還るべき道を
還る道を探そうか
どうしようもない、現実を超えて
現に不思議な体験をしている
別の世界への移動
そして、使命なき転生
何もかもが異常であり、何も信じられない
「使用人としての仕事を頑張るしかないのか……。」
部屋で一人、うなだれる
グラーニンさんはどうも権力者のようである
それは俺でも理解し始めていた
今日は休暇を貰った
そして、グラーニンさんに自分がどういう境遇かを打ち明けた
……狂人扱いされるのを承知で
「つまり君は、別の世界から来たと?」
怪訝な顔をされる
そりゃそうだ
「まあ……、はい。自分でもおかしなことを言っている自覚はあります。覚え違いかもしれませんが。」
「ふむ……。」
腕を組み、何かを考えているようである。
おもむろに立ち上がり
「君の仕事ぶりを見ていると、とても感心している。害獣の討伐、この街の文化へのとけこみかた……。」
依然見かけた宗教団体への態度だろう。
そういえばお酒の販売も依頼されていた。
「なにか重責に感じることがあれば、遠慮せずに言ってほしい。はっきりと言おう……、君の働きぶりは素晴らしい。」
泣きそうだった。
いくらでも、狂人のように扱うことはできるはずなのに、自分を認めてくれている。
ありがたい話だった。
「はい……。もう少し、この街の文化を見てみようと思います。」
「そうか。」
「最後に。」
「何かね。」
「この屋敷で働いている人たちと接してみても?」
「もちろん。」
それ以上は何も言われなかった。
そして、話は終わった。




