表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

めりぃちゃん!二度目の電話をする

 金茶の髪が少しばかり焼け溶け、ボロボロになっためりぃ。『タクシーのお客さん』先輩が、えーん、えーんと泣いている彼女に、そんな泣き声では駄目だ!と喝を入れた。


「めりぃちゃん、泣き声がだめです。ひゅひゅひゅひゅひゅ………、息を細かく吸い込み、か細く啜り泣く様な声が良い」


「ふえ、えっえっ……、タクシーのお客さん先輩。先輩はどこで泣いてるのですか?」




 ――、真か嘘か。S話時代に某場所にある電話ボックスの前を、深夜に通り過ぎてはいけない。回り道をした方がいい。そんな噂がタクシー運転手の間で流れていた。


「あー!しまった!左折しちまった……、チッ、次右折するか……」


 帰り道、空車。明日の馬番を何にしようかと考えながら、ハンドルを握っていた彼。うっかり昼間の感覚で、ある交差点を左折をしてしまった。


「社に戻るのはこの道なんだよな、このまま真っ直ぐ行けば近いんだよ。昼間はそうしているんだから。わざわざ電話ボックスを避ける為に道一本、回るのはめんどくさい」


 キッ。交差点で停まる。ウィンカーを出そうとすると。


「雨かよ……、」 


 ヴィンッ、クッ、シャッ、シャッ、ヴィン、クッ……、ワイパーを動かす彼、雨脚は一気に激しくなる。


「あー!サッと、通り過ぎたらいいか」


 パッ!青信号。そのまま直進をしたタクシー。しばらく進むと市民公園前、例の電話ボックスが、ぽつねんと建っている場所へとさしがかる。


 グンッ。アクセルを踏み込む運転手。


 ジャッ!ジャッ!シュバッ、シュバッ!忙しく動くワイパー、外は豪雨になっていた。


 ……、もうすぐ?あ……、見えた。電話ボックス。このまま通り過ぎれば。


 この時間、突然の豪雨、大丈夫だろうとスピードを上げ、市民公園前をジャッ!水飛沫を派手に立て、通り過ぎた運転手。


「ふぅ、電話ボックス……、ん?」


 ミラーで遠ざかる電話ボックスを確認をした彼。止まぬ雨、ワイパーの音、そして。 


 ひゅひゅひゅひゅひゅ………。


 シュッバ、シュッバ、シュッバ。ワイパーの音に紛れて聴こえる、啜り泣く様な声……。


「ヒッ!空車だよな、あ?いつの間に」


 カタンと倒され、乗車になっているタクシー。


 ひゅひゅひゅひゅひゅ………、ひゅひゅひゅひゅひゅ………。


 どうしよう、なんかお客様がいる。いつ乗せたんだ?いつ!


 運転手は生唾を飲み込むと、カチカチ歯の音を立てながら、お客様、どちらまでと、声を掛けた。




「電話口で、いきなり泣いてもいいんですか?」


 相手が怖がっていない事を、思い出しためりぃちゃん。


「いいと思うけどね、泣きながら名を名乗るのも、これまた新しい手口」


 タクシーのお客さん先輩は恐怖を与えるのには、日々の創意工夫よ、めりぃちゃんと、落ち込む彼女を励ました。


「創意工夫!いいかもしんない。頑張ります!タクシーのお客さん先輩!」


 そろそろ良い時間だし、コンタクトを取ります!めりぃは、二度目の念波を彼に送ったのだが。



 プルルル、プルルル、プルルル、プルルル、ガチャ。



「……、ひゅひゅひゅひゅひゅ、えっ、えっ、わたしメリーさん……」


「……、ジー。只今留守にしております、御用のある方はメッセージをお願いいたします」


 はう?どういうこと?


 めりぃは目が点になる。繰り返す音声。



 ユウタロウはどうしたのか。一時間前に話は戻る。彼はスイミングスクールから帰ると、母親の携帯電話に連絡をしていた。


「……、はいもしもし?どうしたの?何かあった?プールだったんでしょ」


「ごめんなさい、でもね、コウタがおうちキャンプするから来ないかって、誘われて迎えに来てくれるの、行ってもいい?」


 そう、ターゲットは留守だった。


「……、ジー。只今留守にしております、御用のある方はメッセージをお願いいたします」


 繰り返す無機質な音声。めりぃは敗北感でいっぱいになり……。


 ガチャン。何も残すことなく、念波を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] めりぃちゃん……! 頑張れ……! タクシーのお客さん、懐かしいですねー。 これは今でもあれば怖い気がしますが、昔と違って夜中に流してるタクシーって少ないのがネックですかね。
[一言] タクシーのお客さん先輩www 凄い名前www そしてユウタロウのファインプレーがとどまることを知らないwww めりぃちゃんがんばえー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ