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偽名であって偽名でない

とりあえず、罠屋のおっさんに会いに行く。

この前の罠のお礼だ。


「おっちゃん、この前はありがとう!」

「おう坊主。どうした?」


やはり語気は強いが顔からは笑みがこぼれている。

いい職人だ。

そして、いいおっさんだ。


「ああ、この前の依頼な。おっちゃんの罠のおかげでうまくいったんだ。」

「そりゃあよかったな!俺の腕もまだ腐っちゃいなかったみてぇだ!」


ガハハ、と笑う。

中ジョッキにビールが似合いそうだ。

依頼のその後、そしてこの一か月間は治療に専念していることを話す。


「なんでもグラーニンの依頼だろ?それをこなして専属に雇ってもらうだなんて、やるじゃねぇか。」

「そうなのか?」

「ああ。グラーニンさんはこのあたりじゃ有名だ。……耳かせ。」

「え?」


言われたとおりに近づける。


「気難しいことでな。」


本当だろうか。

あの親切なグラーニンさんが気難しい……?


「そうなのか?」

「……まあ、ボウズの能力を買ってるんだろう。そうだ、名前は?」


困った。

俺には名前がない。

ついでに異世界に転生してからもほとんど名乗っていない。

偽名だが偽名でない名前のほうがいいだろう。


「……ユリウスだ。」

「ユリウス?変わった名前だな。」


そう、この前の騒ぎの時のユリウス・ホワイトだ。

偽名だがもういい。

こっちの世界での俺の名前でいいだろう。

フルネームを名乗るのは正体がばれて、良くないだろうしな。

それに、関係者にはある程度俺の正体を知らせておきたい。


「……そういえば、ひと月前にユリウスホワイトとかいうのが騒ぎを起こしたとか聞いたが……。」

「……。」


互いに無言、そして微笑む。


「……さあな。」


そう、俺の狙いはこれだ。

匂わせ。

だけど俺は教団関係者とは違いますよ、という匂いだ。

お前けにグラーニンさんはこのあたりの権力者だろう……、あの豪邸や名の知れ渡り具合からして。

恐らく、地方貴族だろう。


「おっちゃんの名前は?」


いいか、おっさんはやめとけ。

おっちゃんって言っとけ。

特に関西人には。

まあ、ここ異世界なんですけど。

ユリウス。

ははっ、笑えよ。 

異世界ジョークだよ。


「ああ……、俺の名前はモーゼス。この店、竜印りゅういん罠屋のモーゼスだ。」

「モーゼスね。わかった。また何か頼むときは頼むよ。」

「ああ。」


やはり、俺の眼に狂いはなかった。

モーゼス、龍印罠屋のモーゼスか。


店をでて、辺りを見渡す。

この通りは城下町か?

様々な店が並んでいる。

宿屋、罠屋、賭場、酒場、花屋、肉屋……。

グラーニンさんは街にいろいろな問題があると言っていた。

それは昼間でも見えるほどなのだろうか?


「とりあえず、手持ちの確認だ。」


そう、とりあえずの報酬だ。

この前の依頼、その成果の評価であり対価。

皮袋に包まれた中身は……?

なにか白銀のようなものと、まぶしく光るものがあった。

これは……、銀貨?

それと金貨だ。

数を数えよう。


……銀貨20枚に金貨5枚……、か。

うーん、物価が分からん。

とりあえず、どこか店に入ろう。

使うしかない。

そして物価を調べようではないか。

ここにきて1か月、正直、グラーニン邸での生活が充実しすぎていたのか、街の生活レベルが低いと適応できそうもない。


とりあえず、肉屋にでも行くか……。

それにここにはユリウス・ホワイトの張り紙がしてある。

噂を確認するのも必要だろう。


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