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猟機兵装 - 思いつきの記録 -  作者: イワトノアマネ
45/45

45. 新しい時代へ


「剣を使うアーマーって言えば、ヤツだろ! こりゃ抜けたほうが――」


 森の周囲にあるビルの陰に隠れ、煙の中で次々と倒される仲間を見ていた男。

 そのコックピットのモニターに剣を手にしたⅥ型が映し出された。

 

「森で待つんじゃねぇ~のかよ!」


 操縦スティックのボタンを押し続ける男。

 ザンゲツの手にした銃から放たれ続ける砲弾。

 

「まだ居た!」


 回避しながら右手の剣を振りかぶり、投げ放つサヤカ。

 ザンゲツの左腕付近をかすめ、背後のビルに突き刺さった。


「なんだよ、脅かすなよ、牙の奴らじゃ――」


 最後まで吐き出す前に、光の帯が男の乗るザンゲツを右から襲った。


「何機か逃げられたわ」

「他の部隊にまかせて、俺達はココを守る」

「まかせるわ」

「なにをしてる!」


 ライタのモニターにはベルトを外して立ち上がるサヤカが映っていた。

 Ⅵ型がヒザを着かずに立ったまま、ハッチを開いた。

 銃を片手に握り、機体から降りるサヤカ。

 地面に足が着くと、ビルの中へと駆け出した。


「サヤカ! 無茶だ! くそっ!」


 ライタもベルトを外し、銃を手にした。

 

「キリシマ! 外はまかせる!」


 返事を確認することなく、サヤカと同じく機体を立たせたまま降りた。

 そして、サヤカを追ってビルの中へと消えた。


   ◇


 上空で戦う2機の猟機兵装アーマー


「コイツ空中戦の経験もあるってことか……いやな間合いで戦いやがる」


 ハラダはモニターに映し出されているⅥ型を見ていた。

 

 距離があるまま撃っても自動回避される。

 距離を詰めれば、自動回避限界距離に入った瞬間に反撃してくる。

 

「そろそろ決めないと、推進剤が厳しくなるか……よし、仕掛ける」

 

 キリシマのⅥ型が降下を始めた。

 ハラダのザンゲツも合流地点に向かうには、推進剤の残りが厳しくなっていた。

 

「そっちもってことか……」


 降下するⅥ型の周囲を数発の曳光弾が通過する。

 それらが途切れる前に、キリシマは敵に向き合い、機体を左にスライドさせた。

 

 その右腕の外側に集中して砲弾が通過する。

 

「残っている右をかばって左って思ったが、読んでやがったか、くそっ!」

「やはり、単純な……いや、俺はこの戦い方を知っている……俺の戦い方だ……」


 キリシマはⅥ型も軍の機体であることに気がついた。


「識別コード発進、敵との通信確保」


 ピピッと音が響いた。

 

「識別コードなんか意味無いぜ、コイツは……」

「ハラダ! キリシマだ! 投降しろ」


 ザンゲツの銃口から放たれていた砲弾が途切れた。

 2機の猟機兵装が動きを止めて、降下する。

 

「そうか、やっぱりアンタかキリシマ。アンタがヤラれるはず無いよな俺に……」

「ハラダ! 聞いてくれ! 管理区は仲間が確保している。奴らに従う必要はもう無い」


「管理区なんて関係無い。俺は汚れ仕事専門――スラムのゴミ掃除部隊。その代わり家族は中級暮らし……」


「家族のことは俺が……」

「そうやって俺をまた助けて、点数稼ぎか?」

「そんなんじゃない!」

「俺はもう、生きてなんかいない。それにあんな家族なんていらない。それ以上に俺はコイツで遊んでいたいってことに気がついちまったんだ」


 ハラダがコックピットで、下を向いていた顔を上げ、笑った。

 

「エースと言われてたのは、アンタと組んでたときだけだ。だから乗り続けた、強くなるために。そして、任務中に仲間を撃っちまった。それからは裏仕事専門さ。楽しかったぜ、テロリストのふりして、軍の機体を減らすために本気で戦えるんだ。オマエの教え子たちには、楽しませてもらったぜ――」


「ハラダ! お前は」

「最後まで楽しませてくれよ」


 ザンゲツの銃口がⅥ型に向けられた。

 Ⅵ型も同じタイミングで銃を向けていた。


   ◇


【統一経済圏本部ビル。地下】


 通路には松葉色の作業着を着た男達が死体となって転がっている。

 その先へと進むサヤカとライタ。

 

 通路の壁にもたれかかって座っている男がいた。

 紺色の服を着た仲間の突入隊員。

 

「大丈夫か?」

「はい自分は大丈夫です。手当ては済んでます」

「状況は?」

「やつら、後ろから……民間人だと思って油断した」


 ライタがヒザをついて男から話を聞いている。

 

「この先はクリアです。俺は大丈夫。コレを持って行ってください」

「わかった」


 立ったまま周囲を警戒していたサヤカ。

 無線機を手にライタが立ち上がる。

 

「急ぎましょう」

「ああ」


 そこでは無線から途切れたノイズしか聞き取れなかった。

 しかし、何層か階段を降りると、仲間の声が聞こえた。


『――入手していた情報はあてにするな――隔壁は焼き切れ――』

「近いぞ」

「ええっ」


 広い通路の奥で仲間が隔壁を蹴り倒していた。

 

「よし行け! 急げ、急げ! 奴らを逃がすな」


 ココまでに何度か警戒に立っていた者の前を通過。

 彼らは無線でサヤカとライタが向かっていることを伝えていた。

 

「隊長!」

「ライタ大尉。この先はコレからです。何があるかわかりません」

「ああ、わかった。行こう」


 サヤカは隔壁の手前にある、会議室の入口の壁を叩いた。

 

「たぶん、もうココにはいない。間に合わなかった!」

「まだ、そうと決まったわけじゃない」

「この部屋を見なさい。床も机も綺麗なのよ……もう、どこか遠くへ……」


 そのとき無線から連絡が入った。


「隊長! 地下に潜水艦用と思われるドックを発見。人は誰もいません」


 サヤカが壁に頭を擦り付けたまま、ヒザを落とした。


「まだ終わるな、まだ戦えってことなの……父さん、母さん、兄さん……」


 背中を丸めて泣くサヤカ。

 突入部隊の隊長達とライタは黙ってそれを見ていた。



   ◇



 日の出を迎え、白が広がってゆく空。

 そこに2つの黒い影。

 

「大ガラスより、荒野の牙――」

「こちらキリシマ。逃げられた。潜水艦を用意――」


 サラサの席のモニターに本部ビルが拡大され映し出される。

 そこには黒煙の中に3機の武闘Ⅵ型ストームアーマーが立っていた。

 その肩の紋章エンブレム――銀のティアラが日の光をあびて輝いて見えた。

 

   ◇

 

【数ヶ月後】


 制圧した本部ビルで新たな国際機関の設立式が行なわれた。


 新たな道を各国が自由に選び始める。


 しかし、これがいつまで正常に機能するかは、誰にもわからない。


   ◇


 透き通った青い空。

 雪解け水をたたえた湖。

 湖面をゆっくりと流れる風。

 

 湖を見渡せる丘の上。

 薄紅色の花を咲かせた大きな木。

 

  義之と勇に守られ平和に暮らしている彼。

  もうすぐぼくも、会える。

  会ったら彼をこの胸にギュっと抱きしめよう。


「ママ、何読んでるの?」

「今度、引っ越してくるママのお友達が書いている本」

「面白いの?」

「どうかな? でもね、これはすごく大事な本なの」

「大事って?」

「ママの命を救ってくれた、物語だから――」

 

   ◇


 色鮮やかな建物。

 空を覆うような、巨大な観覧車。


「遅くなったけど、やっと願いを叶えてやれる」

「ありがとう。お父さん」

「何に乗りたい」

「何でもいいけど、ジェットコースターがいい」

「ああ、俺も嫌いじゃない!」


   ◇


 小さな窓から射し込む光。

 小さな窓から眺める緑溢れる景色。


 開いた窓から流れ込む冷たい風。

 向かい合う二人の前髪が揺れる。

 

 鏡を見ているようだった。

 ササヤマ・トキカだった頃のサヤカがそこにいた。

 

「お母さんの秘密基地か、なんかいいねココ。わくわくするね」

「いいでしょ」

「鍵のおまじないって帰りもするの?」

「もちろん!」


 両親を失ってからの時間。

 両親のいなかった時間。

 

 サヤカは親が見る事の出来なかった時間を。

 エリカはサヤカが失った時間を見ていた。


「また明日から、がんばらないとね。お母さん」

「付き合ってくれてありがとう。エリカ」

「今の世界を守るため、みんなでがんばるって決めたから――」



   ◇









   ◇



【数百年後】


 雪と氷に覆われた北極大陸。

 その地下深くにある巨大な空間。

 

 下方は白い建物で埋め尽くされ、空は白いかすみに覆われている。

 

 その中を高速で移動する光。

 それは猟機兵装アーマーだった。

 

 背中には緑色に輝くつばさ

 左手に蒼く輝く光の盾。

 コックピットを染めるくれないの光。

 

 そこには目を閉じた一人の少年がいた。

 

「ぼく達をこんな小さな世界に閉じ込めた地上の奴ら――」

 

 少年は大きく目を開いて、身を乗り出す。

 

「ぼく達は必ず地上を取り戻す!」


おしまい。

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