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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
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05. コード111で待機せよ。


 モニターには真っ白な雪に覆われた山々が映し出されていた。

 ここは北方にある軍の訓練場。


「弾種、誘導榴弾、目標最終確認、安全装置解除、発射、発射、発射」


 背中に小さな赤い旗を掲げた人型兵器。

 戦車と同じ大口径砲を空に向け、爆音と火煙に包まれた。


「弾着~今」


 モニターには山の向こう側にいる機体から送られてくる映像が映し出された。


 無線操作されている土砂の積まれた箱。

 戦車型標的。

 爆発することなく、箱の中で土砂が四散する。

  

「命中、命中、命中!」


 命中……最新の画像識別型、誘導榴弾なのだから故障か余程方位を間違えて撃たなければ当たる。


 射撃中の機体以外は目の前にある河川敷を行ったり来たり。

 激しく上下左右に揺れる機体。

 雪上だと浮力を最大にしなければ雪に足を取られ、転倒することもある。


 雪上での高速移動訓練は地獄と聞いていたが想像以上だ。

 浮遊石は水面に作用しないが雪でもダメらしい。 


「2番機タカヤマ! 遅れてるぞ!」

「はい」


 俺の名前はタカヤマ・ユウジ。

 

 統一経済圏では中級の暮らしをできるラッキーな家庭に次男として生まれたが、兄と違って勉強も出来なきゃ商才も無い。


 父が株主であるいくつかの会社役員にでもなれれば、と言われたが、そこへ送るのもあきらめられた。

 

 結局、戦う相手が暴動を起こす国民……いや、規定労働にも付かないゴミを処理するのが仕事となった軍隊。


 そこの士官学校に送り込まれ、なんとか卒業。

 こうして今、人型兵器……アーマー乗りの訓練を受けている。

 

 俺が操縦しているのはⅡ型と呼ばれる半世紀以上前の機体。

 丈夫さだけがとりえで、今でも訓練用として使われている。


 軍での正式名称はステップアーマー……大戦中はキャリア組である士官様が後方から安全に戦果を上げポイントを稼ぐために作られた機体と言われ、スライドアーマーⅡから名称変更されたらしい。


 他の機体も宣伝用の名称はあるが、現場では型番で呼ばれている。

 理由は単純。

 メーカーの操縦や整備マニュアルには型番しか書かれていないから。


 俺はココで流れにまかせて生きていく。そう決めていた。

 あがいて失敗すれば、家族ごと転落人生ってことになりかねない。

 それだけは避けたかった。

 

  

 しかし、その日はやってきた。

 

 いつものように訓練を終え、宿舎の二段ベットの下でカーテンを締め横になったまま、情報端末を操作していろいろ・・・・と楽しんでいた。

 

「緊急、緊急、コード111で待機せよ。繰り返す、コード111で待機せよ」


 俺は体を起こしカーテンを開け、とりあえず靴を履きながら、向かいのベットにいる同期のハラダに聞いた。

 

「コード111って何だっけ?」

「さあ、俺も聞いた事が無い」

「どうする?」

「緊急時はとりあえす服着て表に出るってのがいつもの事だから、そうするよ」

「そっか、そうだな」


 俺達は表のグラントへ防寒着をわきに抱え、走って向かった。

 そして、そこで、銃を向けられ拘束された。

 

 拘束された俺達は、いくつかの部屋に監禁された。

 カーテンを開いて窓の外を見ると、格納庫からⅡ型がトレーラーに積まれ訓練場を次々と出てゆく。


 機体の背中には赤旗が付いていた。

 それは実弾装備の意味だ。


 俺達はひとりずつ呼ばれて質問された。


「君の家族は我々の側についた。君はどうする?」

「父に従います」

「いい返事だ。君は今日から我々の同志だ」


 俺はⅡ型に乗って反乱軍が制圧した基地や、反乱軍への資産提供に同意した協力的な支配層居住区の警備などを交代で行っていた。


 反乱軍が制圧した基地……軍の8割は初日に無血制圧されていた。


 虐殺が仕事となっている軍に、俺のような中級以上の生活をできる人は入らない。

 俺のようなのは僅かだ。

 軍人の多くは貧困から抜けだそうと、支配層に家族の命を懸けて忠誠を誓う。

 

 それらが、勝利を確信するだけの準備をしていたのだから成功して当然。

 

 そして、この反乱に参加したのは軍人だけではない。

 支配層の屋敷で働く多くの者達も仲間だった。

 

 

 数ヵ月後、反乱軍が勝利し家族と会うまでは知らなかった。

 俺が人質だったことを。


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