちもね」
「時報サービス先輩。なんですか?そのサービスとか、留守電とか、トークとか?」
「電話機器の性能なのだ。でも上手く使えば、恐怖を与えられる留守電機能なのだ!」
『只今、留守にしております……』
無機質な音声に撃沈しためりぃは、通信機器に詳しいという『時報サービス』先輩から、対策方法を学んでいる真っ最中。
「はいはーい!どうやって?使うのですか?」
「うむ。めげずにピー音の後、メッセージとやらを残すのだ。それも永遠にな。力の続く限り、同じ言葉を残すのだ!ピッピッピッ、人間がペカチカ光るお知らせに気が付き、受話器をオンにすると……」
「同じ言葉がずーと入ってる!凄いのです!『時報サービス』先輩!」
突如開いた、明るい未来にパンヤが、モコモコ膨れ上がるめりぃ。髪がそれに反応し、うねうねダンスを始める。
「か!かけてみます!今、丁度良い時間です!」
「おう!やれ!めりぃちゃん!」
時報サービスに見守られ、ユウタロウの家電にアクセスをしためりぃ。
ブ!プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロプロロロロ……
「ふえ?只今が出ない?何で?」
「もしかして、留守機能を切ってるのやもしれぬ、誰がが居るときはオフにする家もある」
プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ……
プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ……
ピロロロ、ピロロロ、ピロロロ、ピロロロ
「あー?ハイハイ。え?誰?知らない番号だし……、ナンバーディスプレイにしてて良かったわ。きっとセールスね。しつこいったらありゃしない。呼び出し音、オフっと。固定電話、ユウタロウが携帯持ったら解約したいんだけどな」
ネットと一緒なのよねー。ユウタロウの母親が休日の午後を利用し祖父宅迄送って行き戻ってきた、黄昏の時間、逢魔が時。
………、………、………、………、………、
「さっ、今日はお父さんから、お寿司もらってるのよね。晩御飯これでいいか。ビールと枝豆チンして」
プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ、プロロロロ……
ふえん。出ない、時報サービス先輩なんで?
嘆くめりぃに、ああ!と時報サービス先輩の声。
「ナンバーディスプレイという、登録番号じゃ無いソレには出ない人間もいる……」
ブチン、ツーツー。ふぇぇん。
頑張れめりぃ!




