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竜印の肉屋
たとえるなら、それは肉屋の前での喧嘩であった。
「おっちゃん、いい肉あるか?」
「なんだ、見ねぇ顔だな。今朝とれたての肉はあるが、まあなんだ……。」
?
「肉ってのは熟成させねぇとうまくねぇのさ。海鮮とはモノが違う。そういう意味で言えば、こいつはいいぞ。ちょうど、食べごろだ。」
「じゃあ、そいつを。金はこれでいいか?」
「ああ、過不足なしだ。……ところで、あんたはグラーニン邸の使用人か?」
「ああ、まあな。」
「そうか、肉が気にいったら、また来てくれ。」
「おう!」
「……アイツが、か。」
手の中できらめく金貨を見ても、わらえねぇや。




