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一騎打ち


「では勇者よ。お前の勇気と誠実さが本物かどうか試させてもらうぞ」

 魔王様が立ち上がると、勇者一行も剣を構えた。

「勇者よ、予が自ら戦ってやろう。一対一(さし)で」

「なんだと?」

「予を倒した暁には世界を自分のものとし、卿の思い描く素敵で平和な世界を築くがよい――」


 魔王様が……個人戦? これはチャンスだ――!

 他の四人は私、宵闇のデュラハンにお任せください~! ちょちょいのちょいとやっつけて魔王様の前で武勲をたて……、


 四天王の四天王長になるのだ――!



「『アローンドローン!』」

 ――! 魔王様が今まで聞いたことがない呪文をお唱えになった。ひょっとすると禁呪文なのだろうか?


 ……フワフワと……床からゆっくり浮かんでいく魔王様……。早くもなく……まさにドローン?


「フハハハハ。予を傷つけられる唯一の方法は、勇者が持つ白銀の剣のみ。それが触れることができない今、お前達は予を倒すことなどできぬのだ」

「「――!」」

「つまり、最大の防御は最大の攻撃となるのだ! これこそが平穏なる支配の絶対なる力!」

 ――平穏なる支配の絶対なる力? 恐いようで恐くない――! いや怖い。


 浮かび上がる魔王様を勇者一行は悔しがって見上げている。

「……仕方ない。じゃあ、宝箱だけでも奪って帰るとするか」

「ああ、魔王城もたいしたことなかったなあ」

「敵もザコばっかりで弱いし、魔王は逃げるし」

 ――ザコ! まさか私もその一人?

「予は逃げてはおらんぞ!」

 天井から声が聞こえるが誰も見上げない……。けしからん。

「じゃあ降りてこい魔王!」

「魔法の効力が切れねば下りられん……。――じゃなくて、その手にはのらんぞ!」

 魔王様……デパートで子供が手を放した風船のような状態になっている。

 ……天井に張り付いている。

「弓矢でも効くんじゃないのか?」

「ああ、やってみるよ」

 弓矢使いが弓に矢をつがえて引き絞った――。

「あばよ、魔王」


 ――ヒュッ!


「――そうはさせぬ!」

 目にも止まらぬ早業で、矢を真っ二つに切り落とすと、セラミック製の矢が高い金属音を立てて床に転がった。……つまらない物を切ってしまった。

「轟け稲妻よ! 『轟雷(サンダー)!』」

「――そうはさせぬ!」

 魔法使いの杖から青白い稲妻がほとばしるのを――体を翻し、剣で綿菓子(コットンキャンディー)のようにからめとる!

「これぞ秘儀――避雷針!」

「――!」

 新体操リボン競技のような可憐な剣さばきに勇者一行は絶句している。レオタード姿で披露できないのが残念だ。

「私には魔法は効かぬのだ!」

 少々ピリピリするが、濡れた手で古い洗濯機を触った時よりずっとマシだ――。魔王城の洗濯機は……緑の線が繋がれていないのだ!


 戦士と勇者の剣さばきも大したことがない。二人の息もバラバラだ。手加減しようにも実力差があり過ぎる。

「まだまだ未熟な勇者どもよ、お前達が魔王様と戦うなど百年早いわ!」

「――くそ! 顔なしのクセに!」


 フッ……。弱者が強者を挑発するなと言いたいぞ……。私は怒っていないぞ……。


「――セーブポイントから出直すがよい! ――デュラハン・ブレッド!」

 音速を超え振り払う剣からギザギザの波動がほとばしり――!

「「アンギャ―!」」

「やられたわー!」

「一度も活躍していないのに! シクシク」

 フランスパンでも切るかの如く一撃で勇者一行はその場に倒れ伏し、ゲームエンドの悲しげな音楽と共に消え去っていった。


 剣をゆっくり鞘へと収めた。魔王城の緊急事態はようやく収束したのだ。



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