爺の目的
恐怖に歪んだその瞳に
浮かぶ涙で
責めるのか
詠み人 オレ
なんて、現実から目をそらしても何も変わらない。
目の前の、少し幼さが見える美人は、恐怖によってか、青い瞳でこちらを見ている。
……何か間違ったかなぁ?
こういう時は、心をニュートラルな状態に持っていくんだ。
立ち上がり、襟を正す。
言葉の通りの意味もある。
「……このギルドの構成員になるための、申請をしたいのですが。」
よし、いいぞ。
先ほどのやり取りを無視したかのような態度で、それでいて、話の流れは持ってきている。
ここは家事ギルド。
ならば、構成員になって、職を探すしかない。
幸い、掃除、洗濯、くらいなら己が身一つで稼げるだろう。
「エェ~~~っ?!」
おいおい、どうした。
いきなり三白眼になって、受付は大声を出した。
周りの人たちもなんか、こっちを見た。
やめてほしいものだな。
「すいません、えぇっと……、こちらの申請用紙に、お名前と、各項目を記入してください。」
コホンと喉を鳴らし、受付も心をニュートラルに入れたのか、ここにきて、会話がようやく成立した。
なになに……、ってよくよく考えたら、この世界の文字読めないじゃん、オレ。
なぜか話は分かるが、文字は読めない。
頭が痛くなってきた。
オレはこの先どうやって生きていけばいい?
その時だった。
頭上から光が落ち、例の老人が下りてきた。
「おじいちゃんじゃん、どうしたの。」
そのやり取りは、まえにしたじゃろうに。
「……天丼は通じない……、か。」
なんか調子狂うな。
お主に、少し、加護をやろうと思うてな。
そこの文字を読み取る力じゃ。
ちょうどいいじゃろう。
確かに、ベストタイミングだが。
何か都合がよすぎる気がした。
それと、お前さんはわしが何も考えずにこちらの世界に転生させたと思っているようじゃが……、目的を果たすことができたら、現世に返してやろう。
え?
現世に帰ることができるのか?
そうじゃ、まず、考えてみろ。
あの時のことを。
そういって、老人は消えた。
速く記入しろと催促の顔をした受付と、あっけにとられたオレを置いて。