グラーニンバクショウシテルンダナ
「それでは、こちらの依頼を受注するということで。」
「ああ、手続きは頼む。」
こうして、俺はとある領主と面会することになった。
それは、このあたりの商人の家だった。
貴族と取引をすることもある、地方の豪族……、そんなところか。
「それで、この者が今回の?」
ひげを蓄えた、脂肪も蓄えてそうな男の人が出てきた。
「家事ギルドより参りました、責任者のルマです。」
この受付の人はルマって名前らしい。
「こちらは……。」
そういえば、まだ名乗ってなかった。
しかし思えば、この世界には生まれ変わってきたようなものだ……。
そう考えると、俺に名前はあるのだろうか?
「お初にお目にかかります。」
「ふむ。」
じろり、とみられた。
そんな気がした。
まあ、そこまで強い目力ってわけでもない。
「実は私は、両親が幼くして他界、名はありません。」
「ほう。」
「して、今回の契約が結ばれるのならば、お好きなように名をつけてください。」
まあ、こんなところだろう。
実際、この世界に俺を知る人はいないはずだ。
……例の爺さんの言う通りなら。
「なるほどなるほど、面白い。」
「あの、名無しさん。」
「……はい?」
「言い忘れてましたけど、今回の依頼者、グラーニンさんは、かなりの変わり者でして……、ひょっとしたら、ひょっとしますよ、これは。」
「あ、そうなの?」
何とも間の抜けた返事である。
一息ついて、メイド……、ルマさんのほうを見ると、殺人的な顔をしていた。
瞳は赤く染まり、髪は逆立っているようだった。
「私は責任者なのですよ?」
仕事の場ではしっかりしろ、そういわれた気がした。
「……以後、気をつけます。」
すると、交渉の最初のような、営業スマイルに戻った。
「よし、気に入った。ルマさん、今回は契約をしよう。」
「はい、ありがとうございます。」
「……ありがとうございます!!」
こうして、契約は締結。
「いやー、しかし、助かったよ。この時期は大型の獣が多くてね、明日の朝、ギルドの前に来てくれ。迎えをよこすよ。」
「はい。旦那様の期待に応えられるよう、仕えさせていただきます。」
……うん?
『大型』の獣……??
????????????????????