ユウタロウとクマゴロウさん、忘れらている、めりぃちゃん
ユウタロウがおうちキャンプで毛布にくるまり、懐中電灯片手に親友コウタと盛り上がった、怪談話の最中にうまれた疑問。
……、あれ?メリーさんって、棄てたお人形とか、無くしたそれだよな、僕『クマゴロウさん』は持っているけど、お人形ってないぞ?
早速帰宅をしてから、ノートにそれを書く。
「宿題?何してるの?」
「自由研究、ヒヒ」
ウキウキとしながら、ページを埋めている息子に若干の不安を持つ母親。
……、何を選んだのかしら。変なテーマ考えるのよね。そりゃ私が趣味で書いている、『ちょっぴりこわ〜いお話』を小さい頃から読み聞かせしてきたのが、失敗だったと思ってるけれど。
「ん!見ないでよ」
「はいはい。あ、そうだ。クマゴロウさん、『ぬいぐるみの病院』から帰ってくるって」
「ほんと?きれいになったかなあ!」
「ちっちゃい頃から持ってて、ボロボロだったもんね、結構高かったわよ。お誕生日プレゼント、何にする?って聞いたら、クマゴロウさんの復活だったなんて、お父さんもズッコケてた」
カチャカチャ、母親は冷えた麦茶をリビングで宿題をしている、息子に運ぶ。
「ネットで、宣伝みたんだ!あ!お母さん、僕、お人形さんって買ってもらってないよね」
「お人形さん?無いわね。クマゴロウさんだけだったんじゃない?あとにも先にも……」
ぼんやりと、半額だったのよね。と、過去を思い出す母親。彼女の中ではめりぃの存在は、既に消えて無くなっていた。
「ふーん。まあいいや、デジカメって何処にあるの?自由研究で使いたい、今年は完璧なる研究になるんだ、ウククク」
「デジカメ?何処にしまったかな、去年使ったきりよね。わかった探しとく。ああ、そうそう、それと宿題、ちゃんと持っていきなさいよ、よりちゃん戻ってるんだって、みてもらいなさい」
えー、わかった。麦茶をゴクゴク飲む息子の自由研究に対する熱意に、簡単に出来る自由研究キッドを買っておこうと、心に決めた母親。
……、毎年毎年、オカルト研究を自由研究に選ぶのはいいけれど、先生に怒られちゃうのよね。まぁ、ごくたまに面白いと言ってくれる先生もいらっしゃるけれど、今年は大丈夫かしら。
「はぁ、去年は『二丁目のどすこいおネエさん』。写真に撮れなかったけど……、今年は一体、何なの?」
――、某街にある踏切。なんの変哲もないのだが、オカルト好きの中では、心霊スポットとして少しばかり、
有名な場所。
星の光さえもなく、夜空にはもくもくとした雲が広がっている天候の日が、視るには良いとされている。
カンカンカンカン、カンカンカンカン
「あー!回送かよ、マズ、ここって出る噂あったよな」
キョロつく原付きバイクの彼。彼女の家でイチャコラした帰り道の事。
「明日休みだったら泊まれたのに……、チッ!え?」
カンカンカンカン、カンカンカンカン
ピロリロリロリロ♪着信音
カンカンカンカン、カンカンカンカン
「何?今踏み切り、ん、ん?はぁ?撮れって?なら切るわ」
オカルト好きな彼女から、タイミングを合わせたような連絡。
カンカンカンカン、カンカンカンカン
「ヤベ!電車来るし!えっとタイミングを合わせて。……、……、! 撮ったどぉぉ!」
ガタンゴトンガタンゴトン、ガタンゴトンガタンゴトン
先頭車両が踏み切り内に入る瞬間のフォトを、かろうじて撮り終えた彼。通り過ぎる車両、開く踏み切り。
「どすこいおネエが写るんだよな、どすこーい!て車両に向って、しこ踏んだ後、車両を止めようとする『二丁目のどすこいおネエ』」
彼もまた好きな都市伝説の世界。上手く撮れてたらインスタに上げようと、連写したフォトを開いて見たのだが。
「写ってねー!帰ろ、仕事だし」
ブロロロロ、アパートへ戻った彼。
「何か汗かいたし、シャワー浴びよ」
深夜、携帯をベッドの上にぽいっと投げおくと、シャワーを浴びる一人暮らし。しばらく。チカチカ、チカチカ、光る画面の携帯。
タオルで頭をクシャクシャ、もじゃもじゃ拭いている、短パンにタンクトップ姿の彼。
ちょっと呑んで寝ようと、冷蔵庫に向かい缶ビールを取り出そうとした時。
カンカンカンカン、カンカンカンカン
踏み切りのソレ。
カンカンカンカン、カンカンカンカン
「は?動画撮った?て?は?」
軽くパニックになりつつ、振り向きベッドの上を見ると、ブルーライトの光が長方形に立ち昇る。
「はひ?お?おネエさま?え?どうして?はい?何で部屋の電気が切れるの?えええ?」
カンカンカンカン、カンカンカンカン
ソレはBGM。真っ暗になった彼の部屋。ベッドの上に姿を現した、『二丁目のどすこいおネエ』
「んふふふ♡あ、た、り!坊やのお部屋!んふふふ。こう見えても、ワタシ『青少年保護育成条例』は守ってるの♡さあ!どすこーい!どすこーい!」
ベッドの上でシコを踏み始めた『二丁目どすこいおネエ』
「は!はひ?」
「ワタシに、相撲で勝ったら!よーし!負けたら」
フフフフ。赤い唇が妖艶に微笑む。
――、「エグ。エッエッ!なんですか?コロシニイクヨ先輩、留守番電話って!」
「詳しくは知らないが、私達メリーさん一族にとって、鬼門とも言える相手。そうか、携帯電話はないのか?他の番号は思い浮かばない?」
うーん、……。しばらく探るめりぃ。ブンブン、頭を左右に振ると金茶の髪もそれに習う。
「無い」
「クソぉ!流石は『あべのせいめい』を名乗るクソガキ!」
なかなかやるわね。二人の会話に入る、二丁目どすこいおネエ先輩。
「困ったわね。敵はなかなかやる男、何歳なの?彼」
こっちに連絡してくる位なら、オカルト好きでしょ、踏み切りに来てくれさえすれば、力を貸せるのだけど……、
二丁目どすこいおネエ先輩が、めりぃに問いかけた。
「えっと……、小学生だろうって話です」
「小学生!ちょっと小学生相手には……、残念。めりぃちゃん!頑張るのよ!三度目の正直という言葉があるの!大丈夫!次はきっと上手くいくわ、あ!そうだ」
オマジナイをしてあげましょ!二丁目どすこい女先輩が、ポンッ、手の中に真っ赤なルージュを出してきた。
「オンナは度胸!真っ赤な唇はパワーをくれるの……、ん!これでいいわ♡カワイイ♡」
スッ……、めりぃのかさかさな唇に、ルージュを引いた、二丁目どすこいおネエ先輩。
「ふえ!力が湧いてきました!二丁目どすこいおネエ先輩!ありがとうございます!三度目の正直……、はい!頑張ってみます!ちょっと砂浜で走り込まなくちゃ!負けない!」
フォォォォォ!気合いを入れるめりぃ!自己練習の為に、何時もの砂浜へと向かった。
一方。
「お母さん、部屋だと独りぼっちになるから、リビングのソファーに置いておいて、帰ったらもふもふするんだ」
「ハイハイ、配送が遅れて残念ね。帰ったら思う存分、再会をして頂戴、おじいちゃんとおばあちゃんによろしく、よりちゃんに宿題みてもらうのよ」
夏休みあるある。ターゲットは、田舎のおじいちゃんの家に向かう準備をしている。
どうなるめりぃ!
二丁目どすこいおネエ先輩は、私の創作ですー。こういった話を考えるのは面白いです♡




