与えられし罰
「ご無事でしたか魔王様!」
ようやく魔王様が天井から下りてこられた。
「……」
御無事のはずだ……魔王様はなにもしていない。得体の知れない呪文を唱えてプカプカ浮かんでいただけだ。
「デュラハンよ……、
今日は卿は晩飯抜きじゃ!」
――!
「そ、それはあまりにも御無体! 私は魔王様のために勇者一行と戦ったのですぞ……」
今日は金曜日だから四天王と魔王城内のモンスターが大広間で一同に食事をする、「夕食会」の日なのに――!
私の前だけ食事が運ばれてこないなんて……。
スライムたちに笑われてしまう――!
「合掌、いただきます」
「「いたーだきーます!」」
魔王様の号令にて食事が始まった。魔王様がいったい誰に対して手を合わせているのかが気になる。
大広間での盛大な夕食会。他の四天王の前に置かれた豪勢な夕食をただ黙って見ていた。グーグーと……お腹の虫が情けない悲鳴を上げる。
「あら、デュラハンの席だけ料理が置いてないじゃない」
真っ赤なワイングラスを傾けながらサッキュバスが気付いた。夕食会用の真っ赤なドレスはやはり胸元が大きく開いている。
「まあ、美味しいとこ取りしたんだから仕方ないな」
「そうだな、大人気なく勇者一行と戦って、一人で全滅させたんだからなあ」
「魔王様を差し置いて」
クスクスと笑われる。魔王様の顔は……恐くて直視できない。
「……ごめんなさい」
鼻水が出てきた。
「冗談だ。デュラハンよ、今日の功労者は卿だ」
魔王様が指パッチンすると、メイド服を着た女性が山盛りパスタをデュラハンの前に置いた。
「ま、ま、魔王様!」
「今日も一日ご苦労であった」
「――あ、ありがとうぼざいまず!」
涙も出てきた……。フォークを持ってトマトソースのパスタを口に放り込むと――、
「――か、辛いっ!」
口の中が辛くて辛くて大変、ホットパニックだ――! 引っ込んでいた鼻水がまた出ようとする。
魔王様が悪い顔をして笑っておられる。
「ヒッヒッヒッ。引っ掛かったな。お前のパスタにはタバスコがタップリ入れてあるのだ!」
鬼だ! いや、悪魔だ? いやいや、魔王様なのだが……。
――子供の悪戯か! 泣きっ面にタバスコだ――!
「どれだけタバスコを入れたの? 魔王様」
「ふっふっふ。五滴!」
また手をパーにして見せる魔王様が、いささか歯痒い。
「いやだ、それは辛いわ」
「はっはっは、辛いだろう」
「……御意」
……辛いが……辛くて食べられないほどではない。
ところでどうやって私はパスタを食べているのだろう。
顔から上が無いハズなのに……。
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