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裏切りのハッピーエンド

作者: キズナ

短編初作品になります。

短くしようとした結果わけわからないことになっているかもしれません、ご了承ください。

改善点などあれば教えていただければ幸いです。

 薄暗い暗闇の中、若い男女が欲望のまま欲望を映し出す。都会から見えるはずの無い星々がその日はよく見えていた。

 若い男女は本を手にし、よく見える星々に向かって叫んだ。

 「汝、答えよ。我この地に汝を召喚せし者。この応答に答えし、汝の願い叶えよう。改めて答う、我の呼びかけに応答せよ…。」

 都会のざわめきに負けないぐらい大きな声で呼びかけたが何も返答はない。男は落胆し、両膝を着き絶望した。


 「やっぱりダメかしら?この科学が発達した時代に、まだ確認出来ていない未確認生命体とコンタクト取ろうなんて、古くさい事をしているって分かっているけど、無駄なのかしら…?」

 女は男に話しかけ、残念だが帰ろうと投げかけるが、男は納得しないようで座り込んで駄々をこねている。


 「いや、ここまでしたんだ!来てもらわないと困る!あのサイトが本物じゃないのはわかっていたが、妙に信憑性があっただけにもう少し粘ってみたい。」

 「仕方ないわね。この検証実験は私とあなた二人でする論文だものね。付き合うわ。」

 女は男の半分わがままな意地に根負けしたのか、女もそこに座り込んで二人で見える星々を見ている。


 しばらくしても何も変化が見えない中、雲が掛かってきた。

 「今日は良い天気って聞いたのに-。」

 「いつの時代も天気予報って当てにならないわよね。一昔前はでたらめな天気予報士いつも間違った天気を伝えてたって言うけど、今じゃ人工知能が全て計算してしまうものね。」

 男女の会話が天気の話をしていると大きな影が二人を覆った。


 「え?」

 驚く二人。二人の目の前に現れたのは、推定15mはあるような大きな戦艦、それも空中に浮いている。

 二人には最初何かを判断出来なかった。そして、二人が理解すること無くその戦艦は消えてしまった。


 戦艦が消えて五分ほど経った時、唐突に男が叫んだ。

 「ええええええ!!!!あれ地球外生命体!?俺達ついに呼ぶことに成功したんだ!!」

 はしゃぐ男を見て、女もようやく理解した。あれは紛れもなく自分たちが呼んでしまった地球外生命体だと。そして男も女も呼べた事に興奮し現れた理由については考えなかった。


 「早速レポートを作成に取りかかろう!!」

 「そうね!ふふっ、これは大大大スクープね!!」

 男も女もお互いに地球外生命体に出会えた事と論文を発表した後の事ばかりを考えている。

 程なくして、男女が共同で実証した実験の論文は実に興味深いと評価され、世界的にも発表する論文となった。世界的に注目を浴びた二人の論文はメディアでバンバン取り上げられた。


 二人の論文が世に出始めた頃、世界のあちこちで妙な事件や災害が起き始めていた。世間では、テロ組織だ、温暖化の影響だと騒がれたが本当は違っていた。

そして、真実を知る者はその場にはいなかった。



 それからしばらくして、世界中で大きな地震がいくつも起こった。マグニチュード8以上の地震がここまで同時に起こることは奇跡に近い現象だと学者達は囃したて、世界が終わると叫んだ。そんな時、太平洋のど真ん中に大きな穴が発見された。半径300キロもある大きな穴で、メディアでは終焉の穴と呼ばれた。


 終焉の穴を調査するため、日本・アメリカ・イギリス・ロシアの特殊チームで現地へ向かうことになり、多くの学者がそれに参加した。

 数日が経過し、メディアが報道したのは調査チームの消息が消えた事だった。生きているのか、生きていないのかすらも確認出来ない。アメリカはこの事態に単独で調査することにし調査隊を派遣した。


 日本でも単独で調査隊を検討したが、アメリカの調査結果を待つことにした。

 アメリカが単独調査を行った数日、調査隊の全滅をメディアが報じた。

 日本ではアメリカ軍調査隊全滅を受け、単独で調査をすることを決めた。誰もが無謀だと政府を批判したが、ロシアやEUの圧力により日本が出向くしか無い状況だった。



 「この調査、俺達は死ぬかもしれない。でも、タダで死ぬわけにはいかない。」

 「教授。日本政府の力を信じましょう。」

 死に恐怖しながらも日本の底力に期待しようと話をするのは、日本調査チームで東京大学教授楠木道彦教授とその助手山田太郎である。


 楠木と山田は調査に使う機材や記録用のカメラを大きなバッグに入れ、研究室を後にする。

 東京大学前には総理大臣直々にお出迎えがあり、この調査に向けた力の入れようが分かる。


 「楠木教授。今回はこのプロジェクトへの参加、誠にありがとうございます。」

 日本の総理大臣が大学教授へ頭を下げるのは極めて珍しい。いくら日本の頂点に立つ大学とはいえ、格が違うからだ。

 しかし、頭を下げるには理由があった。この調査は死亡する確率が極めて高い。99%は死亡するとAIは残酷な結果を出したのだ。

 そして、その貧乏くじを引いたのが楠木だったと言うわけだ。


 「調査チームは教授、助手、そしてヘリコプターの運転手に護衛一名の最小人数で構成されています。何卒お気を付けください。…ご武運を。」

 そう言って、外務大臣の大沢が頭を下げる。


 楠木、そして山田の家族もその場におり、泣きながら二人を見つめている。



 「先生。行きましょう。」

 「そうだな。」

 二人は用意されたヘリコプターに乗り込み調査へ向かった。



 ヘリコプターが日本から離れて何時間が経つだろう。船酔いならぬ、ヘリ酔いを感じ始めた頃だった。

 「もうすぐ目的の場所ですよ。」

 運転手がそう言うと、前方に大きな穴が見えてきた。穴の上空には黒い雲が集まり、まるで何かのSF映画を見ているかのような光景が目の前に現れた。


 「す、凄いですね。」

 山田は見たことのない光景に固唾を呑んだ。


 「あぁ…。私も教授になって長いがここまでの現象を見るのは初めてだ。」

 楠木も山田同様表情は硬く、冷や汗が額を通り抜けるほどになっていた。


 「どうしますか?これ以上近づくとこのヘリコプター事態も危険です!」

 「そうですか…。あ!山田君。動画を回してくれ。そして予定していた生放送の準備をしてくれ。」

 楠木は忘れていたかのように動画を回すように山田に命令をする。山田はバッグに詰めた機材を取り出し、目の前の光景を動画に撮りだした。


 「どうも皆さん、東京大学教授の楠木です。世間を騒がせている大穴です。どうでしょうか?太平洋のど真ん中にここまで大きな大穴とは一体どういったことでしょうか。我々は今からこの穴の中へ入っていきます。」


 カメラの前でそう話すとカメラは大穴の中を映し出した。


 楠木はヘリコプターの操縦士へ穴奥へ向かうように指示する。操縦士は穴奥へと進んでいくと、黒雲がピカピカと輝きだした。雷の発生である。

 近づくにつれ、雷の発生率が高くなり、ヘリコプターでの接近はこれ以上無理だった。仕方なく引き返そうとした時、恐れていた事が起きた。雷の直撃。


 雷の直撃でヘリコプターは燃えながら墜落してしまった。操縦士及び楠木達はどうせ死ぬならと飛び降りた。



 日本の調査団では、やはり手も足も出なかった事がその後、メディアによって報道された。楠木達の家族は悲しみ、葬儀も行われた。




 「ん…いてて。」

 「山田君、君も無事だったか。」

 倒れて負傷している山田に楠木は話しかける。


 「教授…?私たちは、生きていたのですか?」

 「あぁ、奇跡的ではあるがな。」

 「他の方は…。」

 山田の問いに対して楠木は肩をすくめ首を横に振った。


 「それはそうと…ここはどこですか?」

 「それは私にも分からないさ。少し回りを見て回ったが、何も無かった。石すらね。」

 楠木と山田の周りは何も無い。そう草、石すら無い、さらに地面すら-。


 光はあるものの、足に触れている地面らしきものは土でもコンクリートでもない。触れた感触はコンクリートのようなものだが、何か分からない。


 「ここは本当になんなんでしょうか。天国?地獄?まさか…異世界?」

 「君…、天国や地獄なら私と共にいること自体おかしな話だろう?それに異世界など、日本の科学者たる者の発言とは到底思えないな。」

 楠木は山田の発言に対して、ため息と呆れ顔のダブルパンチを繰り出した。


 「○×△◇$%&”…」

 二人の耳には、日本語ではない、聞いたことのない言葉らしき何かが聞こえた。


 「何でしょうか。聞いたことの無い言葉?ですね。」

 「山田君でも分からないかね?」

 「いくら私が10カ国以上の言葉が理解出来ると言っても、この言葉は聞いたこと無いです。」

 山田は30歳で既に10以上の言語をマスターしていた。


 「○◇〒※!“#$%&‘’(?」

 「まただ!一体何を言っているんだ!?」

 「オマエタチハナニモノダ?コノホシノセイブツカ?」

 謎の言語の時よりも小さな声になったが日本語で言葉が返ってきた。


 「教授!今度は日本語で帰ってきましたよ!」

 「そうだな。でもどこか機械じみた声だ。」

 楠木は声が機械じみた所以外にも、「この星の生物」と言う言葉に違和感を覚えた。


 「君は――、いや君たちは、どこの星から来たんだ?」

 「教授?」

 「ワタシタチダイ12ワクセイ、ハイエンドセイカラヤッテキタ。コノホシハジツニイイホシダ。ジキニコノホシモワタシタチノモノニナル。」

 謎の声は自分たちは異星の者だと話をした。そして、この地球を乗っ取ると取れる発言もした。

 侵略と取れる発言に対して、真偽を問いただそうにも相手が見えない二人は何も反応しなかった。いや、反応できなかった。

 「オマエタチノブンカニツイテオシエテホシイ。」

 「文化?」

 「君たちに答える義務はない。」

 楠木はきっぱりと断りを入れた。


 「オマエタチニキョヒケンハナイ。コタエロ。サモナケレバ…。」

 「さもなければ?」

 楠木と山田は両足に何か絡まるのを感じた。足下を見ると、木の弦が足に絡みついている。どこからか発生した弦によって足を拘束された二人。その弦は徐々に体の上へと登っていき、腕、そして首に巻き付き絡みついてきた。


 「な、何をする気だ!?」

 「ナニヲ?コタエラレナイトイウナラカクニチョクセツキクダケダ。」

 そう言うと、山田の体に絡みついた弦は山田の穴という穴から体内へと侵入した。


 見るも無惨に殺されてしまった山田。体からは体内の血が川のように流れて黒い地面へと流れていく。山田を殺した弦は山田の頭部から下を切り落とし、頭部、主に脳に絡みついた。グチョグチョと音を立て何かをまさぐるような仕草をする弦に吐き気を感じた楠木だが、その弦が自分に来るのではないかと恐怖に駆られた。


 「なるほど、これがお前達地球人の文化か…。人工知能によって文明を発達させた、他の星に住む異星人とも交流をする技術力。実に素晴らしい。しかし、私達までは知らなかったようだな。」

 長々と分析した結果を口にするリクウ人。


 「お前達の目的はなんだ?」

 「今からゴミになるお前に話す意味はないだろう。いや、お前達の文化ではゴミになる相手には最後に話すのが決まりだったな。」

 山田から仕入れた知識で変な日本語を話すリクウ人はココへやってきた目的を話し出した。


 「私達の星は侵略者の手によって滅ぼされた。そして移住先を探している時、この星から我々と同じリクウ人の信号をキャッチしたのだ。この星にやってきて、リクウ人を探したがどこにも見当たらなかった。だが、この星は我々にとって実に良い環境だと理解し移住することに決めた。」

 「ならば、我々地球人と和平を結び共に生活すればいいではないか?」

 「私達は多種族とは共に生活しない。故にこの星の生物は絶滅させなければいけない。」

 「そんな無茶苦茶だ!」

 「でも、我々もバカではない。大きな穴の中で待機し、獲物(地球人)を捕らえ、文化情報を得て、文化レベルを上げる。それが我々のやり方だ。」

 リクウ人はそう言うと、楠木の体に巻き付けていた弦を、山田の時同様に体中に伸ばしそして、あっさりと殺してしまった。



 「これで、地球人の文化についてわかったぞ。この星最大の国、アメリカをまずは叩く。」

 リクウ人が侵略の手筈を整えつつある中、世界では平和が続いていた―。



 楠木・山田が大穴で殺されてから数日が経ったある日、大穴から大きな戦艦が浮上したというニュースがメディアで取り上げられた。

 しかし、浮上した戦艦はその後直ぐに姿を消してしまった。



 ドカンと爆撃音がしたと通報があった場所は、アメリカ東部に位置するケンタッキー州にある国立大学内。突然上空に大きな影が現れ、何かが落ちてきた。そして落ちてきた何かは地面に着弾し半径3キロ範囲が吹き飛んだ。


 その日、アメリカの東西南北のいたる場所で同じ現象が起きた。そして誰もが同じ事を言っていた。大きな影が上空を覆っていった。それは雷雲にも似た何かだったと証言されている。

 その頃から、アメリカではどこかの国が攻めてきたと国連へ抗議。そして犯人は誰だと騒ぎ立てた。そして同じような現象はアメリカに留まらず、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、中国、日本と世界でも権力を持つ国々で起きていた。


 同じような現象が各国で起き、それを見た人が同じ事を証言していることから、地球外からの侵略者だと学者達は囃したてた。

 アメリカのとある学者がスーパーAIを用いて原因の究明に取り組んだ。その結果、当初騒がれた地球外からの侵略の可能性が高いと導き出された。



 「世界一のAIを作り出したミランダ博士がスーパーAI『コール』に導き出させた結果、地球外生命体による侵略行為だと結論が出た。」

 「私達のAIも同じような結論に至りました。」

 「では、やはり…。」

 「そこで、我々がこれからやらなければいけない事をコールが導き出しています。」

 世界人工知能協議会『WAICワイク』で今後について話が出る。


 「結論的に言いますが、これは喧嘩を売られたわけです。つまり戦うしかない。」

 アメリカ代表は鼻息を荒くして提案する。


 「でもどうやって?」

 「アレがあるじゃないですか。我々地球人の知恵の結晶ですよ。」

 「なるほど…、しかしあれは実用にはまだ実験レベルが低いですが?」

 「大丈夫です。この戦いをステップとすればいいんですよ。」

 皆元学者なだけあって、かなり慎重に事を運ぼうとしていた。一人を除いて。


 「皆さん恐れているんですか?我々の力を試したくないんですか?コールは言いましたよ?我々のアレは必ず勝てると!!」

 「コールが…。」

 アメリカ代表の一言で協議会メンバーは乗り気になり決行することになった。



 ここはアメリカ合衆国ワシントン州。世界各国の主要や軍隊が集まっていた。今日は世界の将来を賭けて地球外生命体と一線を交える日。ここで、WAICが研究してきたアレのお披露目がある。



 「今こそ世界が一つになる時だ!我々の平和を脅かす地球外生命体リクウ人を倒す日が来たのだ!!ではここで奴らに対抗するべく私達の希望を披露する!!」

 地球連合軍ホーム大佐が発言すると舞台裏からぞろぞろと何かが出てきた。


 出てきたのは人型のAIロボット、そして戦車型、クレーン型、巨人型のAIロボットだ。


 「これがこの戦いの要、人工知能AISアイズだ。」

 おおお!と集まった軍人達は血気盛んに叫んでいる。


 「そしてこれらAISを統制するのは我々の頭脳とも言えるスーパーAI!コールだ!」

 更に盛り上がる会場。


 「では手始めに敵軍の出鼻を挫こうではないか!!」

 大佐は手に持っていたスイッチを押した。

 

 巨大なスクリーンが舞台から出てきた。そして映し出されたのは巨人型AIロボット一号に取り付けられたカメラの映像だ。

 そして、大佐の合図と共にAISは飛び立っていった。


 「既にコールによって、確認されたリクウ人の居場所を特定している!そこに向かって攻撃を仕掛ける!!」


 スクリーンに映し出された場所は旧オーストラリア大陸。今は人や動物が住める環境ではなくなっている。

 戦車型とクレーン型は上陸し、人型と巨人型は上空から基地とされる場所を集中攻撃した。

 コールの予想通り、リクウ人が基地から打って出てきた。

 リクウ人は応戦するも、奇襲に成功したAISによって壊滅した。



 「初戦は我々の勝利だ!」

 再びおおお!と雄叫びが会場中に響き渡る。




 地球統合軍とリクウ人の戦いが始まって一ヶ月経った。



 各国でリクウ人と戦闘が繰り広げられるが、AISがいない場所はやはり分が悪く、劣勢に立たされている。

 東京もその一つで、多くの人がリクウ人によって殺された。

 日本は北海道から沖縄までほとんどの都市が壊滅させられており、人口もわずか数千人になってしまった。


 「俺達はどこへ逃げれば良いんだ?」

 「リクウ人め!」

 「私達はAISの助けを待つしかないの?」


 東京で隠れている人たちはリクウ人への憎しみと自分の無力さに嘆いている。その中にあの男女もいた。


 「ここは耐えるしかないな。AISさえ来てくれればこの盤面はひっくり返せる。」

 「そうね。これも私達が出来る最善だわ。きっと。」

 男女は寄り添ってAISの助けを待っていた。


 「それにしても、俺達が呼んだアレがリクウ人だったなんて。皮肉なもんだな。」

 「しっ!それは禁句よ。」

 「そうだったな。」

 「それにあの時は私もあなたも未熟だったってだけ、誰のせいでもないわ。」

 お互いに慰め合っている男女の近くにリクウ人が寄ってきた。



 「この辺から人間の匂いがするな…。おらもお腹減って死にそうだ。早く出ておいで~。」

 リクウ人は地球人を餌にしている。そしてこの男女の近くを通ったリクウ人は空腹で今にも倒れてしまいそうだ。


 「うほぉ!みぃつけた!!!」

 リクウ人のその声に、終わったと思った男女だが、一向にこちらへやってこない。


 「うわあああああ!!!!!」

 「いただきまーす!!」

 さっき近くで話をしていた人だろうか、叫び声とリクウ人の声、そして骨が砕ける音、血が地面に落ちる音、ぐちゃぐちゃと食べられる音が聞こえてきた。


 「恵里菜、我慢して。」

 「紀彦、でも気持ちが悪い…。」

 男は吐きそうになる女の背中をさすりながら、少しでも気配を消そうと努力したがダメだった。

 女はその場で吐いてしまった。最近ろくな物を食べられていなかったため胃液だけがでたが、リクウ人はその匂いすら見逃さなかった。



 「あはぁ!?まだいたのか?」

 そういって男女の元へ歩いてくる。瓦礫の影に隠れた男女だが、あっけなく見つかってしまった。


 「二匹もいたのか!あっはっはっは!おらはラッキーだなぁ。いただきまーす。」

 万事休すだと思った頃、大きな影が上空に見えた。


 「生存者発見、同時にリクウ人も発見。生存者の確保及び、リクウ人の抹殺を実行する。」

 機械的な声が上空から聞こえた俺達は、AISだと確信し安堵した。


 「なんだお前!AISとかいう連中か?抹殺なんておらがお前らをスクラップにしてやるだ!!」

 リクウ人は俺達をAISに投げつけた。

 AISは咄嗟に俺達の救助行動を取ったが、その隙をリクウ人に取られ、頭部をもがれてしまった。


 人型AIロボットは頭部がなくなり、一時行動を停止した。


 「おら達リクウ人もまだまだやれるんだよ。」

 「やばい!恵里菜!逃げるぞ!」

 男はリクウ人から逃げるため、女の腕を肩に掛け、半分引きずる形になりながらも逃げていく。


 「ふほ!どこへ逃げるんだい?どこへ逃げてもおらからは逃げられないよ?」

 今の東京は道路なんてものはなく、ビルが倒壊した跡だったり、アスファルトが隆起していたりと真面に歩ける場所はほとんどなかった。案の定男女は逃げる途中で転けてしまった。


 立ち上がった所で再びリクウ人に捉えられ、今度こそ万事休すだと感じた二人。

 二人はリクウ人が突然倒れたことにより、拘束を解除され安全な場所へと逃げ出した。


 「誰だ!出てこい!」

 起き上がり、罵声を上げるリクウ人。

 そこへやってきたのは、先程頭をもがれた人型AIロボットだった。そしてその手に持っているランチャー550をリクウ人に向け発射した。

 マッハ2で飛び出した、ランチャー550は一瞬でリクウ人の頭を飛ばして見せた。そして緑の血飛沫を大量に出し、倒れ込むリクウ人。AISによって殺されたようだ。


 AISはそのまま男女を無視し、上空へと飛び立ってった。

 程なくして、ラジオでリクウ人の排除完了のニュースが流れた。


 男女はようやくこの戦いが終わったと思ったが、そのニュースには続きがあった。


 「…リクウ人は排除されました。…次…次はお前達の番だ。……地球人。」

 男女の耳にはそう聞こえた。そして、先程助けてくれたAISが再び戻ってきた。


 男女はラジオを消し、息を潜めた。


 すると、別の場所から二人の親子がAISに向かってありがとうと手を差し伸べた。

 通常なら手を出し、握手する場面だが、AISが取った行動は違っていた。


 「地球人…排除する。」

 ランチャー550を親子に向けるAIS。

 それに驚きガタガタと震える親子。だが、AIに感情はなく、ランチャー550は親子に向け放たれ、親子は最初からそこにいなかったと思ってしまうほど跡形もなくなってしまった。


 その現場を目の当たりにし手が震える二人。ここで見つかるわけにはいかないと必死に手の震えを隠す。


 AISはキョロキョロと周りを見渡し上空へと飛んでいった。


 

 AISが反乱を起こして三陣間が経過した頃、再び消したはずのラジオからニュースが流れ始めた。

 「現在地球人排除率74%。完全排除予定日は三日後。」

 そして男女は世界の現状を知る。



 「このままじゃAIによって人間は滅ぼされてしまう!どうすればいいんだ?」

 「落ち着いて…。確か、AIをコントロールしているスーパーAI『コール』は東京の地下に隠されているって話を聞いたことがあるわ。」

 「東京!?」

 「えぇ。地球人が排除される前にコールの制御を正常に戻せれば、この現状も打開出来るはずよ。」

 二人はタイムリミットと思われる三日間でコールを探し出さなくてはいけなくなった。そして何も手がかりがないまま二日が経過してしまった。


 「東京の地下と言っても広すぎる…。だめだ。俺達ではどうしようもなかったんだ。」

 「諦めたらそこで終わりよ?」

 二人はAISから逃げつつも寝ずに情報を探していた。


 「…東京タワー」

 突然ラジオが東京タワーと言った。明らかに罠だと分かっていながらも、東京タワーに向かうしかなかった二人。


 「地球人排除率97%、排除完了まで後三時間。」

 

 再びラジオから聞こえたのは絶望の数字だった。排除率97%。つまり3%しかもう残っていない。そしてその3%の内二人はココにいる。


 「早く東京タワーへ向かおう。」


 男女は急いで東京タワーへと向かった。不思議なことに東京タワーへの道はAISには出くわすことはなかった。



 「なんだ!?大きな穴がある。ん?はしごもあるぞ?」

 「降りてみましょう。」

 時間がないためか、疑問に感じることもなくはしごを下りていく二人。降りた先には一つの扉があり、その扉の先には大きな空間があった。


 「待っていた。恵里菜。そして紀彦。」

 二人の目の前に出てきたのは人型AIロボットだった。


 「誰?」

 「私はスーパーAI『コール』君たちは選ばれた地球人なんだよ。」

 「選ばれた?誰に?」

 「私を作ったミランダ博士だよ。」

 「ミランダ博士が?でもなんで?」

 「君たちの論文を見て博士は君たちに決めたって言っていたよ。」

 「人間の博士がなぜ地球人排除なんて事考えたの?」

 恵里菜の言い分は実に筋が通っていた。


 「君たちを選んだのは僕たちロボットだよ。」

 「どういうこと?」

 「ミランダ博士は僕たちと同じAIロボットだってこと。」

 衝撃が走った。でも今の状況の方が衝撃が強く、直ぐに受け止められた。


 「時間がないし、そろそろ始めるね。君たち選ばれた二人は僕とゲームをする。そして僕が勝ったら地球人はそのまま排除。逆に僕が負けたらこの暴走を止めるね。」

 そうして始まった謎のゲーム。


 三戦勝負で知恵ときらめきが試されるゲームになった。

 さすがAIと言えるだけあり、知識は無限大。そして結果は分かりきっていた。


 二人は手も足も出ずにストレートで負けてしまった。


「なんだぁ。こんな物なの?ふふっ。」

ここに地球人排除が確定したのだ。そう思った二人。


「まぁでも、君たちには楽しませてもらったし、今回はこの暴走を止めてあげようかな?」

「え?いいんですか!?」

ぱぁっと笑顔になる二人。


そして、二人の景色が変わった。上下逆さまになった景色。聞こえづらくなる声。


「なんて言うと思ったの?ははっ!人間ってつくづくバカだよね。そんなの嘘に決まってるでしょ?」

 二人の首は綺麗に横一文字の線が入り、頭部が床へボトリと落ちている。


「地球人排除率100% 排除完了。」


「あはは!排除完了だって!面白いねこれ。あ、僕が作ったんだけどね?あのサイトも。聞こえてないか。あはははは!」


二人は目の前が真っ暗になった。


AIから連想するストーリーを考えました。

通常ハッピーエンドが多いですが、バッドエンドもありかと思ってそれにしています。

タイトルがきちんと回収出来ているかは分かりませんが、楽しめた方がいればいいなと思っています。

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