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3話目 ハレー彗星

 私は宇宙人と交信している。


 その宇宙人は単なる地球人であり、単なる宇宙バカだ。知ってはいたけど、間違いなく宇宙バカだと断言できる。元々間違いメールから始まったその交信は、半年ごとの本当にたまにある繋がりだった。

 宇宙人は、私にとっては遠いところにいる誰かでしかなかった。それが何の因果か私が入学した大学に宇宙人がいたのだ。しばらくはその宇宙人との月一くらいの頻度の時折の交信を楽しんでいただけだけど、これまた何の因果か、宇宙人と遭遇することになってしまった。完全に巻き込まれた形で。


 でも、その宇宙人とはまだお互いにきちんと名乗ったこともないので、宇宙人には私がその交信の相手だとはばれてはいない。宇宙人とは勉強の話しかしたことはないので、ばれる要素もない。ばらす必要も感じないので、きっとずっとそのままだと思う。

 直接話すようになってからも、私は宇宙人と交信を続けるつもりでいる。間違いなくまた何かのタイミングで、私は宇宙人にメールをするだろうと思うからだ。宇宙人本体との接触は、宇宙人との触れあいと言うよりは人間同士の関りでしかなくて、宇宙人と交信する楽しみを産み出してはくれないから。

 やっぱり、第三者的な立場から宇宙人とその友達のやり取りを眺めていたいだけなのだ。


 そう思ってるから、そのお願いにあっさりと頷けるのだ。


「ちょっとみゃー! 先輩たちに確認しないと駄目でしょ!」


 男の娘が私の服を引っ張る。


「え? 大丈夫じゃない?」


 何しろ男ばかりだとむさいから、と勉強会に私の参入を推したのは宇宙人の友達だ。私から他の女子に変わったとしても、宇宙人の友達はきっと気にもしないだろう。何しろあの人は親切な人だ。困っている後輩を無下にはすまい。


「大丈夫じゃないでしょ!」

「大丈夫だって」

八代やしろくん、田崎さん大丈夫だって言ってくれてるし、私のこと先輩に紹介してよ」


 クラスメイトの言葉に、途端に、男の娘の表情が険しくなる。男子にしか見えなくなるんだけど、いいんだろうか。


「嫌だ。先輩に関わりたいなら自分で話しかけなよ」

「違うって! 私も勉強教えてほしいだけなの!」


 いやいやいや。そんなに純粋な理由じゃないのは、知ってますけどね。

 三つも上だと同級生に比べれば落ち着いた大人に見えるし? 地味だけど眼鏡が似合ってて私はタイプだな? だっけ?

 私に聞こえるように言ってたのは、きっとわざとだと思うんだけどね? どっちも眼鏡で地味なタイプだと思われるため、どちらを狙っているのかは知らないが、私を巻き込むのはやめてほしい。本気で。ついでに勉強会から抜けられるなら万々歳だと、私は早々にその席を明け渡すことにしたわけだけど、予想外に男の娘が抵抗してきた。


「みゃーだって、先輩との勉強はためになるって言ってたでしょ!」

「確かに言ったけどね。私が聞いてる話って、授業をもっと掘り下げた話だから。テストには出ないよ」


 男の娘に勉強を教えているのは宇宙人の友達で、私はそれを横で聞いてる形だ。宇宙人はあれだ、アドバイザー的な感じでただいるだけなのだけど、まあお人好しだと思う。

 話を聞いていた男の娘が宇宙人の友達に質問する形になっていて、私が誰に言うつもりでもなくついポロリとこぼした疑問は、それを静かに聞いている宇宙人に拾われてしまう。そして、私が授業の内容を結構理解しているせいなのか、宇宙人はどんどん話を掘り下げていく。ああ、宇宙人って本当に宇宙バカなんだな、ってすごく実感するのはその時だ。すごく嬉しそうに楽しそうに宇宙の話をする人に久しぶりに会ったな、と思う。


「ね、八代君」


 クラスメイトが、ほら、と言わんばかりの表情で男の娘に期待に満ちた目を向ける。


「知らない。自分でやって」


 男の娘はふいと視線を外して、見るものもないだろうに頬杖をついて窓の外を見た。


「えー。じゃ、田崎さん?」


 まあ、予想はついたことだけど、私が彼女の思い通りに動く必要もないわけで。


「知らない。どうぞご自由に」


 私は今から始まる予定の勉強会に参加する必要もなくなったわけだし、と立ち上がる。


「ちょっとみゃー!」


 男の娘が私を呼び止めるけど、私はひらひらと手を振ってその場を後にした。あとはどうぞご自由に。


「ちょっと、みゃー!」


 すばやく男の娘に私の手をつかまれて、やれやれ、と思う。


「悪いけど、彼女のこと苦手。多分私が何と言おうと彼女はあそこからのけないと思うし、私は勉強会の必要性を感じないから、一抜けさせて。悪いね」


 ぼそりと男の娘に説明すると、男の娘は悔しそうに唇をかんで、でも私の手を離してくれた。まあ、男の娘も彼女がここ数日、同じ教室にいるとこれ見よがしに私に向けたメッセージを発していたのを知っているからだろう。

 ……あれは、私だけにでもなかったのかもしれないけど、少なくとも男の娘は恋のライバルにはカウントされてないと思うし、やっぱり一応女子である私に向けられたものだろう。盛大な勘違いだけどね。

 手を離されて、私はほっとして学食を出る。


 すっかり梅雨が終わった外は、うるさいぐらいのセミの声と、じりじりと照り付ける太陽と、むわんとした肌にまとわりつく暑さで、ほっとした気分はしりすぼみになる。

 まあ、これでいいだろう。

 既に顔は割れてしまっているから、宇宙人と会えば挨拶は必要になるだろうけど、特に雑談らしい雑談をした記憶もないわけで、今の勉強会以上の付き合いになることもないだろう。また元のように遠くから宇宙人を観察する立場に戻れるわけだ。




 はて、私はなぜ彼女に睨まれるんでしょうか。

 翌日、一限目だと言うこともあってクーラーの効きが微妙なのにがっかりしつつ席に着くと、視線を感じた。女子の集団から視線が向けられていて、彼女から睨まれている。大方、宇宙人またはその友達と上手く関係を作れなかったのを逆恨みされていると見た。

 何て面倒な。ただでさえ苦手なのに更に目の敵にされるなど……ま、いいか。特に彼女らと関わるつもりもないわけで、嫌われようが逆恨みされようが私の人生には関係ない。


 だけど、一言ぐらいは宇宙人たちにモノ申してもいいだろう。私のメールをよく知っているらしい宇宙人の友達にも一緒に八つ当たりできるだろうし。私は迷わず宇宙人に向けてブラックホールの画像を添付した。『こちらへどうぞ』だ。

 ああ、久しぶりに八つ当たりしたな。やっぱり反応が見えないと八つ当たりが簡単にできる、というとてもどうでもいい事実をテスト前に知る。勿論、テストには出ません!




 テストが終わって答案用紙が回収されてからスマホを見ると、宇宙人から返信があった。

 添付されている画像は、ハレー彗星だ。『これを追いかけないといけないから、また今度』うまく逃げたな。七十六年後のまた今度って、本当にまた今度になるんだろうか。宇宙人の寿命ならほんのちょっとの期間なのかもしれないけど、人間は割とレアだよ。


「ハレー彗星?」


 その声に見上げると、男の娘が通路に立っていた。今日もぶれずに女装している。格好だけならTシャツにジーンズの私よりも女子力は高いだろう。


「何?」


 私はスマホをバックに突っ込む。


「勉強会、次は行くよね?」

「もう行かない。一人で行きなよ」

「行こうよ。もう来ないと思うし」


 誰が、なんて言われなくても分かる。


「先輩方はご機嫌麗しく?」

「いや、相手にしてなかった。ものすごくスカッとするぐらいに」

「一応勉強したい体じゃなかったっけ?」


 彼女は少なくとも私の前ではそう熱弁してたじゃないか。


「全然勉強したい体ではなかったよ。黙れってシロー先輩に睨まれてた」


 おお! 普遍的に親切だと思っていた宇宙人の友達から睨まれるなんて、そうそうないよ。レアだね。彼女はレアを引いたね!


「それは見たかった!」


 私の声が弾んだのが分かったんだろう、男の娘が目を細めた。


「面白くもなんともないからね。本当に迷惑だったんだけど」

「私のせいじゃなくない?」

「みゃーが帰るのも悪い!」

「だって、ねぇ。私は別に勉強会を必要とはしてないからねぇ」


 首をかしげて見せると、男の娘が気まずそうに目を逸らした。そうだろうね。私は最初から嫌だって言ったのに、巻き込んだのは自分だもんね。


「ま、次からも行かないから。先輩方にはよろしく言っといて」

「行こうよ」

「ヤダね。逆恨みもなかなか嫌なもんだよ?」


 肩をすくめて見れば、私が教室に入ってきたときに彼女らから睨まれたのは知っていたんだろう。男の娘がため息をついて諦めた。




「勉強する気がない人間に勉強教えるほど俺は暇じゃない」


 声を掛けられて、ビクリとする。

 学部の掲示板で新しいお知らせがないかと眺めてただけから、完全に宇宙人に遭遇するとか思ってない。それに、今のところ学部棟では宇宙人やその友達に遭遇した記憶はなかったからだ。


「こ……んにちは」


 でも会えば挨拶くらいはと思っていたのを思い出して、今の時間にふさわしいだろう 挨拶を捻り出せば、宇宙人は目を細めた。

 もしかしたら今からビームを当てられるかもしれないと思えるような剣呑な雰囲気だ。


「何が苦手だから一抜けだ。あんな輩、俺らだって好きじゃねーし。あいつ最悪」


 どうやら私が彼女にOKしたのが大分不満と見える。言葉遣いが知り合い程度の後輩向けからは逸脱している。


「いえ……むさいのは嫌だって言ってたから、代わっても大丈夫かな、と」

「勉強する気がないのはお断りだ」


 なるほど、下心があってももっと勉強熱心だったら許されたのかもしれない。


「次の人選は気を付けます」


 あのグループ以外にはもう一グループしか女子はいないけど、それに当てはまりそうな人がいるといいな。


「あほか。人選なんか必要ないだろ」

「……あ、じゃあむさくても大丈夫になったんですね」

「自分が来るんだろ」


 ちなみに宇宙人からみゃーと呼ばれたことはない。みゃーと口にはしたくないんだと思う。宇宙人の友達が呼んでるのすらぎょっとして見ていたし。私だって嫌なんだから呼ぶ方だって普通は恥ずかしいはずだ。

で、何やらおかしい話でないかい?


「私には勉強会は必要ないかなー、と思ってるんですけど」


 私の返事に、宇宙人が瞬きをする。


「ものすごく勉強になってるだろ?」


 確かに私は宇宙人の話に食いついている自覚はある。だがしかし、だ。


「あれは、今やる勉強の範疇じゃありませんよ。一年であんなこと勉強しませんもん」

「は?」


 宇宙人は何を言ってるんだと言いたげだけども、私は間違ってないよ?


「先輩がどこかで習ったとしたら、二年か三年でだと思います。面白いから聞いてますけど、昨日のテストには一切出てませんから」

「……なら言えよ」

「楽しそうに話してるし、私も聞いてて楽しいので腰を折る必要性はないかと」

「……俺が教えたのって……」


 恐る恐る尋ねてきますね! 宇宙人なのに恐ろしいこともあるんですね! 多分予想は間違ってませんよ!


「一年のテスト対策と言うならば、ほぼ蛇足です!」

「……マジかよ」

「マジですよ。でも大丈夫です。将来的な知識の蓄えにはなってますから」


 宇宙人ドンマイ! にっこり笑って宇宙人に大丈夫だアピールしたのに、宇宙人は両手で顔をおおった。


「滅茶苦茶熱弁したのに恥ずかしい」


 そうか。宇宙人も照れるんだな。


「先輩大丈夫ですよ! 生きていればそんなこともあります!」

「何か塩塗り込まれてる気分」

「えーっと、塗り込んでるつもりです!」

「ちょい、それ先輩に……」

「先輩、美少女が男子たちに絡まれてます!」


 私は今視界に入った情報を宇宙人に伝えてみる。


「は?」


 そう言いつつも私の視線の先を追いかける宇宙人に、割りと人間らしいな、と思う。……まあ宇宙人も人間なわけなんだけど。


「どこに?」


 宇宙人が疑問を持った顔で私を振り返るから、私は外を指し示す。


「あそこです」

「俺にはあれが美少女には見えない」


 そうかもしれないが、優しい先輩として美少女認定してやってくれ。


「本人は多分そのつもりです!」

「自分だって美少女認定してないだろ!」


 まあ男の娘だからね。遠目には女子に見えるのに、宇宙人にはすぐに誰かばれたらしい。


「いやそれよりも、絡まれてます!」


 多分あれ、理学部じゃない人間だと思う。理学部で男の娘に絡みたがった人間は早々に絡んでいたから、今絡んでるのは今更感もあるし。面白半分に男の娘に絡みに来たんだろう。他の学部もテスト期間中だろうに、お暇なことだ。


「……俺関係する?」

「その細い腕にさほど期待はしてませんが、先輩の威厳ってやつで蹴散らしてやってください」

「何気にひどいな」

「知ってます! では、GO!」

「犬じゃないし。先輩の扱いが酷すぎるぞ」


 そうため息をつきつつも、男の娘に向かって進み出す宇宙人は、やはり生粋の巻き込まれ系お人好しだ。


「もし相手が引かなかったら、逃げるしかないか?」


 私に確認を取ってくる内容がなよっちいです! でもきっと世間一般ではそれが普通か。


「えーっと、どちらかと言えばタケノシンの方を押さえてほしいんですよ」

「は?」

「あんななりして空手か何かの有段者っぽくって、相手のしちゃうんです」


 男の娘が女装してきた後にあったクラスコンパの後そんなことが起こった。のされた本人は屈辱だったみたいで酔って電柱に戦いを挑んだと言っていたけど。無機物に倒される方が男の娘に倒されるよりプライドが保たれたらしい。

 まあ、その事実を知っているのがそいつと男の娘と私の三人しかいないのだから、そんなことも簡単にできるだろう。下手したらのされた方には私の存在すら気付かれてないかもしれない。男の娘とは目が合ったから知らないわけがない。


「馬鹿、それ早く言え!」


 早歩きだった宇宙人はダッシュになる。私はそれを追いかける。


「あいつ何で女装してるんだ?」


 至極当たり前に誰もが持ちそうなその疑問を私に向けられて、私も困る。


「知りません」


 そんな細かく深くなるかもしれない話など、男の娘としたことはない。


「友達だろう」

「友達じゃありませんし、興味半分で話を聞くほど悪趣味でもありません」


 は? と驚いた宇宙人の顔が私に向く。


「なら何で一緒に……」

「お忘れですか。シロー先輩がタケノシンに声かけたきっかけ」


 んん? と宇宙人が悩んだ表情のまま男の娘の後ろに到着する。

 外に出ると日差しが照り付けて、さっきまで程よく冷えていた体が溶け出しそうだ。こんな暑い中こんなくだらないことをするなんて、本当に暇人だな。


「何だよ、ヒーローの登場か?!」


 一人が面白そうに宇宙人をからかう。その言葉にゲラゲラと周りの男子たちが笑い出す。


「ヒーローではないけど、保護者みたいなものかな」


 ふぅ、と冷たい声で宇宙人がため息をつくと、たぶん私と同い年くらいの男子たちが、びくりと体を揺らす。三つ違うだけで、やっぱり大人な感じするよね! わかるわかるよ! ほら、去るが良い!


「俺らはこいつに用事があるだけだから、保護者なんて出番じゃないんだよ!」


 ああ、弱い犬ほど吠えるって言うけど、たぶんこいつが一番弱そう。吠えてきた一人に、他の男子が迷惑そうに顔をしかめる。男の娘をからかうだけのつもりが、明らかに学年が上の保護者なる人間が出てきて厄介になったんだろう。


「行こうぜ」


 ひそひそと一人を除いて小さい声で囁いたり目配せしたり。さっさと去るが良い!


「お前も来いよ」


 うるさい犬が男の娘の腕をつかむ。ああ、辞めて欲しいなぁ。眠れる獅子を起こすでない!


「どう見てもいじめにしか見えないんだけど、大学のハラスメント委員会に訴えればいいかな?」

「ち……がう! 俺は……!」


 行こうぜ、とうるさい犬を引っ張る男子が居て、うるさい犬は忌々しそうに舌打ちすると男の娘の腕を離した。さすが、宇宙人。さすが年の功。


「大丈夫なのに」


 振り向いた憮然とした表情の男の娘に、私はため息をつく。


「夜に闇討ちのようにのしてくれるのはいいけど、昼間の学部棟の真ん前で人をのすのは辞めてくれ。寝覚めが悪い」


 私の苦言にクククと宇宙人が笑い出す。


「ほらな、こいつもお前のこと心配なんだよ。なんだかんだ言ってな」


 私が男の娘を友達認定していなかったことを揶揄してるんだろう。つまり、宇宙人としては、結局おまえら友達なんだろ、って言いたいわけか。違うし。


「じゃ、先輩方、お疲れ様です」


 私は目の前で人がのされるのなんか見たいわけじゃないってだけだ。


「ちょっと、俺の文句はまだ途中だぞ」


 文句……言われてたかな?


「さっき聞きましたから大丈夫ですよ」


 私はひらひらと手を振ると、学部棟から離れる。

 さっき、確かに宇宙人から文句を言われた記憶はある。……はて、何を文句言われたんだっけ? 男の娘のおかげで、すっかり忘れたなぁ。でも、ややモヤモヤしていた気分は晴れたから、まあいいか。えーっと、何でモヤモヤしてたんだっけ? ……まあ、いいか。




 家に帰ってスマホをタップすれば、消し損ねていたハロー彗星が目に入る。

 『これを追いかけないといけないから、また今度』か。


 『どこまで追いかける気ですか』


 宇宙人からメールの返信がほぼないのもあって、私が宇宙人のメールに返信するのも久しぶりだ。それこそ一年ぶりくらいかもしれない。

 すぐにメールの着信があって、それが宇宙人だとわかって驚く。宇宙人から返信の返信が来たのは何年振りかって感じがするからだ。宇宙人のあのいつもの感じからするに、メールが放置されるのにも何も違和感がなかったせいもある。今日はどんな心境の変化が? と思いつつメールを開く。


『気が向くまで』


 何だか宇宙人らしい返事でクスリと笑いが漏れる。宇宙人はきっとずっといつまでもハレー彗星になぞらえた宇宙のことを追いかけ続けていそうな気がする。

 勿論仕事として追いかけられる人は一握りでしかないし、宇宙人がはたしてその一握りに入れるかはわからないけど、たとえアマチュアとしての立場だったとしても、宇宙への興味を失わないだろうと思える。私も負けないように勉強しなきゃ。

 宇宙人に授業とは関係のない深い知識を教えてもらうたびに、私は宇宙人に対する尊敬する心と、そこはかとない対抗心が育っていく。残念ながらまだ今は私の知識の量が圧倒的に足りてないけど、いつかは宇宙人に追いついて追い抜きたい。

 いつか、勝ってやる。

 宇宙人の生態を知るたびに、私にあったとは思わなかった負けず嫌いの心が騒ぎだす。宇宙人の生態を知って思うことでは、きっとない。でも、確かに未知との遭遇だった。

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