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3/5

激戦!

「ですが、大公陛下。此処までは、まだまだ前哨戦。本番はこれからに御座います」

「ほう、これからが本番とな?」

「ローはまだ、炎を(まと)ってはおりません」

「おー、そうで在った。確か炎龍神掌(えんりゅうしんしょう)と申すものであったな」

「それに、エクベルトもまた、奥の手を見せてはおりません」

「ふふふ、エクベルトの奥の手とやらにも興味を引かれるな。だが、未だ申すなよ。先に知ってしまえば興醒(きょうざ)めと言う物だからな」


闘技場の中で睨み合っていた二人が、再び動き出す。

ローが双竜の構えを解き、両足を肩幅に広げ中腰に、そして、両手を合わせる。

「あっ、あの構えは!」

「どうした、ベネディクト?」

「失礼(つかまつ)りました。しかし、大公陛下、ご覧ください。ローが炎を」

「うむ、なんと!確かに、炎を(まと)っておる!」


ローはあの構えのまま気を燃焼させる事で、炎を(まと)う。

最初は、普段から赤い鱗が更に赤みを増し、熱で周囲の風景が歪んで見える。

(まと)う炎はしだいに大きく成り、そして火柱の如く。


刹那、爆音が轟き、ローの姿が消える。

いや、エクベルトの目の前。

そして、エクベルトの盾に、連打の嵐。

「ん、今何が起こった?」

「あれは、瞬炎歩(しゅんえんほ)に御座います。纏った炎を足元に集め、圧縮解放することで爆発させ、その勢いを駆って瞬時に移動する技に御座います」

「うむ、しかし、自分の足元で爆発させれば、自身が怪我をするのではないか?」

「只の人で有れば、自殺行為ですが、あの者は竜人(ドラゴニュート)、強靭な鱗で全身を覆っていますゆえ、可能な業かと。もっとも、人であれば炎を纏った時点で、焼け死ぬ事でしょう」

「成るほど、竜人(ドラゴニュート)だからこそとな」


エクベルトに間合いを詰めたローの連打が続く。

だが、それでは……。


パンッ!

と空気が弾ける様な音。

そして、ローの体が弾き飛ばされ、宙を舞う。

エクベルトのカウンターだ。

当然そうなる。


だが、再び瞬炎歩(しゅんえんほ)で接近し、連打を繰り出す。

また、壁に押し付ける作戦か?

いや、それが不可能なのは、ローも承知の筈。

何かを仕掛ける積りか?


「うん?今、気付いたのだが、ローの連打はどれも掌打(しょうだ)で在るな。(こぶし)は使わんのか?」

「それには、二つ理由が御座います。一つは、単純に拳を痛めてしまうから。そして、もう一つは、当てた掌打(しょうだ)を上下左右、どの方向に滑らせても、その鋭い鍵爪で敵を切り裂く事が出来るからかと」

「成るほどな、これもまた、竜人(ドラゴニュート)ならではの闘い方と言う事か」


ローは何度弾き飛ばされても、瞬炎歩(しゅんえんほ)で近付き連打、の繰り返し。

これで、何度目か……。


ん?あれは……そうかローの狙いはそう言う事か。

「大公陛下、御覧下さい。エクベルトの盾が変形してきております」

大公陛下は懐の遠眼鏡を取り出し、御確認される。

「うむ、確かに。では、ローのあの執拗な攻撃は、エクベルトの盾を破壊する為か」


どうするエクベルト?


そして、エクベルトが動いた。

ローの瞬炎歩(しゅんえんほ)にタイミングを合わせて戦斧を振り下ろす。

瞬炎歩(しゅんえんほ)は爆風を利用した技、確かに素早い動きだが、直線的な動きに成る。

そこを、エクベルトが狙ったのだ。


エクベルトの戦斧がローを捉えたと思った、その刹那。

爆音。

ローの姿が消え、戦斧が空を切り、地面に突き刺さる。


瞬炎歩(しゅんえんほ)

空中で、瞬炎歩(しゅんえんほ)を使って、自らの軌道を変えたのだ。

しかも、爆音は何度も繰り返される。

つまりは……。

「なんと!あの者は宙を舞っているではないか!」


ローは地に足を付ける事無く、瞬炎歩(しゅんえんほ)を繰り返し、エクベルトの頭上を舞っている。

そして、その空中から炎を(まと)った蹴りを繰り出す。

スパン!

エクベルトのタワーシールドの右角が斜めに切断される。


「む、どうなった?」

炎龍脚(えんりゅきゃく)に御座います。足に(まと)った炎を薄く刃に変えて、蹴りと共に放ち、対象を焼き切る技に御座います」


度重なる炎を(まと)った連打で強度が落ちているとは言え、あの盾を切断出来ると言う事は、首や手足に当たれば、切断できると言う事。


「うむ、これは……勝負有ったやも知れんな」

「いいえ、大公陛下。敵が空中に居るあの間合いこそ、エクベルトの間合いに御座います」

「なんと!それは、どういう事か?」

「もう、そろそろ、エクベルトが仕掛けるかと」


再び炎龍脚(えんりゅきゃく)を放とうと、その間合いに捕らえる。

刹那。

「ファランクス!」

無数の槍が空中に一瞬だけだが出現する。

爆音!

突如目の前に現れた槍を避けようと、ローが不自然な格好のまま瞬炎歩(しゅんえんほ)使ったのだ。

ローは致命傷は免れたが、槍の一本はそのわき腹を捉え、不自然な体制での瞬炎歩(しゅんえんほ)によって地面に強く打ち付けられる。


ファランクスは本来、飛んでくる弓矢をその槍で叩き落す、防御の魔法。

だが、飛来してくる敵には攻撃にも流用可能だ。

ただし、この魔法は間合いが難しい、自身の目線の斜め上二メートル。

この間合いに敵や弓矢を捉えねばならない、しかも、槍が実体化するのはほんの一瞬。


「ほう、ファランクスとはさすがだな。ベネディクト、(けい)が申しておったエクベルトの奥の手とはこのことか?」

「その一つに御座います」

大公陛下は、興奮されたのか身を乗り出してご覧に成られる。


度重なる瞬炎歩(しゅんえんほ)の連続使用だけでも、相当体力を使った筈、そこに、ファランクスの一撃、さらには瞬炎歩(しゅんえんほ)の自爆。

さすがのローも満身創痍。


この好機を見逃すエクベルトではない。

「ヘイスト!」

ふらふらと起き上がろうとするローの元へ間合いを詰める。


「ウォール!」「ウォール!」「ウォール!」

逃げ場を塞ぐように、ローの左右と後方に壁が立ちはだかる。


「バースト!」

戦斧に魔力が込められる。

バーストは、武器の威力を一瞬強化する魔法。

エクベルト程のものがバーストを込めた、この刃に触れた者は、例外なく粉砕される。


そして、エクベルトの戦斧がローに振り下ろされる。

刹那、耳を(つんざ)く爆音!

土煙が闘技場を覆う。


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