適性検査
あの時のことを思い出せ、ねえ……。
「あの、お客様……。」
「は、はい。」
「早く書いてください。」
メイドにジッッッとみられる。
餅みたいな頬しやがって。
しかし、あの爺さんのおかげで、文字が読めるようになったし、書けるようにもなった。
よくわからん文字を枠内に記入していく。
「これで頼む。」
「はい。」
何とか通ったらしいな。
「それでは、このタグをどうぞ。ギルドの構成員を証明するものです。大切に保管して、求められれば提示してください。」
鉄のタグだ。
首輪みたいだな、と思った。
「これで手続きは終わりです。現在受注できる依頼も数件ありますが、ご覧になりますか?」
ああ、ようやく始まるんだな、ここでの生活が。
「ああ、住み込みの依頼はないか?」
「住み込み……、ですか。」
手元の紙をめくっていく。
難しそうな顔をして、細い指で仕事を探す。
困り顔も少し、かわいいな、おい。
「……こちらに、家事のスキルを記入してください。依頼主との交渉材料にもなります。私は、すこし別の領域の仕事を探してきます。」
そういって、また別の紙を渡されたのだ。
羊皮紙か?
動物の皮のようだが……。
どれどれ……。
紙にはそれぞれ質問があり、はいかいいえで答える形式だ。
文字は読めるか?
当然、イエスだ。
肯定を、まるで囲む。
なんだこれ、羽毛にインクがついてるのか?
見慣れない筆記具で、記す。
文字は書けるか?
ここだけ回答を書く場所が空白だ。
『はい』と、文字で書いた。
いまお前が書いてる紙は、最高級のサボサから作られたもので、これを弁償するとき、どのような手段を用いるか?
……なんだこの質問は。
サボサ……、聞いたことのない名前だ。
しかし、文脈からすると、植物、なのか?
サボサを育てる許可をいただきたい。
俺の回答はこうだった。
領主に許可を得て、栽培する。
額の汗をぬぐい、顔を上げると、涼しい顔のメイドがいた。
驚いた。
ジトーッ……と、水分の多そうな視線でこちらを見ている。
回答した紙を渡すと、メイドは少し困惑した顔をしたが、すぐに元の受付の顔になった。
「それでは、この回答と照らし合わせ、依頼との相性を見ていきましょう。」
なるほど。
そんな目的があったのか。
「そうですね、この依頼はどうでしょうか?」
お屋敷の庭の管理、住み込み、庭師募集。
確かに条件はそろっている。
おまけに庭師。
あまり危険な目には合わなさそうだ。
「どうやらお客様は、相手の要望を叶えるためには手段を択ばない傾向があるようですので……。」
「こちらはどうでしょうか?」
この依頼が本命なのか、メイドはそういって、別の案件を取り出した。
庭の害獣駆除。