似非ヨーロッパ
「ワクワクしないわけないだろ、ここは異世界だぞ。」
無職の声が響く。
俺は高校生だったはずなのに、この世界じゃただの無一文の無職だ。
ただ、どうにも街の景観に心を躍らせてしまう。
この似非ヨーロッパに。
そうなんだよな、この街、ヨーロッパのように見えるが、そうじゃない。
日本人の偏見が詰まった、ヨーロッパの街なんだよな……。
ビザンティン建築に、黄金長方形の神殿、整備された道路、ヨーロッパなのにゴミ一つない街。
そして、帯刀した人々。
「いつの間にか、人通りの多いところに来ちまったな……。」
こんなのワクワクしないほうがおかしいぜ。
「と、言うわけで……。」
職業斡旋所に来たわけだ。
大丈夫だよね?
ヘンにブラックな案件とかないよね?
ここに来るまでに文字は読めないので、通りの人に聞いたらここが職を探す場所らしい。
「ははは……、ハロワ?」
南国テイストな挨拶をかましたところで、不安に駆られながらも扉を開ける。
「なんじゃこりゃ……。」
床には赤いカーペット、目の前には階段。頭上にはシャンデリア。
ここは本当に職を探す場所なのか?
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」
「メ、メイド服だと……。」
「はい?」
丁寧な所作とは裏腹に、言葉はそうでもない。
「敬語ミスってんぞ……。」
「そうでしょうか?」
……なんなんだこのメイドは。